神経症傾向(しんけいしょうけいこう、英: Neuroticism)とは、心理学の研究において、基本的な性格特性として考えられてきたものである。 例えば、性格特性理論のビッグファイブでは、神経症傾向のスコアが高い人は、平均的な人よりも不機嫌で、不安、心配、恐怖、怒り、不満、嫉妬、罪悪感、抑うつ気分、孤独
解説
神経症傾向のスコアが高い人は、一般的な精神障害(気分障害、不安障害、物質依存(英語版)が研究されている)[2][3]や、伝統的に「神経症」と呼ばれる種類の症状を発症する危険性があると考えられている[4]。 神経症傾向は、性格理論の中で多くのモデルに含まれる特性であるが、その定義は様々なものがある。特に否定的な感情の喚起に関しては、刺激を受けるとすぐに覚醒し
定義
様々な性格検査でこの特性の数値スコアが出され、これらのスコアは様々な方法で神経症傾向の概念にマッピングされるため、特に下位特性やファセットに関して、科学文献(英語版)において多少の混乱が生じている[5]。
神経症傾向のスコアが低い人は、情緒が安定しており、ストレスへの反応が少ない傾向がみられる。冷静で、平静で、緊張や動揺を感じにくい傾向がある。また、ネガティブな感情は少ないが、ポジティブな感情は必ずしも多くない。ポジティブな感情のスコアが高いことは、一般的に外向性の独立した特性の要素である。例えば、神経症傾向が高く外向性が高い人は、ポジティブな感情とネガティブな感情の両方が高いレベルにあり、一種の「感情のジェットコースター」を経験することを意味している[6][7]。 神経症傾向のファセットは次のようになっている[8]。 低い値の人の記述高い値の人の記述 他の性格特性と同様に神経症傾向は通常、離散的な状態ではなく連続的な次元として捉えられる。 神経症傾向がどれほどのレベルであるかは、一般的には自己報告式
ファセット
説明言葉ファセット言葉説明
あまり怒ることはない。温和怒り激情的特に物事が思ったように進まないときに、激しく感情が高ぶる。
穏やかで自信がある傾向がある。自信がある不安心配性起こるかもしれないことをいろいろ心配しがちである。
自分に大体満足している。満足憂うつ悲観的おもしろくないことを頻繁に考える。
欲望は特に強くなく、欲望を制御できる。自制心がある利己的快楽主義欲望を強く感じ、欲望に誘惑されやすい。
当惑することはほとんどなく、大抵の場合は自信にあふれている。自信に満ちた自意識過剰自己を意識する人が自分をどう思うかに敏感である。
予期しないことにも落ち着いて効果的に対処する。プレッシャーに強い傷つきやすい低ストレス耐性ストレスの多い状況に負けやすい。
測定法
語彙的測定には不安、羨望、嫉妬、不機嫌などの神経症傾向の特性を反映する個々の形容詞を使用し、場所や時間をそれほど制限せず研究目的においては効率が良い。この測定法の例として、ルイス・ゴールドバーグ(英語版)(1992)[10]は100語のビッグファイブマーカーの一部として20語の尺度を生み出した。また、ソーシエ (1994)[11]は40語のミニマーカーの一部のより簡潔な8語の尺度を生み出した。さらにトンプソン(2008)[1]は、これらの尺度を体系的に改訂し、北米内外の集団で優れた妥当性(英語版)と信頼性(英語版)を持つ国際英語ミニマーカを生み出した。国際英語ミニマーカーの神経症傾向(情緒安定性)尺度の英語母語話者に対する内的整合性(英語版)は0.84、英語非母語話者に対するそれは0.77であるとわかっている[1]。
記述を用いた測定は、語彙的測定よりも多くの単語で構成される傾向があり、そのためより多くの研究機器のスペースを消費する。回答者は、例えば、「プレッシャーの下で冷静さを保つ」、「頻繁に気分の落ち込みがある」などの程度を尋ねられる[9]。神経症傾向の記述に基づく測定は語彙測定と同様に北アメリカの集団で受け入れられる心理測定特性を持つが、一般的にエミック(英語版)展開が他の集団での使用に適していない[12]。例えば、 "Seldom feel blue" や "Am often down in the dumps" といった北アメリカの口語英語での記述は英語を母語としない人にとって時にわかりにくいものである。
また、神経症傾向はグレイの生物学的パーソナリティ理論(英語版)の行動抑制系(英語版)(BIS)と行動賦活系(英語版)(BAS)という2つの次元で性格を測定する尺度を通じて研究されている[13][14]。BISは回避動機と同様に罰に対する感受性に関係すると考えられ、BASは接近動機と同様に報酬に対する感受性に関係すると考えられている。神経症傾向はBIS尺度と正相関し、BAS尺度と負相関することが分かっている[15][16]。