この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
社会保険労務士
英名 Labor and Social Security Attorney
略称社労士
実施国 日本
資格種類国家資格
分野法律
認定団体厚生労働省
等級・称号社会保険労務士
根拠法令社会保険労務士法
公式サイトshakaihokenroumushi.jp
社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)は、労働・社会保険の問題の専門家として、労働保険・社会保険諸法令に基づいて、行政機関に提出する提出書類や申請書等を依頼者に代わって作成すること、個別労働関係紛争の解決手続(調停、あっせん等)の代理を行うこと、また企業を経営していくうえでの労務管理や社会保険、障害年金、国民年金、厚生年金保険についての相談・指導を行うこと[1][2][3]を業とする国家資格であり、職務上請求を行うことができる八士業の一つである。
略称として「社労士(しゃろうし)」や「労務士」とも呼ばれる。ローマ字で社会保険(Syakaihoken)労務士(Roumushi)の各頭文字を取って「SR」とも置き換えられる。社会保険労務士の徽章は、菊の花弁の中央にSRの文字が付されている。素材は、純銀の台座に純金貼りが施されており、中央SR部はプラチナ製。主務官庁は厚生労働省で、もともと旧厚生省と旧労働省の共管とされていた。 戦後、いわゆる労働三法が制定され、労働者の権利が法的権利となった。さらに経済成長と相まって、急速に労使間の対立やストライキが頻発した。また、特に1960年代における日本経済の急激な成長により、税収や企業からの社会保険料が増加し、厚生年金・健康保険・労災保険・雇用保険も発展した。しかし、補償額の高度化・制度の複雑化に伴い、煩雑な社会保険の仕組みと申請・給付に係る事務手続により中小企業等では対応が困難となった。これらに対応する専門家の必要性から、人事・労務・総務部門の業務を行う職業が発生した。 当初、これらの請負業務を合法的に行いうる有資格者は行政書士であったが、狭義の総務を除く人事・労務分野のより専門的な知識を持った人材が必要とされた。そこで1968年、社会保険労務士法が議員立法により制定された。制度発足時の経過措置として、引き続き6ヵ月以上行政書士会に入会している行政書士は試験なく特認として社会保険労務士資格を取得し、およそ9,000名が社会保険労務士となった。2007年4月の司法制度改革で、裁判外紛争解決手続制度の代理権が認められた。 社会保険労務士は、次の事務を行うことを業とする[注釈 1](第2条1項、第2条の2第1項)。
社会保険労務士法については、以下では条数のみ記す。
沿革
1968年 - 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)制定
1980年 - 行政書士法改正により、行政書士と社会保険労務士との業務を完全に分離
1986年 - 書類作成基礎事項表示権・他人作成書類審査権付与
1998年 - 審査請求代理権付与
2000年 - 社会保険労務士試験事務を連合会へ委嘱
2003年 - 社会保険労務士法人発足、ADRあっせん代理権付与、(開業社会保険労務士の)労働争議不介入条項(旧社会保険労務士法第23条)の削除
2007年 - 裁判外紛争解決手続制度の代理権付与、特定社会保険労務士制度発足
2016年 - 裁判所における補佐人としての陳述権付与
業務
概要
労働および社会保険に関する法令(詳細は社労士法別表第一に規定[注釈 2]。以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づき行政機関(主に労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所等)に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類を作成すること、またこれらの申請書等の提出に関する手続を代行すること(提出代行)
労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る)について、または当該申請等に係る行政機関等の調査もしくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張もしくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)[注釈 3]について、代理すること(事務代理[注釈 4])
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律6条1項の紛争調整委員会における同法5条1項のあっせんの手続および男女雇用機会均等法18条1項、育児介護休業法52条の5第1項 およびパートタイム労働法22条1項、障害者雇用促進法第74条の7第1項、労働者派遣法第47条の7第1項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること
地方自治法180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律1条に規定する個別労働関係紛争[注釈 5]に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること
個別労働関係紛争[注釈 6](紛争の目的の価額が120万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る[注釈 7])に関する民間紛争解決手続(ADR法2条1号に規定する民間紛争解決手続をいう。)であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること