石の花_(坂口尚の漫画)
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石の花
ジャンル
戦争漫画
漫画
作者坂口尚
出版社潮出版社

その他の出版社
新潮社講談社光文社KADOKAWA

掲載誌コミックトム
レーベル希望コミックス
発表期間1983年 - 1986年
巻数全6巻(希望コミックス)
全5巻(新版、新潮コミック)
全5巻(新版、講談社漫画文庫
全4巻(新版、講談社コミックスDX
全3巻(新版、光文社コミック叢書SIGNAL
全5巻(新版、青騎士コミックス
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画
ポータル漫画

『石の花』(いしのはな)は、坂口尚による日本漫画第二次世界大戦時、ナチス・ドイツの侵攻を受けたユーゴスラビアを舞台にした「戦争大河」作品で[1]、極限状況にありながら理想を求める若者の生き方を描く。坂口の代表作である[2]
沿革

『石の花』は、『コミックトム』で1983年3月号[3]から1986年8月号[4]まで連載し、版元の潮出版社から単行本全6巻(希望コミックス)が刊行された。

当時の担当編集者は、坂口に「抵抗する側からの戦争漫画」のテーマを提案したところ、パルチザン闘争を提示され[5][6]、「巨大なものに立ち向かう側からの戦争の意味と、人間の尊厳を描き出そうと、ナチスドイツに対する抵抗運動を素材にすることになりました」[注釈 1]と述べている[6]。編集担当者は、日本人にはなじみが薄い「第二次世界大戦下のユーゴスラビア」が舞台であるため、当初は不安を感じていたという[6]

その後、全体に大幅な加筆を加え、新潮社で『新版・石の花』(全5巻、1988年)として刊行された[7][8]。この新版は、著者没後に講談社で、文庫版(全5巻、1996年)や愛蔵版(全4巻、2003年)でも刊行された。

1990年代にはフランスでも出版され、2022年にもフランス語の新装版が刊行された[6][5]

2022年1月から2月にかけては、新潮社版を底本として再編集された新版がKADOKAWAから刊行された[9]。この新版はそれまでに発行された単行本の中で最も大きいサイズである他[10]、最終第5巻には本作の原点とも言える坂口作画によるユーゴスラビア製映画『抵抗の詩』のコミカライズ作品「抵抗の詩 第一部」「抵抗の詩 第二部」(『まんが王』1970年8月号、9月号掲載)が単行本初収録されている[11][12]

2023年、本作品に対してフランス・アングレーム国際漫画祭の「遺産賞」が贈られた[6][5][13]

さいたま市NPO法人マンガ作品保存会MOMは、「坂口尚オフィシャルサイト午后の風」を運営している「一般社団法人作品保存会午后の風」と連携し、保管されている「石の花」を含め1万枚近い原画の修復、デジタル化を進めている[14]
あらすじ

