砂糖依存症
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砂糖依存症(さとういぞんしょう、Sugar addiction)とは、砂糖などの甘味料を多く含む甘い飲料食品の過剰摂取によって様々な罹患症状を発現させる依存症の一種である[1]
目次

1 甘味のメカニズム

2 臨床根拠

3 摂食障害との関連

4 合併症

5 その他

6 脚注

7 参考文献

8 関連項目

9 外部リンク

甘味のメカニズム「甘味」、「スクロース」、「グルコース」、および「フルクトース」を参照

砂糖の主成分ショ糖(スクロース)は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)で構成され、果糖がおいしい甘さをもたらす[2]清涼飲料水に使われる高果糖コーンシロップなどの異性化糖は、果糖55%、ブドウ糖45%の割合で健康への影響はショ糖と同様とされる[2]
臨床根拠

依存症として定義は合意が不足しており複雑であり、また患者にとっても甘い飲料食品の過剰摂取による自覚症状がない場合もある。1998年、キャサリン・デスメゾンズは脳でのオピオイドμ受容体の活性により引き起こされた生理状態について砂糖依存症の概念を提唱した[3]。デスメゾンズは、砂糖が鎮痛剤として作用しモルヒネブロッカーから遮断することができたことを示す先行研究[4]に基づき、砂糖はDSM IVで概説されていた他の薬物依存症と同様の依存関係があると指摘した。それ以来、デスメゾンズによる仮説を確証する臨床検査が増加し[1][5]プリンストン大学のバード・ホーベルは、砂糖がほかのドラッグに対するゲートウェイドラッグ(入門薬物)として機能する可能性に注目し、砂糖の神経科学的な作用を研究した。

2008年の研究「砂糖依存症の臨床根拠:砂糖の周期的な過剰摂取に関する行動神経化学的機能」でも、砂糖が脳内ドーパミンオピオイドに作用し、依存症となる可能性についての臨床根拠が得られており、「乱用」「離脱症状」「渇望」「交差感作」の四つの過程において行動主義的に砂糖乱用が強化因子として作用すること薬物依存との比較などを通じて立証された[1]神経の適合は、ドーパミンオピオイド受容体の結合、エンケファリンmRNAの発現と側坐核におけるドーパミンとアセチルコリンの放出の変化を含んでいる。

Leah Arinielloは砂糖依存症のラット実験について以下のように述べている[5]。近年のラット実験は、砂糖とドラッグの共通点を示している。薬物依存は一般に、薬物摂取の増大、摂取停止からの離脱症状、薬物への渇望と摂取回帰という三つの段階を経由する。砂糖を投与したラットも同様の行動をとった。実験では、餌を与えずに12時間経過してから砂糖水を与えた。周期的な過剰摂取(乱用)によって摂取は増大し、倍加した。餌の停止またはオピオイド遮断によってラットは歯ぎしりや震えなど、薬物中毒者と同様の禁断症状を発症し、再発の兆候も示した。ラットへの砂糖水投与をやめると、砂糖水の出るレバーを何度も押すようになった。

砂糖関連の企業が行った実験では、ラットに対してカロリーゼロの甘味料投与によって類似作用が報告されている[6]

砂糖と甘味は、脳のβエンドルフィン受容体の部位を活動させる刺激となる。これらはヘロインモルヒネによって活動させられる同じ化学物質である[要出典]。
摂食障害との関連

心理学者はこれらの研究によって、過食症診断の基準を確立させることができると主張するが、それよりも砂糖を乱用薬物と同じカテゴリーとみなして用いるよう注意すべき結果といえる。彼らは、食物摂取量と依存症を支配するシステムの間になんらかの重複があると信じているが、ある特定の食物に依存性があるとはまだ明確に述べることはできていない[要出典]。もし定期的な摂取を停止したあと、乱用するようであれば、甘い食品への依存とすることができ、これは神経性大食症などの摂食障害と関連するかもしれない(上記引用したラット実験)。

一般的に依存症に分類されるには、再現性のある「二重盲検」の実験などによって、以下の3つの過程の観察データを提示する必要がある。
摂取量が増加する行動パターンと神経伝達物質の変化。

欠乏時の神経伝達物質の変化と離脱症状の兆候。

離脱症状後の再発と渇望の兆候。

2003年、国際連合が委託した世界保健機関国際連合食糧農業機関委員会の報告では、砂糖は健康的な食事では10%以上を占めるべきではないと定められた[7]。他方、アメリカ砂糖協会[8]は、飲食品の砂糖率25%がまでは安全と主張したが、以下のタフツ大学の研究とは矛盾する。プリンストン大学の砂糖依存症研究では、一般に市場で人が入手している炭酸飲料水と同程度の25%の割合の砂糖水をラットに投与したところ、一ヶ月でラットは甘い飲食品への依存症状を見せるようになり、通常の餌よりも砂糖水の摂取を選ぶようになった。 - タフツ大学 Health & Nutrition Letter[6]コーラ (飲料)#健康上の課題」も参照
合併症

米国人の肥満の原因は特に果糖にあるとされ、コロラド大学デンバー校のリチャード・ジョンソンによると、ブドウ糖が全身の細胞で代謝されるのに対し、果糖は肝臓で分解され中性脂肪が生成され蓄積されると肝機能が低下する[2]。また血液中の中性脂肪高濃度状態が続くと高血圧脂質異常症を発症し、またインスリン反応を低下させることで膵臓血糖値を保つためインスリン分泌量を増やし、メタボリック・シンドロームとなったり、症状が合併し糖尿病心臓発作のリスクが増大する[2]。肥満の原因とされる運動不足の原因も砂糖依存によるといわれ、糖摂取は一時的に高揚感が得られるがエネルギーを奪われるためとされる[2]

アメリカ心臓協会は砂糖は高カロリーで栄養がないため糖類の過剰摂取を警告しているが、ジョンソンやカリフォルニア大学サンフランシスコ校の内分泌学者ロバート・ラスティグは、カロリーの問題ではなく、砂糖の大量摂取はであると述べている。
その他

1996年、米国ミシシッピ州クラークスデール肥満糖尿病高血圧心臓病を抱える住民の割合が全米中著しく高いという報告をうけ、小学校からコーラやスナック菓子の自動販売機などが撤去された[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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