この項目では、自然現象について説明しています。テレビ用語については「スノーノイズ」をご覧ください。
アメリカ合衆国テキサス州、1935年大西洋を渡るサハラ砂漠の砂嵐、2000年砂嵐に包まれたクウェートの町
砂嵐(すなあらし、英: sandstorm)あるいは砂塵嵐(さじんあらし、duststorm)とは、塵や砂が強風により激しく吹き上げられ、空高くに舞い上がる気象現象。サンド・ダストストームと総称されるが砂塵嵐等の定義は国や研究者により異なる[1]。空中の砂塵により、見通しが著しく低下する。砂漠などの乾燥地域において発生する。 サンド・ダストストームと総称される現象には、日本語の砂塵嵐、中国語の砂塵暴のような気象現象を含むが、これらは国や研究者により定義が異なることが問題点として指摘されている[1]。 まず"duststorm"と"sandstorm"は厳密な定義が異なる。"duststorm"は、吹き上げられている土壌粒子の多くが粒径1/16ミリメートル以下、砕屑物の分類上「シルト」や「粘土」等であるものをいう。一方sandstormは、吹き上げられている土壌粒子の多くが粒径 2 - 1/16 ミリメートルの「砂」であるものをいう[2]。 "duststorm"は乾燥した土地であれば発生しうるのに対して、"sandstorm"はいわゆる「砂砂漠」の砂丘のように、粒径の小さい微粒子よりも砂の方が多いところでしか発生し得ない。また、duststormは上空数千メートルの高さまで舞い上がり、時には砂の壁を形成するほどに発達するのに対し、sandstormは砂粒が地面を跳ねながら進む運動の動きをするためせいぜい数メートルまでしか舞い上がらず、15メートルを超えるようなものは稀と言われる[2]。 日本語ではduststormは「砂塵嵐」、sandstormは「砂嵐」と訳すが、「砂塵嵐」が砂と塵の2つの語を含んでいることからduststormsandstorm2つを総称して「砂塵嵐」と呼ぶ場合もある[3]。 気象観測において天気を通報する際には、国際気象通報式のSYNOPおよびSHIPにおいて砂嵐や砂塵嵐を表すものは以下の8種類ある[4]。 METARやTAFでは、「視程障害現象」の欄のDUがちり、SAが砂を表し、「特性」の欄の低いを表すDR、高いを表すBLと組み合わせて用いる[5]。 日本では、「塵または砂」が強風により空中高く舞い上がっていて、視程1キロメートル未満のときに天気を「砂じんあらし」とする[6][7]。 日本では、天気を自動で判別する機械が導入され、目視観測を2019年2月から順次終了したことに伴い、「砂じん嵐」の記録を終了した[8]。 北アメリカのグレートプレーンズ、アラビア半島、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、サハラ砂漠などにおけるものが有名である。地表の乾燥した地域では珍しい現象ではなく、砂嵐の多い地域では、1日に数回も発生したり、1回の砂嵐が数日間続いたりする例もある。一般的に砂漠と呼ばれる地域ではほぼ例外なく砂嵐が発生しうるが、地表面の状態によっては発生しにくい砂漠もある。 例えば、地表のほとんどが岩石で覆われていて砂塵の少ない岩石砂漠地帯では、強風が吹いても砂嵐は発生しにくい。また同様に、土砂漠やサバンナなどで、雨期に入って湿ったり、植生に覆われたりして、土壌が固定されると砂嵐は発生しにくくなる。このような性質から、多くの地域では砂嵐に季節性があり、乾期の特に風の強い時期に、砂嵐が最も多く、激しくなる。 砂嵐の原因には大きく2つある。1つは地表面の状態であり、乾燥しているほど、土壌粒子が細かいほど、土壌が柔らかく移動性の砂塵層が厚いほど、砂嵐は発生しやすい。もう1つは天候の状態である。ある程度の広範囲に強風が吹くと、砂嵐が発生する。