睡眠相後退症候群
[Wikipedia|▼Menu]

睡眠相後退症候群
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
神経学
ICD-10G47.2
ICD-9-CM327.31
eMedicineneuro/655
MeSHD021081
テンプレートを表示

睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん、Delayed sleep-phase syndrome; DSPS)、または睡眠相後退障害 (delayed sleep-phase disorder) は、慢性的な睡眠のタイミングに関する障害(概日リズム睡眠障害)のひとつである。DSPSの患者は、とても遅い時間に眠りにつく傾向があり、朝起きることが困難である。

治療法については、「睡眠相後退症候群#治療」を参照。
概要

DSPS患者は、何時に床に就いても早朝まで眠ることができないが、毎日ほぼ同じ時間に眠ることができると報告されている。DSPSに加えて、睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害を持っていない限り、患者はよく眠ることができ、通常と同様の睡眠時間を必要とする。それゆえ、患者は数時間の睡眠しか取れないまま、学校や仕事に出かけるため起床しなければならないことに困難を感じる。しかし、彼らは自由な時間(例えば、午前4時から正午まで)に眠ることが許されるのであれば、よく眠り、自然に目覚め、再び彼らにとっての“夜”が来るまで眠りたいと感じない。

この症候群は通常、幼少期または思春期に発症し、思春期または成人期の始めになくなる場合もある[1]時計遺伝子に起因する先天的な場合と、夜型の生活リズムに起因する後天的な場合があり、幼少期に発症している場合は大抵が先天性、成人してから発症する場合が後天性のものといえる。なお、先天性であった場合は対症療法による治療しか行えないが、後天性であれば治療も可能となる。

DSPSはもともと、Jet Lagと同じ範疇の疾患として研究されていた。このため、「Jet Lag類縁疾患」などと呼称されていた。1981年、モンテフィオーレ医療センターのElliot D. Weitzman博士らはこのカテゴリーの疾患をDelayed sleep-phase syndrome; DSPSと呼ぶことを提唱した[2]。慢性的な不眠症の7-10%は、DSPSが原因だと主張する論文もある[3]。DSPSは、原発性不眠症または精神障害と誤解される。
定義

睡眠障害国際分類 (International Classification of Sleep Disorders, ICSD)[4]によると、DSPSの主要な特徴は、


入眠と覚醒時刻が、望ましい時間帯より遅く、難治性である。

入眠時刻が毎日ほぼ同じである。

一度眠り始めると、全く又はほぼ問題なく睡眠を維持できる。

朝の望ましい時間帯に起床することが極端に困難である。

強制的に社会的慣習となっている睡眠・覚醒時刻に合わせて、睡眠相を早い時間帯に前進させることが比較的困難であるか全くできない。

である。DSPSには、他の睡眠障害とは異なって次のような特徴がある。

DSPSの患者は、朝もしくは午後ならば、普通か普通以上によく眠る能力がある。これとは対照的に、慢性不眠症の患者は、夜より朝のほうが眠りやすいとは感じない。

DSPS患者は、だいたい毎晩同じ時刻に眠り、彼らが普段眠る時間帯にベッドに入ればすぐに眠ることができる。幼児のDSPS患者は眠くなる前にベッドに入ることを嫌がるが、普段眠る時間になれば、嫌がらずに眠る。

DSPS患者は、彼らの睡眠スケジュールに従って生活できる時(例えば、週末や休暇中)は、規則的によく眠ることができる。

DSPSは慢性的である。症状が少なくとも1か月続かないとDSPSであると診断されない。

DSPSに罹患して9時5時生活を送ることは、毎日6時間の時差ぼけを体験しているようなものである。患者は平日(月曜?金曜)には数時間しか眠ることができないので、週末には午後まで眠って睡眠時間を補うことがよくある。週末によく眠ったり、普段昼寝をしたりすることで、DSPS患者は昼間の眠気から解放されるが、遅い睡眠相はそのまま続く。

DSPS患者は、極端な夜型の傾向がある。彼らは、夜が最も頭が冴えていて、物事がうまくでき、創造力にも溢れていると感じる。彼らは単純に早く眠ることができないのである。仕事や学校に出かけるまで、彼らはベッドの中で何時間も寝返りをして、時には全く眠れずに過ごさなければならない。

DSPS患者が医療の手助けを求める頃には、患者は何度も睡眠スケジュールを変える試みを行っている。失敗した作戦の中には、リラックス方法、早くベッドに入ること、催眠術アルコールの飲用、睡眠薬、つまらない読書、民間療法などが含まれるかもしれない。夜に鎮静剤を使ったことのあるDSPS患者は、薬によって疲労感を覚えたり、またはリラックスしたりするが、睡眠を誘うことには失敗したと報告している。彼らはよく家族に朝起こしてくれるように頼んだり、いくつもの目覚し時計を使ったりしている。この症候群は、思春期に最もよく起こるので、子供が学校に間に合うように起こすことに困難を感じた患者の両親が医療の助けを探し始めることが多い。
罹患率

厳密なICSDの診断基準を用いると、無作為に選ばれた10,000人のノルウェーの成人では、0.17%がDSPSに罹患していると見積もられている[5]。同様の研究で1,525人の日本の成人では罹患率が0.13%であったとされている[6]。他の研究では、思春期におけるDSPSの罹患率は7%にも上る主張する論文も一報存在する。
生理学詳細は「概日リズム睡眠障害」を参照

DSPSは体の時間調節機能―生体時計の障害である。体が日々、睡眠覚醒の時計を調節する能力が弱くなっていることが原因であると考えられている。DSPS患者は、通常より長い概日リズムの周期を持っているか、または光によって体内時計が調節される反応が弱くなっているのかもしれない。

通常の概日リズムを持つ人は、前日に十分睡眠をとれていない場合は、夜になればすぐに眠ることができる。早く眠れば、自動的に体内時計が前進することになる。これとは対照的に、DSPS患者は、たとえ断眠後でも、彼らが普段眠る時刻になるまでは眠ることができない。普通の人と違って、DSPS患者の概日リズムは、断眠によって調節されないと研究によって示された[7]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:40 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef