磁気記録
[Wikipedia|▼Menu]

磁気記録(じききろく、: magnetic recording)または磁気記憶(じききおく、: magnetic storage)は、データ磁気媒体に記録/記憶することを指す工学用語。

磁気ヘッドを磁性体に近接させ、磁場をかけて磁化することによりデータを記録/記憶する。磁気記録は不揮発性である。磁気記録を行う電子媒体を磁気媒体、磁気記録を行う装置を磁気記憶装置と呼ぶ。代表的な磁気記憶装置は、ハードディスクドライブである。

コンピュータ分野では「磁気記憶」、音声やビデオの分野では「磁気記録」と呼ぶことが多いが、区別する意味はない。
歴史

世界初の磁気記録は1888年オバリン・スミスが公表した針金への録音技術だった。彼は1878年に特許を申請したが、どちらかというと機械工具が専門だったため、この技術をそれ以上追求することはなかった。世界で初めて一般公開された磁気記録のデモンストレーションは1900年のパリ万博で行われたもので、1898年にヴォルデマール・ポールセンが発明した磁気録音機である。ポールセンの機械は円筒に巻きつけた針金に信号を記録するものである。1928年、フリッツ・フロイメル(英語版)は世界初の磁気テープレコーダーを開発した。その後、化学メーカーBASF社の協力によるテープ材質の改良(アセテート樹脂)と、1938年永井健三、五十嵐悌二、同時期のドイツの国家放送協会ヴァルター・ヴィーベルとHans-Joachim von Braunmuhl(ドイツ語版)、アメリカのマーヴィン・カムラス[1]による交流バイアス方式(英語版)の発明で、1939年?1941年までに音質が飛躍的に改善され、実用に耐える長時間高音質録音が可能となった。1975年東北大学教授の岩崎俊一により、より高密度の記録が可能な垂直磁気記録方式が提案された。初期の磁気記録装置はアナログの音声信号を記録するよう設計されていた。コンピュータ用や最近の音声/ビデオの磁気記録装置はデジタルのデータを記録するものが多い。

古いコンピュータでは一次記憶装置にも磁気記録を採用していた。例えば、磁気ドラムメモリ磁気コアメモリコアロープメモリ、薄膜メモリ(英語版)、ツイスターメモリ(英語版)、磁気バブルメモリなどがある。また、最近のコンピュータとは異なり、磁気テープも2次記憶装置としてよく使われていた。

かつては1950年代以降の映画にも使われていたが、ステレオで記録できるようにはなったが、フイルムとは別々に分けており、音声のずれがあるという欠点があり、フイルムに直接音声が記録出来る光学記録は、モノラルのままだった。1970年代以降に発明されたドルビーラボラトリーズのドルビーステレオは、ステレオ音声の光学記録を実現できたため、急速に廃れていき、現在となってはデジタルフィルムが主流のため、使用されていない。
磁気記録の方式
アナログ方式

アナログ記録は、磁性体の残留磁化は磁化したときの磁場の強さによって強弱が変化するという事実に基づいている。磁性体は通常テープ状であり、初期状態では消磁されている。記録(録音)時、テープは一定速度で流れていく。書き込みヘッドに信号に比例した電流を流すと、それによってテープが磁化される。すると、磁気テープに沿って磁化分布が形成される。最終的に磁化分布はヘッドで読み出され、元の信号が復元される。磁気テープは一般に、ポリエステルフィルムのテープ上にプラスチックバインダー(接着剤)に磁性体粉末を混ぜたものを塗布して作る。磁性体粉末としては、酸化鉄、クロム酸化物、金属などの粒子で0.5μm程度の大きさのものがよく使われる[2]。アナログの録音/録画は広く使われていたが、過去20年の間に徐々にデジタルに置換されていった[3]
デジタル方式

アナログ記録での磁化分布生成方式とは異なり、デジタル記録では安定な2つの磁気状態だけを必要とする。それはヒステリシスループの +Ms と -Ms である。デジタル記録の例として、フロッピーディスクやHDDがある。デジタル記録方式は現在の主流でおそらく今後も主流となる。
光磁気方式

光磁気記録方式では読み書きに光を使う。書き込む際には、レーザーで磁気媒体を局所的に熱し、それによって強制的かつ素早く磁性を失わせる。次に磁場をかけることで磁化させる。読み出すときは、磁気光学カー効果を応用する。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:17 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef