破局噴火
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破局噴火(はきょくふんか)は、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式を表す用語。地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となるもの[1]を指す。なお、正式な学術用語としてはウルトラプリニー式噴火(英語: Ultra Plinian)、大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ噴火と呼ぶ場合もある。また、このような噴火をする超巨大火山をスーパーボルケーノ(英語: Supervolcano)と呼ぶ。
語源

「破局噴火」という言葉は、もともと石黒耀が2002年に発表した小説『死都日本』のために考案した用語である。作中の設定では、南九州の加久藤カルデラが約30万年ぶりの超巨大噴火を起こし、火山噴火予知連絡会はこれを「じょうご型カルデラ火山の破局“的”噴火」と発表したが[2]、NHKの臨時報道番組のキャスターが「破局噴火」と間違えて連呼したことにより[3]、日本国内のみならず海外においても「近代国家が破滅する規模の爆発的巨大噴火」をHakyokuhunkaと呼ぶようになった[4]と設定されている。

『死都日本』は現実の火山学者からも超巨大噴火をリアリティーを持って描いた作品と高く評価され、「破局噴火」は作中用語という枠を越えて、実際に起きた(そして将来起きるであろう)そのような大噴火を表す言葉として一部の火山学者やマスコミ報道で使われるようになった[5]。ただし小説中と違って、国際的あるいは学術的な用語としてHakyokuhunkaが通用するには至っておらず、日本でのみ使用される用語である。英語では類似する用語として「Supervolcano」が該当する。
定義

2015年現在、世界的な統一された定義は無いとされている[6]

日本では、見かけ噴出量が 100 km3以上を破局的噴火としている研究者がいる[6]

アメリカでは、見かけ噴出量が 1000 km3以上を「Supervolcano」としている[6]

メカニズム

地下数kmにあるマグマ溜まりマグマには地圧によって様々なガスが溶け込んでいる。特に珪長質マグマにはその傾向が強い。なんらかの原因によってマグマが急に減圧されるとマグマは発泡し大量のガスを噴出し、マグマ溜まり自体が爆発して地殻表層部を吹き飛ばす大噴火となる。

通常の噴火と異なり、噴火の破壊力は壊滅的な威力となり、火砕流も放射状360度の方向に流走し広大な面積を覆う。半径数十kmの範囲で生物が死滅するばかりでなく、大量の噴出物が成層圏界面(高度約50 km)やその上の中間圏にまで達する結果[7]、地球の気温が下がったり、種族の絶滅の原因になることもある。爆発の後は、地表は大きく陥没しカルデラが形成される[8]

破局噴火を起こすマグマ溜まりは扁平な形で存在することが多く、噴火せずに地下で固結した珪長質火成岩体の形状が扁平であるという最近の地質学的知見も、それを裏付けている[9][10]

第四紀を通じてこのような噴火は九州や北海道をはじめ本州でも何度も起こってきた。姶良カルデラ(錦江湾北部)、阿蘇カルデラ、摩周カルデラ、鬼界カルデラ、十和田カルデラなどがその例である。とりわけ阿蘇カルデラは過去四回にわたって巨大噴火を起こしている。
通常の噴火との比較

火山噴火の規模を表す火山爆発指数(VEI)は、噴出物テフラなど)の量によって決定され、破局噴火はVEIは7から最大の8に相当する。例えば1990年から1995年にかけて噴火した雲仙普賢岳では、火砕流1回あたりのマグマ噴出量としては10 - 1000m3(VEI=0)、5年余りに渡る活動期間中の噴出物の総量では0.2 km3(VEI=4)程度、また20世紀最大の火山噴火とされる1991年ピナトゥボ山噴火はVEI=6であったが、北米のラ・ガリータ・カルデラ[11]、サンフアン火山地域(英語版)、イエローストーンなどでは1,000 km3の規模となり、火砕流の規模だけでも雲仙普賢岳の1000万倍程度となる。このように破局噴火は火砕流堆積物に代表される噴出するマグマの量が途方も無く多いのが特徴である。
第四紀のVEI-7以上の噴火
日本国内9万-8万5000年前の阿蘇4火砕流・火山灰7300年前の幸屋火砕流と鬼界アカホヤ火山灰

日本ではVEI-7以上の噴火は7000年 - 1万年に1回程度の頻度で発生している。最後のイベントは約7,300年前の鬼界カルデラ[12]。太字はVEI-8。

7,300年前 - 鬼界:幸屋(船倉)降下軽石・及びintra-plinian flowとして船倉火砕流 → 大地震 → 竹島(幸屋)火砕流・及びco-ignimbrite ashとして鬼界アカホヤ火山灰。総噴出量 133?183 km3 DRE以上[13]

