社葬
監督舛田利雄
脚本松田寛夫
出演者緒形拳
音楽宇崎竜童
撮影北坂清
『社葬』(しゃそう)は、1989年公開の日本映画。東映京都撮影所製作、東映配給。本項目では1991年に放送されたテレビドラマ版についても記述する。
大新聞社の後継者争いをめぐる内幕をシニカルに描いたブラックコメディ[2][3][4]。会社版『仁義なき戦い』[5]と評された。
映画版はその題材から宣伝に苦戦したものの高評価を受け、多数の映画賞を受賞した(後述)。 全国紙「太陽新聞」を発行する太陽新聞社では、中興の祖である会長・太田垣と、創業家出身者である社長・岡部の派閥が部局ごとに形成され、役員たちが常に権力争いを繰り広げていた。太陽新聞社は日刊新聞法に基づき株式を公開していないため、第三者の介入による解決は不可能だった。ある日の定例役員会で、岡部派は太田垣の解任動議を緊急提出する。いずれの派閥にも属さない唯一の役員である鷲尾が採決を棄権したため、動議は1票差で可決された。ショックを受けた太田垣は心臓を病んで意識不明となり、緊急入院する。岡部派の中心人物である編集局長・徳永は、太田垣の命が長くないと見て、太田垣を「名誉会長」とする人事異動を役員に飲ませる一方で、総務局に社葬の準備を指示する。 社の全権を掌握したかに見えた岡部派だったが、その岡部は数日後の夜、芸者・美津枝を相手にしたところ腹上死してしまう。役員たちは一時休戦し、大新聞社長の不倫スキャンダルが明るみになるのを防ごうと骨を折る。太田垣のためだった社葬の準備は、急遽岡部のためのものに切り替わる。太田垣派はこの混乱に乗じ、入院中の太田垣を名ばかりの「葬儀委員長」に任命することで自派の復権をもくろむ。社葬の実行委員長として、中間派の鷲尾に白羽の矢が立てられる。 後任社長選びをめぐって太田垣派は太田垣の娘婿・添島を、岡部派は若き岡部の息子・恭介を推挙し、両派の対立はより先鋭化する。岡部の密葬の場で行われた無記名投票では、添島4票・恭介4票・白票3票で決着がつかなかった。 太陽新聞社はあるとき、独自にスクープした三友銀行の不正融資疑惑を報じようとするが、徳永は「頭取から事実でないと聞いている」として、記事を差し替えさせる。徳永や添島は、私的な投資に流用していた社内資金のショート危機を招き、ひそかに三友銀行に補填を頼んでいたため、問題が自分たちに飛び火することを恐れたのだった。問題の発覚を恐れ、また株価の暴落などによって個人的損害の大きかった添島は絶望して自殺を図るが、未遂に終わる。 問題を知った全国の販売店が、本社への納金を止め始める。反乱の拡大を恐れた徳永は、販売局長である鷲尾に問題の解決を命じる。鷲尾は反乱の発火点と目されている富山に飛ぶ。富山では太陽新聞と地元紙の購読シェアがちょうど二分し、シェアを奪い合う販売拡張員同士の暴力沙汰が日常茶飯事となっていた。暴力沙汰を快く思わない鷲尾は、富山の新聞販売拡張団のドン・上野郷に対し、冷淡に卸の停止を告げる。上野郷は太田垣との個人的つながりを持っていたため、鷲尾は中立から岡部派に傾いたと目されるようになる。 太田垣が奇跡的に意識を回復し、快方に向かい始める。徳永は太田垣の復権を確実視し、また太田垣派による報復人事を恐れて、資金ショート問題の責任を鷲尾に押し付けるため、太田垣や添島に接触する。その後鷲尾に「岡部派への報復の代わりに、添島が鷲尾の首を差し出すよう要求している」と告げ、辞表を書くよう迫る。鷲尾は自分だけが腹を切らされるのに納得がいかず、かつ徳永が何かをたくらんでいると予感したために要求を断り、以降の役員会をボイコットするようになる。