このあらすじは潮出版社版をもとに作成している。物語は1941年から1945年5月までのユーゴスラビアをクリロとフィーの体験を通して描いている。
侵攻前夜
1941年、
ユーゴスラビア王国スロベニア地方東部のダーナス村に新任のフンベルバルディンク先生が中学校の臨時教員としてやってきた。フンベルバルディンク先生はクリロとフィーに突然変異を例に挙げて「力と運命」の話を始め、「人間は現実の時間を歩きながら、頭の中で時を戻ったり、先に進んだりすることができる。この空想の力は人間だけに与えられたものだ」と語る。首都ベオグラード三国同盟に加入した政府を軍の将校たちが倒すクーデターが発生する。クリロの兄イヴァンたちは酒場で気勢を上げるが、クリロの父はイヴァン対して「この国はわしら多くの貧しい農民が大昔から天候と闘いつづけ耕し育ててきたんだ。一握りの政治家でも革命家連中でもない」と話す。
枢軸国軍の侵攻
生徒たちはフンベルバルディング先生に引率されてポストイナ鍾乳洞を見学する。巨大な鍾乳洞の中をトロッコ列車で奥に向かい、巨大石柱のある空間に出る。フィーは思わず「まるで花のようだわ、石でできた花」とつぶやく。先生は「これは石の花じゃない、花に見えているのは僕たちのまなざしなんだよ」と語る。村に戻る途中で生徒たちは突如来襲したドイツ軍機に銃撃され、クリロだけが逃げ延びる。出発が遅れたフンベルバルディング先生とフィーは難を逃れる。ダーナス村はすでにドイツ軍に制圧されており、クリロは山中に逃げ込む。フィーはドイツ軍に捕らえられ、他の村人と一緒に強制収容所に送られる。
強制収容所
強制収容所では労働に耐えられる者、耐えられない者に区分され、後者には死が待っていた。フィーたちは丸刈りにされ、消毒され、番号で呼ばれるようになる。収容所を管理するマイスナー親衛隊大佐は、亡き妹と瓜二つのフィーを屋敷に連れてきて、きれいな服を着せ、長い髪のかつらを使用させ、マリーネと呼んで大切に扱う。
クリロとイヴァン
クリロはミントのつてで、イヴァンの恋人とされるミルカに会い、彼がドイツ軍に捕まったと聞かされる。クリロはイヴァンと近いブランコの反独ゲリラに志願する。イヴァンはドイツ軍情報局将校のエルケを連絡係としてスパイ活動(実は二重スパイ)を開始する。そんな中でドイツのソ連侵攻が始まる。
再会
クリロはマイスナーの屋敷に侵入し、フィーに再会、級友がすべて殺害されたこと、ダーナスの人々も多くが殺害されたことを伝える。脱出に失敗し二人は捕まり、マイスナーの前で尋問される。クリロという名前からマイスナーはイヴァンの弟であることを知り、クリロを地下室に監禁する。マイスナーの屋敷でクリロはイヴァンと再会し、マイスナーとイヴァンが7歳までドイツで一緒に学んだ仲であること、イヴァンにはドイツ人の血が流れていることを知らされる。イヴァンはクリロとは兄弟ではなく従兄弟であること、ドイツのために誇りをもって働いていることを打ち明け、クリロは怒りをぶちまける。イヴァンはクリロの助命を嘆願するが聞き入られず、自らクリロを撃ち、川に転落する。マイスナーはそれが芝居であることを見抜きながらも、コスモポリタンを夢見るイヴァンを放置する。マイスナーはイヴァンが人を信じすぎるが、自分は信じないだけだと説明する。
二つの幻
生き延びたクリロは森の中を逃げ惑い、昼間の森で、夜の森で弱肉強食という自然の冷たい掟を目の当たりにし、一見平和に見える森は幻であることを学ぶ。クリロが死んだと知らされたフィーはふさぎ込み、戦争の現実が幻であることを自分に言い聞かせようとする。クリロは出会ったユダヤ教徒のイザークが、戒律により人を殺すことができないのを知る。それは、やられたらやり返すというクリロの持っていた力の論理とは異質なものであった。ミルカはクリロからイヴァンがドイツのスパイであることを知り、ショックを受け、ゲリラ部隊から離脱する。
ユーゴ政府資金とモルトヴィッチ
フィーは屋敷を抜け出し、走ってくる車に飛び込んで重体となる。フィーは病院に運ばれ、一命をとりとめたが目の怪我で失明の危険性が出た。看護師から紅いバラのお見舞いがあったと聞き、花瓶をたたき落とし、捨てるよう叫ぶ。包帯が外されても何も見えないが、フィーはこれでいい、なにも見たくないと叫ぶ。エルケは、情報局主任からドイツ侵攻前にユーゴ政府が保管していた巨額の資金(金塊)が行方不明となっており、それにモルトヴィッチという男が関与していると聞かされる。エルケはこの資金が反乱ゲリラやパルチザンに流れることを阻止する任務を命じられ、イヴァンと連絡をとる。
最初の殺人
ドイツ軍の無差別攻撃を受け、ブランコのゲリラ部隊は山中に退避する。ブランコはミルカとクリロの会話を聞いており、クリロに「おまえがなにを見たとしてもイヴァンを信じろ」と助言する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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