眼の壁
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台風の目」とは異なります。

眼の壁
作者松本清張
日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『週刊読売1957年4月17日 - 1957年12月29日
出版元読売新聞社
挿絵御正伸
刊本情報
刊行『眼の壁』
出版元光文社
出版年月日1958年2月15日
装幀伊藤明
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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『眼の壁』(めのかべ)は、松本清張の長編推理小説。『週刊読売』に連載され(1957年4月14日号 - 1957年12月29日号、連載時の挿絵は御正伸)、1958年2月、光文社から単行本として刊行された。後に電子書籍版も発売されている。

若い会計課次長が、パクリ屋手形詐欺に端を発する、連続殺人事件の謎を追跡するミステリー長編。『点と線』に次いで連載開始された推理長編であり、知能犯的経済犯罪を発端に、様々な社会的素材・人間像が盛り込まれ、連載中から大きな反響を呼んだ作品である[1]

1958年松竹で映画化。2022年WOWOWで連続ドラマ化[2]
あらすじ

電機メーカーの会計課長・関野徳一郎は、R相互銀行本店にて、パクリ屋グループによる詐欺に引っ掛かり、総額3000万円の手形を詐取された[3]。会社は大損害を蒙り、責任を感じた関野は、湯河原の山中に分け入り、自殺する。

遺書により過程を知った関野の部下・萩崎竜雄は、社内の極秘として事件を警察に頼めないなら、自ら真相を追跡しようと決心した。新聞記者・田村満吉と共に、事件の背景を追う竜雄だったが、高利貸の女秘書・上崎絵津子や右翼の領袖・舟坂英明など、謎の人物が交錯し、やがて殺人事件に発展する。
主な登場人物事件現場となる摺古木山周辺

原作における設定を記述。
萩崎竜雄
電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。本作の探偵役。
田村満吉
新聞社社会部の記者。竜雄の学生時代の友人。
関野徳一郎
昭和電業の会計課長。竜雄の上司。
瀬沼俊三郎
昭和電業の顧問弁護士
岩尾輝輔
長野県選出の代議士
山杉喜太郎
麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
上崎絵津子
山杉商事の女秘書。
舟坂英明
戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。荻窪在住。
梅井淳子
西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。
エピソード

本作執筆のきっかけは、著者が、
昭和電工事件など戦後の贈収賄犯罪捜査に関与していた検察庁検事河井信太郎から、「いままでの探偵小説を読んでいると、たいてい捜査一課の仕事ばかり書いている。しかし二課の仕事もあるのだから、そっちの方のなにかを書いたらどうか」と言われたことに始まっている[4][5]

小説中の「清華園」のモデルは昭和病院(現:東濃厚生病院)の分院と推定され、当時は木造建築であった[6]

本作は同時期の『点と線』と異なり、連載中から非常に評判が良く、清張自身楽しみながら執筆した作品であった[7]

本作は推理小説の中で経済犯罪を描いた先駆的作品とされるが[8]、手形詐欺のモチーフは、のちに高木彬光の『白昼の死角』でも展開され、こちらも大きな話題作となった。

作中の死体処理のトリックに関しては、1956年2月に、東京・足立区日本皮革(現:ニッピ)の工場で発生した殺人事件がヒントになっている[9]。推理小説評論家の権田萬治の説明によれば、同事件は、東京大学理学部出身の青年技師・K(28歳)が、先輩技師のS(35歳)を殺し、死体を試験工場内の原皮樽に入れてから、翌日の深夜に、重クロム酸ソーダと水に加えて濃硫酸を流し込んだ。物凄い白煙が立ち上ったが、守衛には薬剤の混合ミスと言ってごまかし、人体の90パーセントを溶解、さらに塩酸と硫酸の混合液で、残りの人骨を完全に溶解する計画だったという[8]

中国文学研究者の藤井省三は、ノーベル文学賞受賞作家の莫言の小説『酒国 特捜検事丁鈎児の冒険』に本作の影響が見られると分析している[10]

部落解放同盟による批判

本作の再版以降では、犯人たちの故郷が「長野県南佐久郡春野村字横尾」とされており、村名以下は架空の地名ながら「村の端に小さい皮革工場がある」[11]、「横尾というところは、付近でも貧農で知られた村なんだ。音次は、その貧しさに耐えかねて、村を飛び出したのだ。なにしろ地方では貧困な農家にたいして、因襲的に蔑視の念が強いからね」[12]などの記述から被差別部落であることが暗示されており、部落解放同盟岡山県連合会から「部落差別を基礎にした発想法に問題があり、差別を助長する作品として見逃すことができない」と非難を受けた。このとき清張は部落解放同盟との会談に応じ、作品のなかの地名を変更したり再出版の断念を表明したりした[13]。また、部落問題を勉強し始め、読売新聞に論文を発表し、部落問題の講演会を開いた[14]。清張によると、本作にはヒント程度だがモデルとなった事件があり、それがやはり部落問題に関係していたという[15]。また、部落解放同盟から最も問題視されたのは初出時における犯人たちの人名と故郷の地名であり、「こちらは偶然なんですが、これは調べて書いたのだということになって、まず第一ばんに心証を悪くしたんですね」ともいう[16]。清張はまた、本作をめぐり部落解放同盟幹部に50万円支払ったとも発言している[17]
関連項目

瑞浪市摺古木山川上村 (長野県)大町市・・・いずれも本作の舞台。また、作中に登場する「日ペリ」は現在の全日本空輸、「三留野駅」は現在の南木曽駅、「土岐津駅」は現在の土岐市駅である。

硫酸クロム(III)

映画

眼の壁
監督
大庭秀雄
脚本高岩肇
製作小松秀雄
出演者佐田啓二
鳳八千代
音楽池田正義
撮影厚田雄春
編集浜村義康
配給松竹
公開 1958年10月15日
上映時間95分
製作国 日本
言語日本語
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