知性化シリーズ
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『知性化シリーズ』(ちせいかシリーズ、The Uplift series)は、アメリカのSF作家デイヴィッド・ブリンによるSF小説シリーズである。長編4本(うち1本は3部作)、短編3本(うち1本は長編の原型)が発表され、長編の日本語版は酒井昭伸の訳によりハヤカワ文庫から刊行されている。
概要

超光速航法を開発し太陽系外に進出したヒトは、超空間を通してつながっている5つの銀河系が、「列強諸属[注釈 1](ギャラクティックス)」と呼ばれるいくつもの異種生命体たちによって制覇されていることを知る。それら列強諸属は準知的生物を知性化して自らの従僕「類属(クライアント・レース)」とし、彼らの「主属(パトロン・レース)」として君臨していた。列強諸属自身、かつては類属であり自らの主属によって知性化された存在であった。知的生命体は全ていずれかの主属により知性化されたもので、その知性化の流れは20億年以上前の伝説的な存在〈始祖〉によって始められたとされる、侵すべからざる神聖な掟であった。

〈始祖〉以来のあらゆる知識が蓄積されているという〈ライブラリー〉にも、〈始祖〉を除いて独力で超光速航行を達成した種属はまったく記録されておらず、むしろあり得ないこととされており、列強諸属は主属を持たないヒトを異端視しながらも、既にチンパンジーとイルカの知性化に手を付けていた彼らを主属として扱わざるを得なかった。比較的穏健な2・3の種属系列の助けによって、アースリング(ヒトとその類属で構成される系列)はいくつかの太陽系外惑星に植民することを認められたが、列強の多くは隙あらば彼らを征服するか滅ぼそうとしていた。

シリーズが進むにつれて、知性化は中途半端に知性を持ってしまった生物による環境破壊、とりわけ同じ惑星に住む他の生物を絶滅させてしまうことを防ぐための手段でもあることが明かされていく。酸素大気惑星は原住生物のもので、そこに植民する種属は惑星を領有するのではなく一定期間(最短で6千年、最長で300万年またはそれ以上)貸与されるだけであり、惑星全体の環境や知性化可能段階に達していない生物への影響をなるべく抑えなければならない。貸与期間が過ぎれば可能な限り原状回復した上で退去し、別の種属が植民するまでは休閑期間が設けられる。列強諸属の代表からなる植民協会がそれを管理しており、他にもライブラリー協会や知性化協会などが存在する。

列強諸属はすべて酸素呼吸生物だが、《知性化の嵐》の終盤には水素呼吸生物や更に奇妙な生命形態も登場する。

第1作『サンダイバー』以外は登場人物たちが複数のグループに別れ、それぞれのグループの行動が絡み合いながらストーリーが進行する。
長編
サンダイバーSundiver(1980年)/ 1986年9月、ISBN 4150106851ファースト・コンタクトから半世紀と経っていない西暦2246年(太陽系外で異星人と遭遇した恒星船が帰還したのは、デムワが10歳の時だった)、地球には異星人居留地や〈ライブラリー〉の分館が設けられ、銀河社会への仲間入りを果たしつつある一方、自分たちは自力で知性を獲得したと主張する〈毛皮派〉と、実は自分たちも知性化されたと主張する〈開化派〉の争いも起きていた。かつて敏腕捜査官だったジェイコブ・デムワは、2年前に妻を失ってから第一線を退いていたが、旧知の異星人によって居留地へ呼び出される。太陽彩層に住む知的生物らしきものが発見され、彼らこそが人間の主属ではないかという疑いが持たれていた。水星基地を訪れたデムワは、様々な思惑を持つ地球人や異星人と共に、地球の在来技術と〈ライブラリー〉の技術を組み合わせた探査船で太陽内部に突入する。
スタータイド・ライジングStartide Rising(1983年)/ 1985年10月、ISBN 4150106363(上)、ISBN 4150106371(下)ファースト・コンタクトから二百数十年後、知性化されたイルカをメインクルーとする外宇宙船〈ストリーカー〉が銀河辺境を訓練航行中、一隻がほどもある巨大宇宙船団の遺跡を発見する。その古さ(数十億年前)と規模から伝説の〈始祖〉の船団であろうと推測されるそれらの情報を、軽率なクルーが地球に向けて送信したために、その内容が列強諸属によって傍受されてしまった。〈始祖〉への接近は種属間のヘゲモニーに計り知れない影響を与えるため、列強諸属は〈ストリーカー〉を拿捕して情報を独占すべく、艦隊を出動させた。追われる〈ストリーカー〉は逃走中にダメージを受け、海洋惑星キスラップの海底に潜伏した。キスラップ宙域には列強諸属が殺到し、互いに戦端が開かれる。一方、〈ストリーカー〉のイルカたちにはキスラップの過酷な自然の犠牲となる者や、ストレスから先祖返りの兆候を示す者が続出し、反乱を企てる者まで現れる。混沌とする情勢のなか、残ったクルーたちは墜落した宇宙戦艦を利用して船を偽装し、強力な列強艦隊から逃れようとする。1983年ネビュラ賞、1984年ヒューゴー賞ローカス賞受賞。
知性化戦争The Uplift War(1987年)/ 1990年6月、ISBN 4150108722(上)、ISBN 4150108730(下)列強諸属のグーブルーは、〈ストリーカー〉を追うだけでなくアースリングに貸与された植民惑星ガースにも艦隊を派遣する。艦隊を指揮する3人の〈冠首〉はグーブルーの支配階級たる貴巣族の新たなメンバー候補であり、ガース遠征はその中の誰が主導権を握るかの争いでもあった。ガース防衛軍の貧弱な宇宙艦隊を蹴散らしたグーブルーはヒト用に調合された遅効性の毒ガスを散布し、出頭した者に解毒剤を与えることでヒトの抵抗を封じる。残されたチンパンジーたちは抵抗運動を繰り広げるが、知性化の「失敗作」として生殖の権利を制限されていた者たちの中には侵略者に迎合する者も現れる。一方、ガースの山岳地帯では極秘裏にゴリラの知性化研究が行われていた。ゴリラの痕跡や曖昧な目撃情報は幻の準知的生物“ガースリング”の伝説を生み、グーブルーやガースに駐在していた異種属の大使たちを翻弄していく。グーブルーは恭順したチンパンジーたちを使って、彼らを自分たちの類属に組み込むための儀式を行おうとするが、相次ぐ乱入者によって儀式は大混乱に陥る。1988年ヒューゴー賞、ローカス賞受賞。
《知性化の嵐》三部作The Uplift Storm Trilogy
変革への序章
Brightness Reef(1995年)/ 2001年9月、
ISBN 4150113718(上)、ISBN 4150113726(下)休閑宣言により知的生物の立入が禁止されている惑星ジージョには、過去数千年の間にいくつもの種属が難民として流れ着き不法入植していた。リモートセンシングによる探知を避けるためにあらゆる機械や情報記録媒体を放棄した彼らは原始的な生活を余儀なくされていたが、300年近く前にやってきた最も新しい不法入植種属であるヒトは、知性化によって文明以前の段階から一気に高度情報化社会へ到達した他種属が知らない「紙に文字を印刷する」という革新的な技術を持ち込み、外の社会とは逆に他種属がヒトの影響を受けつつ共存していた。ある日、不法入植者たちの恐れていた列強諸属の一つローセンがジージョに現れるが、彼らは査察者ではなくジージョの遺伝子資源を狙う犯罪者だった。