地形の影響で差があるが、多くの乾燥地域では、風速約10メートル/s以上の風が吹き続ける天候下では砂嵐が発生しやすいとされている。一般的に、低気圧の接近や寒冷前線の通過による強風が、砂嵐を発生させる。また、大気が不安定な状況下で局地的に突風が吹いて、砂嵐を発生させることもある。 大抵の場合、砂嵐の中は周囲よりも高温で乾燥している。砂嵐の中に含まれる砂塵が空気中の水分を奪うとともに、空気へと熱を放出するためである。しかし、時に雨を伴った砂嵐が発生することがあり、湿った砂嵐も存在する。 発生点から砂嵐の発生を見た場合、地表付近からにわかに砂が舞い上がり始めて濃度が増していく様子が観察される。一方、少し離れた地点からやってくる砂嵐を見た場合、砂嵐の塊、いわゆる「砂の壁」が迫ってくる様子が観察される。弱い砂嵐は地表から上空数十メートル程度までしか砂塵が舞い上がらないが、強い砂嵐の場合は上空2,000?5,000メートル程度まで達する。ただし、粒子が大きいものは高く上がらないので、濃い砂嵐は大体高さ数百m程度になるのが普通である。 昼間でも視界が数メートルになるような濃い砂嵐であっても、低気圧などの強風帯とともに数百?数千キロメートルを移動して各地に被害をもたらすことがしばしばある。発生地では砂丘がごっそり数キロメートル移動してしまうような場合もある。飛来地でも、数糎もの砂が積もり、町の景色が一変するような場合がある。一般的に、砂嵐が濃いと日光が散乱されるため周囲が赤みを帯びてきて、さらに濃くなると日光が完全に遮られて夜のように暗くなる。 屋外で砂嵐に遭遇した場合、砂が体に付着したり吸い込んだりすることで不快感を覚えたり、吸い込んだ砂が気道や肺に達することで健康に影響が及んだりすることがある。これらに対処するため、砂嵐のときには外出を控えるなどし、やむを得ず外出する場合は、体の広範囲を覆える長袖の衣服を着用したり、帽子やスカーフ、布などで頭を覆って砂の侵入を防いだりする対策がとられる。砂嵐の常襲地域である中東などでは、砂の侵入が少ない、一枚布や体を広く覆える形状の衣装が一般化している。 粒子の細かい砂塵は、高く舞い上がって上空の強い気流に乗り、長距離を移動する。アラビア半島やゴビ砂漠、サハラ砂漠などの砂嵐は大規模な長距離移動をすることで知られており、砂嵐とは無縁にも思える、温帯や熱帯の湿潤地帯にも届いて砂塵を降らせることがある。 各地の砂嵐や砂嵐をもたらす「風」には、固有名詞がついたものも多い。
定義
09.現在観測所にはないが視程内に砂じんあらしがある、または前1時間内に砂じんあらしがあった→
30.弱または並の[注 1]砂じんあらし。前1時間内にうすくなった→
31.弱または並の[注 1]砂じんあらし。前1時間内に変化なし→
32.弱または並の[注 1]砂じんあらし。前1時間内に濃くなった→
33.強い[注 2]砂じんあらし。前1時間内にうすくなった→
34.強い[注 2]砂じんあらし。前1時間内に変化なし→
35.強い[注 2]砂じんあらし。前1時間内に濃くなった→
98.観測時に雷電。砂じんあらしを伴う→
「その他の現象」欄ではSSがsandstorm、DSがduststormを表す。
観測
発生
モロッコ・マラケシュの砂嵐
イラクの砂嵐
砂嵐にかすむドバイのビル群
紅海を横断する砂嵐の帯
朝日に赤く染まる砂嵐、2009年9月シドニーにて
車に積もった砂
雨に流されて車のボディーにこびりついた砂
砂嵐から頭部を守るために布をかぶった男性
砂嵐の地方名
ハブーブ - 北アフリカ、中東。アメリカでは砂嵐を伴った強風を表す気象用語として採用されている[9]。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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