鷲尾や入院中の添島らを欠いた役員会は、後任社長人事を太田垣に一任する方針を議決する。これも徳永の工作によるものであり、出世レースから脱落した添島以外は社長就任の適齢期を過ぎた高齢の役員ばかりの太田垣派を差し置き、徳永が次期社長に指名されるようにする計略だった。 ある日鷲尾は、同様に役員会に出なくなっていた恭介から、徳永による記事もみ消しの真相を知らされ、徳永が自身のスキャンダルを隠したまま次期社長を狙っていることをさとる。鷲尾は自身の愛人である料亭の女将・吉乃を通じ、三友銀行相談役の野々村に会って不正融資問題の裏を取り、太田垣に一連の真相を報告する。また、鷲尾は太田垣に、徳永の動きを封じるため、添島の資金流用問題を不問に付す代わりに恭介を後任社長に指名するよう迫る。 社葬の当日、鷲尾は辞表を提出する。また、役員席に座らず、受付やホールの出入り口での警備を買って出る。太田垣は当初会場に現れなかったが、看護師に支えられてやって来る。太田垣は弔辞を行い、その中で恭介を後任社長にすることを言明する。続けて弔辞を行った恭介もそれに応じる。恭介はさらに弔辞の中で社内の「腐敗」を示唆し、その撲滅を誓う。このやりとりは徳永ら資金流用に加担した役員たちの失脚と、「抗争」の終結を意味した。これを見届けた鷲尾は、電話で吉乃に別れを告げ、葬儀会場を去ろうとするが、そこへ鷲尾の妻・順子が息子・武の大学合格を報告しに現れる。吉乃との不倫がバレたと勘違いした鷲尾は、取り乱す。
ストーリー
キャスト
鷲尾平吉(常務取締役販売局長):緒形拳
稲積吉乃(料亭「稲積」の女将 野々村の元愛人・鷲尾の愛人):十朱幸代
岡部恭介(取締役 岡部の息子):佐藤浩市
井上友子(鷲尾の秘書):藤真利子
金谷美津枝(芸者 岡部の愛人→恭介の恋人):井森美幸
鷲尾順子(鷲尾の妻):吉田日出子
岡部静子(岡部の妻):野際陽子
竹下博文(総務局員 社葬の配車係):イッセー尾形
荒井康裕(販売局員):船越英一郎
近藤清[6](文書課長):西田健
北川克巳[7](総務局長):加藤善博
女性化粧師:芹明香
野田辰夫(広報室長):木場勝己
医師:頭師孝雄
葬儀ディレクター:山内としお
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印刷工場の主任:不破万作
今日規汰代
白坂泰(取締役 岡部派):西山辰夫
添島明子(添島隆治の妻・太田垣一男の娘):小川依子
掛田誠
徳永雅代(徳永昭雄の妻):志乃原良子
中村哲也
富山の主婦:小野沢智子
尾澤誠
佐竹彩也子
藤井洋
三宅俊彦:有川正治
富山の販売拡張員:広瀬義宣
大木晤郎
本間善吾:五十嵐義弘
池田万生
波多野博
富山の販売拡張員:木谷邦臣、小峰隆司
加瀬保二(販売局次長):平河正雄
池田謙治
大矢敬典
西山清孝
仲根信一:山田良樹
「稲積」の仲居:富永佳代子
桂登志子
ライバル紙の販売拡張員:木下通博
江原政一
小谷浩三
小船秋夫
前川恵美子
鈴川法子
勇家寛子
田辺ひとみ
加藤寛次
奈波登志子
稲泉智万
清家三彦
林哲夫
鷲尾武(鷲尾の息子):柴田善行
太田和余
松島ゆみこ
桑田範子
和気千枝
疋田泰盛
武田文雄
クレジットなし
立ち小便をする酔っ払い:福本清三
上野郷嘉市(富山の新聞拡張団のドン 太田垣派):北村和夫
松崎忠行(専務取締役 太田垣派):根上淳
栗山喬(常務取締役経理局長 太田垣派):小林昭二
深町弘人(取締役 岡部派):菅貫太郎
原口槇雄(取締役 岡部派→太田垣派):加藤和夫
寺内友三郎(取締役 太田垣派→岡部派):小松方正
谷政明(専務取締役 岡部派):加藤武