矛盾
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同名のテンプレートはTemplate:矛盾をご覧ください。

矛盾(むじゅん、: contradiction)とは、「二つの物事が食い違っていて、辻褄が合わないこと」を意味する日本語であり、中国古典『韓非子』の「矛と盾」の故事に由来する故事成語[1]。また、西洋の論理学用語の訳語として以下の意味も持つ。

伝統的論理学で、二つの概念または命題が一定の事象を同一の観点から同時に、一方が肯定し他方が否定する場合の両者の関係。

命題論理学で、複合命題からなる論理式の各要素命題にいかなる真理値を与えても必ず偽となる式。

ドイツの哲学者ヘーゲルは自身の「弁証法」理論で、物事が発展する原動力として矛盾を重視した[1]
故事「矛と盾」.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキブックスに中学校国語 漢文/矛盾関連の解説書・教科書があります。中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。韓非子/難一

韓非子』難一篇に出てくる故事。「どんなも突き通す」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていたの男が、客から「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、返答できなかったという話から。もし矛が盾を突き通すならば、「どんな矛も防ぐ盾」は誤り。もし突き通せなければ「どんな盾も突き通す矛」は誤り。したがって、どちらを肯定しても男の説明は辻褄が合わない[2]。楚人有鬻楯與矛者 譽之曰 吾楯之堅 莫能陷也 又譽其矛曰 吾矛之利 於物無不陷也 或曰 以子之矛 陷子之潤B何如 其人弗能應也[2] ? 『韓非子』難編(一)楚人に盾と矛とを.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}鬻(ひさ)ぐ者有り。之(これ)を誉(ほ)めて曰(い)はく、「吾(わ)が盾の堅きこと、能(よ)く陥(とほ)すなきなり。」と。又(また)、其(そ)の矛を誉めて曰はく、「吾(わ)が矛の利(り)なること、物に於(お)いて陥さざる無(な)きなり。」と。或(ある)ひと曰はく、「子の矛を以て、子の盾を陥さば何如(いかん)。」と。其(そ)の人応ふること能(あた)はざるなり。[2]楚の国の人で盾と矛を売る者がいた。この人はこれを誉めて「私の盾は頑丈で、貫くことのできるものはない」と言った。また、矛を誉めて「私の矛は鋭くて、どんなものでも突き通すことができる」と言った。ある人が「あなたの矛でその盾を突き通したらどうなるのですか」といった。商人は答えることができなかった[2]
儒家批判における矛盾

「矛盾」は、韓非が『韓非子』の中で儒家孔子孟子がその代表、ここでは孔子)批判のためのたとえ話の中で、「矛盾」という言葉を使ったもの。儒家は伝説の時代の聖王の「」と「」の政治を最高で理想だとし、舜が悪きを改め、良い立派な行いをして人々を助けたから堯は舜に禅譲したとした。しかし、韓非によれば、堯が名君で民を良く治めていたとすれば、舜が悪きを改め、良い立派な行いをして人々を助けるということはそもそも起こりえない。一方が立派な人物だとすれば他方はそうではなくなってしまう。したがって、両方の者が同じく最高の人物で、理想的な政治を行ったというのは話が合わず、あり得ないという意味を込めて批判的に矛盾の喩え話をした[3]。いわば、この話には、韓非が儒家徳治主義)の思想を批判し、自説の法家法治主義)の思想の正当性を主張しようという意図があったのである。
訳語

英語の contradiction や ドイツ語の Kontradiktionを「矛盾」と訳すのは、明治時代井上哲次郎等著『哲学字彙』に由来する[4][注 1]。ただし、「矛盾」という語彙はそれ以前から日本語にあった[6]。翻訳語としての「矛盾」は中国語に逆輸入された[4]

英語の contradiction の語源は、ラテン語の contr?dicti? ないし contr?d?c? であり「反論」を意味した。英語の contradict は「矛盾する」のほか「?に反駁する(他動詞)」「反対の意見を述べる・反駁する(自動詞)」の意味も持つ[7][8]
論理学における矛盾「無矛盾律」、「背理法」、および「矛盾許容論理」も参照

まず命題論理における矛盾の定義を述べる:命題Pに対して、「Pかつ¬P」を矛盾という。

矛盾を利用した論法に背理法がある。この論法では、「Xである」を示す場合に、まず「Xでない」という架空の設定を考える。そして「Xでない」という架空の設定のもと論理を進め、何らかの矛盾を導く。矛盾が起こったのだからそれは「絶対にありえない事」だという事になるので、最初の「Xでない」がおかしかったのだという事になり、結論として「Xである」を得るのである。

(数学的な意味での)矛盾の興味深い性質として、矛盾を含む体系においてはどんな命題を導くこともできる、というものがある(爆発律 principle of explosion, ECQ)。背理法は、命題¬φを仮定して矛盾が導けたら命題φを推論できる

と定式化できる。考えている体系において何らかの矛盾が成立していたとすると、形式的な仮定「¬B」をおいても(これは全く使わずに)矛盾を導けるということになる。従ってBの二重否定¬¬Bが推論できることになり、二重否定は無視できる(排中律)ことから結局Bが推論できたことになる。ただし、古典論理ではない直観論理などでは排中律背理法は成立しない。
弁証法における矛盾

ドイツ観念論の哲学者ヘーゲルは、弁証法を定式化し、「一つの事物・命題には必ずそれ自身の否定が含まれる」ということを指摘した[9]。矛盾の重要性を最初に指摘したのはヘーゲルである[10]。ヘーゲルは、ある物が運動するのは、それが今ここにあり、他の瞬間にはあそこにあるためばかりでなく、同一の瞬間にここにあるともここになく、同じ場所に存在するとともに、存在しないためでもある。運動は存在する矛盾そのものである、ということになるのだ[注 2]

とした。マルクス学派はこの考えを受け継ぎ、レーニンは「弁証法とは物の本質そのものにおける矛盾の研究である」と述べた[12]

エンゲルスは、何かある事物が対立を背負っているとすれば、それは自己自身と矛盾しているわけで、そのものの思想的表現も同様である。たとえばある事物が、あくまでも同一でありながら、しかも同時に不断に変化していることと、それ自身に「持続」と「変化」との対立をもっていることは一つの矛盾である。

として、「生物は一つの矛盾だ」と主張した[12]
矛盾と人間の認識.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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