石油ファンヒーター
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「FF式」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「FF」をご覧ください。
石油ファンヒーター

石油ファンヒーター(せきゆファンヒーター)とは、暖房器具の1つ。灯油を燃焼しそのエネルギーで得たを送風ファンによって排出し暖をとる電気製品である。他の暖房器具に比べ安価で操作が簡単、ランニングコストが安いことが利点。一方原油価格による影響を受けやすく、また灯油の扱いや燃焼(主に点火・消火)時の臭気がデメリットともされる。政府統計では強制通気型石油ストーブと分類されている。

ファンヒーターは、多くの人に親しまれており、1978年三菱電機が初めて商品化し[1]、以後各家電メーカーや石油ストーブを生産していた暖房器具メーカーが参入した。しかし2004年前後に価格競争の激化や電気ファンヒーター(イオンファンやセラミックファン等)への転換などにより大手メーカーが撤退しはじめ、2007年のシャープをもって総合家電メーカーは石油ファンヒーター事業から手を引くことになった。

また省エネのために住宅の密閉度を高める政策により、換気を要するファンヒーターは使いにくくなっている。しかし安価で強力な暖房力があり、また乾燥しにくいなどの特性のため、依然として根強い需要がある。エアコンは低温では能力が低下するため、ファンヒーターで温度を上げてからエアコンで維持する方法が多く使われている。

しかし古くなるとタール蓄積やシリコン付着によるトラブルが発生しやすく、また換気不良による事故もあり訴訟対策のためもあって多くのメーカーが撤退したが、依然としてコロナダイニチ工業トヨトミ・日本エー・アイ・シーなどのメーカーが生産を行っている。エアコン普及と住宅気密度上昇により2014年頃一時的に需要が低下したが、その後は微増を続けており現在でも開放式だけで年間200万台以上、金額にして約300億円程度の安定した需要がある[2]

パラフィンファンヒーター(paraffin fan heater)またはケロシンファンヒーター(kerosene fan heater)とも呼ばれる。目次

1 基本的な構造

2 構造による違い

2.1 開放式

2.2 FF式(密閉式・強制給排気形)

2.3 FE式(強制排気型)


3 燃焼方式の違い

3.1 ブンゼン式

3.1.1 クリーニング機能


3.2 ポンプ噴霧式(ARCバーナー)

3.3 ポット式

3.4 ロータリー式

3.5 その他の方式


4 主なトラブル

5 主な石油ファンヒーターメーカー

6 事故・リコール

7 脚注

8 関連項目

基本的な構造

灯油を機械的な仕組みで気化させ、空気との混合ガスに変えて燃焼させ、発生した熱を本体背面にある送風ファンにより機外(室内)へと送り出す。送風ファンによって室内の空気が強制的に攪拌されるため、部屋全体を速く暖める能力には優れている。を使った自然気化式の石油ストーブと比べ構造的には複雑で、商用電源を必要とすることから、停電時には使えなくなる。

全てのストーブは「水平な床」に据え付けて使用するよう指示されており、傾斜・段差・凹凸のある不安定な床に据え付けると「耐震自動消火装置の誤作動」・「灯油漏れによる火災」・「給排気筒や煙突が外れたり・接続部に隙間ができて破損しやすくなり、排ガスが室内に漏れて一酸化炭素中毒」の危険がある[3]

灯油を気化して燃やす方式では通常、電源投入から燃焼&送風ファン回転開始まで40秒?10分程度かかり、電源を切った後も本体内部の温度を下げるため送風ファンが約2?10分間回る(電源プラグは送風ファン停止を確認してから抜き、いきなりプラグを抜いての強制消火は機器故障のおそれがあるので禁止[4])。電源入から燃焼開始までの時間を大幅短縮する「スピード点火」機能を用いる場合は(点火プラグへの通電時間が通常より長くなるため)点火時の消費電力が大幅に増える(スピード点火ボタンを押してから24時間以内に運転ボタンを押して点火操作をしない場合、点火プラグ保護と節電のためスピード点火機能は自動解除される)。また学校・公民館・オフィスなどでの集中制御に対応した機種も発売されている[5]。なお炎の状態を本体正面の燃焼窓から見た時に「飛び火(リフト)燃焼」や「炎が通常より大きすぎる・または小さすぎる」場合、不良灯油使用や給排気筒・フィルター・送油配管目詰まりなどによる不完全燃焼の疑いがあり、そのまま使い続けると機器の故障や一酸化炭素中毒を招く危険がある。また酸素が薄くなる標高1,500m以上の地域では不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険があるため、石油・ガス燃焼機器類の使用不可[6]