戦乱の大地
Infinity's Shore(1996年)/ 2002年9月、
ISBN 4150114145(上)、ISBN 4150114153(下)不法入植者たちは自分たちを種属同士で争わせて滅亡に導き、口封じを図ろうとするローセンの遺伝子略奪者たちの陰謀を暴いたものの、更に凶悪な列強諸属ジョファーが来襲する。その頃、ヒトの冒険小説に熱中するあまり、手作りの潜水艇で海中探検に乗り出した異種属の若者たちは、深海に潜伏していた〈ストリーカー〉に遭遇する。ローセンもジョファーも、件の船を追ってジージョへやってきたのだった。

星海の楽園
Heaven's Reach(1998年)/ 2003年10月、
ISBN 4150114609(上)、ISBN 4150114617(下)〈ストリーカー〉は数人の不法入植者を連れてジージョを脱出した。ジョファーの戦艦〈ポルクジイ〉の追撃を受けつつ逃避行を続けるうち、宇宙膨張によって銀河同士を結んでいた超空間ネットワークが引き裂かれる「大断裂」が近付いていることが明らかになる。数億年に一度の巨大災害を前に、隠棲していた古き種属たちが活動を再開し、〈ストリーカー〉と〈ポルクジイ〉は彼らの壮大な計画に巻き込まれていく。

短編
キスラップの潮流
The Tides of Kithrup(
Analog, 1981年5月)/ 新時代社「SFの本」8号、1985年10月『スタータイド・ライジング』の原型。本作のみ福本直美訳。
誘惑
Temptation(Far Horizons, Robert Silverberg 編、1999年)/ ハヤカワ文庫『SFの殿堂 遥かなる地平 1』、2000年9月《知性化の嵐》でジージョに残ったイルカたちの後日談。
知性化の曙
Life in the Extreme(Popular Science, 1998年8月)/ 早川書房「SFマガジン」546号、2001年10月ファーストコンタクトより前、ヒトがイルカの知性化を始めたばかりの頃のエピソード。
登場種属

多くの種属は、その先祖が準知的生物にまで進化した惑星の名前が付けられる。正式名称は種属自身を表す名の後に「その種属の主属ないし元主属」「その種属の類属ないし元類属」などを並べる。例えば A という種属の正式名称が「A = 従 = B = 従 = C = 従 = D = 主 = X = 主 = Y = 主 = Z」ならば、B は A を知性化した種属、C は B を知性化した種属、D は C を知性化した種属で、この系列で現存する最古の種属、X - Z はいずれも A に知性化された種属である。

類属は原則として、自らを知性化した主属に対し10万年の奉仕義務を負う。ヒトは原則を無視してチンパンジーやイルカを自分たちとほとんど対等に扱っているが、彼らの知性化を始めてからまだ数百年しか経っていないため、遺伝子操作や血統による選別は続けている。
地球種属系列(アースリング)

ヒト = 主 = ネオ・チンパンジー = 主 = ネオ・ドルフィンライブラリーや主属の導きなしに宇宙航行を果たしたため、「鬼子種属」または「孤児種属(ウルフリング)」とも呼ばれている。その言動は良くも悪くも宇宙の混乱を招くため、温厚的な種族からも煙たがられている。

ネオ・チンパンジー = 従 = ヒト地球式の分類学に基く名称は「パン・アルゴノステス」。『サンダイバー』時代のチンパンジーは言葉を話すのが不可能ないし困難であり、意思疎通には手話やワードプロセッサーを必要としたが、『スタータイド・ライジング』や『知性化戦争』の時代には普通に会話できるようになっている。学者やエンターティナーとして活躍する者が居る一方で、まだ知性化の途中であり、時にそれが混乱を呼ぶ一因となっている。


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