社会保険
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「社保」はこの項目へ転送されています。国会の会派については「社会保障を立て直す国民会議」をご覧ください。
OECD各国税収のタイプ別GDP比(%)。
赤は国家間、青は連邦・中央政府、紫は州、橙は地方、緑は社会保障基金への供出[1]

OECD各国平均の
税収構造(2014年) [2].mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  個人所得税 (24%)  法人所得税 (9%)  社会保険 (26%)  給与税 (1%)  資産税 (6%)  一般消費税 (21%)  個別消費税 (10%)  その他 (4%)

社会保険制度(しゃかいほけんせいど、英語: Social insurance schemes)とは、社会保障の分野のひとつで、疾病高齢化失業労働災害介護などの事故リスク)に備えて、事前に被雇用者もしくは雇用主、あるいは両者が社会的供出をすることによって、保険によるカバーを受ける仕組みである[3]

制度は各国によって様々であり、チェコスロバキアは総税収に占める割合がOECD中で最大(44%)である[4]。一方でオーストラリアニュージーランドには社会保険制度は存在せず、一般税収財源にて運営される[4]

日本の制度では、医療保険年金保険介護保険雇用保険労災保険の5種類の社会保険制度がある。総税収に占める割合は41%で、日本は上位国の一つである[5]
制度「ベヴァリッジ報告書#福祉レジーム」も参照

保険とは、事故(リスク)に備えて、社会生活を営む人が多数集まり、財貨を拠出(保険料)して、共通の準備財産をつくり、それによって個人の経済生活を安定したものにしようとする仕組み(保険方式)である。保険料を主体としてできあがった財産を中心に一つの集団(保険集団)が組織され、保険集団の運営主体(保険者)と参加者(被保険者)の関係(保険関係)が生じる。あらかじめ取り決められた共通の条件(保険事故)が生じた場合に限って保険給付の支払いが行われる。これによって、集団の中で、事故によるリスク分散が図られている。

民間保険では、そもそも対象となる事故(リスク)の範囲が限定的なため、このようなリスク分散を期待できる保険集団の範囲も、被保険者の経済的地位などによって限定されている。しかしながら、社会的には、より大きな規模における貧困のリスクが存在する。そこで、社会保険制度では、扶助原理(ないし扶養原理)に則り、保険の一般原理を修正し、公費負担、事業者負担、応能保険料負担等の制度を用いて、保険集団の範囲を強制的に拡張することにより、所得の再分配による国民の生活保障を図っている。

なお、広く社会保険に対する公費負担、事業者負担、個人負担の保険料を社会保険料という。
公的扶助との違い

公的扶助生活保護)が、実際に困窮に陥った場合に最低生活を保障する制度(救貧制度)であるのに対し、社会保険は、生活上のリスクによる困窮を予め防ごうとする制度(防貧制度)である[6]

一定の保護要件にあてはまる人は、すべて扶助の対象にし、また困窮の原因が何の事故によるものかを問わない「無差別平等の原理」に基づいて行われる[6]。社会保険は、被保険者である人、また保険料を負担したことのある人に限って給付の対象とし、あらかじめ決められた保険事故に限り給付が行われる。

一定の保護基準が決まっており、多くの場合、均等の扶助が行われる「最低生活保障の原理(ナショナル・ミニマム)」に基づいて行われる[6]。社会保険は、現実の生活レベルの保障を目標とし、生活費給付の場合、その給付額は、基本的に賃金所得に比例する。

保護を受ける人は、自分の能力、その人が利用できる資産や他の社会保障の制度等をフルに活用して、なお最低生活の水準に達しない場合に、その足りない部分を扶助される。また、民法上の扶養義務が扶助に優先し、扶助を受けるには、いつも資産調査(ミーンズテスト)が行われる。これらの「保護の補足性の原理」に基づいて生活保護が行われる。社会保険は、一定の要件を備えれば、資産や能力に関係なく給付が行われる。

民間保険との違い

民間保険(私的保険)が、3つの原則(給付・反対給付均等の原則、保険技術的公平の原則、収支相等の原則)を保険のしくみの基礎としているのに対して、社会保険(公的保険)では、この原則は貫かれていない。これは、目的の一つが所得の再分配にあるからである。

一定の要件に該当する者を当然の対象とする強制加入(強制保険)を原則とする。

保険契約者の個別的な経済需要と保険料支払い能力により、保険給付額が決定される「給付・反対給付均等の原則」であるが、社会保険は、平均的社会的必要に基づいて保険給付額が決定される。

事故の起こる危険の度合いにより払い込む保険料の額が決まる「保険技術的公平の原則」であり、危険率に応じて保険料が決まる「個別保険料主義」を採用しているが、社会保険は、被保険者全体の平均危険率と被保険者の負担能力(所得)を基にした「平均保険料主義」が採用されている。

保険事業の支出はすべて保険料収入とその運用益でまかなわれるが、社会保険は、国・地方公共団体が保険料の一部を負担または補助することもあり、事業主も保険料を分担する場合がある。また、運営に要する事務費は、原則として国や地方公共団体が負担している。

社会保険の歴史「福祉」および「社会福祉の年表」も参照
社会保険制度の創設「オットー・フォン・ビスマルク#社会政策」も参照

世界で最初の社会保険制度は、1880年代に創設されたドイツの社会保険制度である。当時、イギリス等に比べて経済的に後進国であったドイツは、急速に産業革命を進め経済的発展を図るために、労働運動を抑圧する必要があり社会主義者鎮圧法が制定された。その反面で、労働者にアメを与えること(福祉向上)とし、宰相オットー・フォン・ビスマルクは、1883年に疾病保険法、1884年に災害保険法、1889年に老齢疾病保険法を制定する飴と鞭政策を採った。イギリスは、古くから「友愛組合」という名の共済組合が発達しており、労働者の生活もわりあい恵まれていた。しかし、20世紀に入り、ドイツ、アメリカ等の後進資本主義国が発展し、世界経済市場で競争が激化し、労働者の生活も圧迫されたため、1911年ハーバート・ヘンリー・アスキス内閣のデビッド・ロイド・ジョージ蔵相は健康保険を、ウィンストン・チャーチル内相失業保険を施行した。強制加入型の失業保険は、世界で最初の制度であった。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの多数の国々で社会保険制度が整備された。
第一次世界大戦後

1918年第一次世界大戦の終結前後にかけて、ロシア革命により世界で最初の共産主義政権、ソヴィエト連邦が成立。また西欧においてもドイツやオーストリア等であいついで社会民主党政権が誕生。かかる歴史的な背景のもとで、戦後の社会的・経済的な混乱に起因する革命的政情を回避しつつ、国民生活の安定、つまり労働者と資本家間のあいだで階級妥協をはかるため、ヨーロッパの資本主義各国において、失業保険と年金が整備された。さらに1929年に発生した世界恐慌は、ソ連をのぞく世界各国を不況のどん底におとし入れた。ソ連は医療の社会化を進め[7][8][9]1937年に医療を社会保険から外し、無料で全国民が医療を受けられる制度(ユニバーサルヘルスケア)をつくった。国民社会主義を標榜するナチス・ドイツは国民皆保険を推進した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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