カートリッジタンクや油受け皿内の灯油が残り少なくなると本体ディスプレイに「給油」表示が出てブザー(またはメロディ)で給油告知をし、本体内油受け皿の灯油が完全に無くなると自動消火する機種が多い。カートリッジタンク式機種(石油ファンヒーター全機種とFF式石油暖房機&煙突式ストーブの一部機種)は、芯式ポータブル石油ストーブとは異なり「(燃焼中にタンクを抜くと灯油漏れによる火災防止のため強制消火する)給油時自動消火装置」非搭載のため、タンクは電源を切り本体が冷えてから抜く(タンク別設式機種も火災事故防止のため、外付けタンクへの給油は必ずタンク側の送油バルブを閉じ消火してから行う。本体に給油サインは無く、灯油残量は外付けタンクに付いている油量計で確認)。灯油の在庫は今シーズン中に使い切り、変質防止のため翌シーズンに持ち越さない(翌シーズンの使い始めに必要な分だけ新規購入する)よう取説で指示されている(直射日光や雨水が当たらず・かつ火の気のない冷暗所に保管し、変質防止のため給油時以外はポリタンクおよび金属製タンクの蓋を必ず閉めておく[7])。

大半の機種は時計を内蔵しており、好みの時刻に燃焼を始められる「オン(おはよう)タイマー」と・好みの時刻に消火できる「オフ(おやすみ)タイマー」をそれぞれ搭載している[8]。また本機の設置中および使用中に異常を検出した時は、本体ディスプレイに異常状態を英文字と2桁数字で知らせる「自己診断(エラーコード)表示」機能を搭載しており、修理依頼時は本体ディスプレイに表示されているエラーコードを販売店または各メーカー相談窓口(カスタマーセンター)へ伝えることで、依頼を受けた担当者が異常発生原因を即座に突き止められるようにしている。

かつては上位機種に加湿機能や加湿器専用コンセントが搭載されていたが、燃焼によって水蒸気が出るためか現行モデルの石油ファンヒーターおよびFF式暖房機に加湿機能や加湿器専用コンセントは搭載されていない(電気ストーブの一部に加湿機能搭載モデルがあるのみ)。また燃焼中に本体が動いて給排気筒や煙突が外れないよう(排ガスが室内に漏れ一酸化炭素中毒となる事故を防ぐため)、本体は必ず専用固定具で壁や床に固定するよう定められている(補強材のない薄壁などの場合、簡単に外れないよう必ず角材などの添え木をしたうえで固定具を装着する)。
構造による違い

燃焼用空気の扱いで、大きく分けて以下の3つの方式がある。
開放式

単に「石油ファンヒーター」と呼ぶ場合、通常はこの方式のみを指すことが多い。

燃焼用空気を室内から取り入れ、燃焼したガスを室内に排気する方式。燃焼の調節は供給する燃料の量を電子的に制御し、それに応じてファンモーターの出力を自動的に制御するようになっている。使用にあたっては定期的な換気が必要である(通常使用時は不完全燃焼や一酸化炭素中毒防止のため「電源入から3時間後に自動消火」する機能があり、継続使用する場合は1時間に1度以上部屋を換気し「延長」ボタンを押す)。室内に排気するので、一酸化炭素や臭いなどをなるべく出さぬよう燃料の量を正確に制御する技術が求められ、また点火時、消火時に石油臭を減らすために細かい制御が加えられている。そのため、普及においてはFF式の方が早かった。

開放式の石油ファンヒーターは1978年に三菱電機の群馬製作所が開発し、日本国産第1号機が発売された。商品名は「ダンファン(暖ファン)」と命名された。

なお交流100V電源を用いる開放式ストーブ(ブルーヒーター)は主に業務・店舗用のため、気密性の高い8畳以下の小さな部屋では使えない(不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険があるため)。また石油ファンヒーターは一酸化炭素中毒防止のため「点火後3時間経つと強制消火」するようになっており、オフタイマー動作直前にランプ点滅とブザーにて告知する。継続使用する場合は部屋の換気をしたのち「延長」ボタンを押せば燃焼時間が3時間延長される。
FF式(密閉式・強制給排気形)

Forced draught balanced Flue type。

燃焼用空気を室外から給排気筒を通して燃焼用送風機の力で強制的に取り入れ発生した熱を送風ファンで室内へ送り出し、排気は給排気筒を通して室外に出す方式。開放式と違い使用時に定期的な換気は必要ないが、給排気筒の設置工事が必要である[9]

FF式の石油温風暖房機は開放式の石油ファンヒーターが登場する以前から商品化されており、例としては1973年には日立製作所で発売[10]1974年にはコロナで発表された記録がある[11]


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