3万年前 - 姶良:大隅降下軽石・及びintra-plinian flowとして垂水火砕流 → 妻屋火砕流 → 入戸火砕流・及びco-ignimbrite ashとして姶良丹沢テフラ。総噴出量 380 - 430 km3 DRE[14]

3.9万年前 - 屈斜路:屈斜路T火砕流。総噴出量 45?87 km3 DRE。

4.6万年前 - 支笏:マグマ水蒸気爆発 → 降下軽石 → 火砕流噴火。総噴出量 100?130 km3 DRE。

8.8万年前 - 阿蘇:Aso-4火砕流。総噴出量 380 - 790 km3 DRE[14]

9.5万年前 - 鬼界:長瀬火砕流・及びco-ignimbrite ashとして鬼界葛原火山灰。総噴出量 138 km3 DRE。

10万年前 - 御嶽山 - Pm-Tテフラ。総噴出量 30 km3 DRE。

10.5万年前 - 阿多 - 阿多火砕流。総噴出量 188 km3 DRE。

10.6万年前 - 洞爺:洞爺火砕流。総噴出量 38?77 km3 DRE。

11.5?12万年前 - 屈斜路:屈斜路W火砕流。総噴出量 180?370 km3 DRE。

13万年前 - 阿蘇:Aso-3火砕流。総噴出量 96 km3 DRE。

14.1万年前 - 阿蘇:Aso-2火砕流。総噴出量 32 km3 DRE。

17.5万年前 - 阿寒:阿寒第2テフラ。総噴出量 56.8km3 DRE。

20?30万年前 - 鬼首:池月凝灰岩。総噴出量 18?61km3 DRE。

24万年前 - 阿多:阿多鳥浜火砕流。総噴出量 60 km3 DRE以上。

26.6万年前 - 阿蘇:Aso-1火砕流。総噴出量 32 km3 DRE。

33?34万年前 - 加久藤:加久藤火砕流。総噴出量 50?156 km3 DRE。

43?45万年前 - 姶良?:辺川-笠森5テフラ

48?53万年前 - 姶良?:竹山-笠森10テフラ

52?53万年前 - 小林 - 小林火砕流・及びco-ignimbrite ashとして小林-笠森11テフラ。総噴出量 156 km3 DRE。

60万年前 - 上宝:上宝火砕流・及び貝塩上宝テフラ。総噴出量 50 km3 DRE。

60万年前 - 霧島? - 下門-笠森18テフラ

87万年前 - 猪牟田:耶馬渓火砕流・及びピンク火山灰

100万年前 - 猪牟田:今市火砕流・及びアズキ火山灰

100万年前 - 玉川 - 玉川溶結凝灰岩D。総噴出量 32 km3 DRE。

100万年前 - 十勝三股:十勝三股火砕流。総噴出量 130 km3以上。

110万年前 - 塔のへつり:西郷火砕流

130万年前 - 塔のへつり:芦野火砕流

140万年前 - 塔のへつり:隈戸火砕流

160万年前 - 白沢天狗山:SK100-Kd24テフラ

165万年前 - 爺ヶ岳:大峰-SK110テフラ(kd25)

175万年前 - 穂高:恵比寿峠火砕流・及び恵比寿峠-福田テフラ(Kd38)。総噴出量 380 km3 DRE。

176万年前 - 穂高:丹生川火砕流・及び穂高-Kd39テフラ。総噴出量 300 km3 DRE。

176?200万年前 - 飛騨山脈のどこか:北沢溶結凝灰岩

176?200万年前 - 穂高?:曽根原溶結凝灰岩

200万年前 - 爺ヶ岳?:丹生子溶結凝灰岩

200万年前 - 爺ヶ岳?:一宇田溶結凝灰岩

200万年前 - 爺ヶ岳?:霊松寺溶結凝灰岩

200万年前 - 古焼山?:玉川溶結凝灰岩R4。総噴出量 84 km3 DRE。

220万年前 - 爺ヶ岳?:穂高3テフラ

220?230万年前 - 白沢天狗山?:谷口-Tspテフラ

大規模な火砕流噴火によってカルデラが形成された、或いは大規模火砕流・広域テフラで噴出量不明のイベント

完新世 - 黒瀬西海穴

後期更新世以降 - 硫黄島

第四紀 - 明神海丘

51万年前 - 北海道中部のどこか:上旭ヶ丘軽石流

62万年前 - 豊肥火山地域のどこか:誓願寺-栂テフラ


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