真空チューブ列車
[Wikipedia|▼Menu]

真空チューブ列車(しんくうチューブれっしゃ、: Vactrain)は、内面が滑らかなチューブを空中、地下または海底に設置し、中を真空にして摩擦力空気抵抗をゼロに近づけることにより、地球の重力や最小限のエネルギー付加によって物資を輸送するシステム。真空チューブ鉄道、真空チューブ輸送、真空列車ともいう。目次

1 概要

1.1 地球の重力を用いる方法の原理


2 各国の歴史

3 日本における歴史

3.1 ロケット列車の実験

3.2 減圧トンネル

3.3 今後の見通し

3.4 その他


4 架空の世界

5 脚注

6 参考文献

6.1 特許


7 関連項目

8 外部リンク

概要

物体は、摩擦力や空気抵抗がゼロになれば、エネルギー保存の法則慣性の法則により、起動時に付加されたエネルギーのみで永遠に動き続ける。本輸送システムの発想はここから生まれた。

起動時のエネルギー付加の方法としては、リニアモーター、圧縮空気、ロケットエンジンなどの起動力を用いるほか、地球の重力を利用する方法も考えられている[1]
地球の重力を用いる方法の原理「位置エネルギー」および「ポテンシャル」も参照

地球上の物体は、すべて地球の重力により位置エネルギーを持っており、地球中心より離れるほど(つまり高い場所にあるほど)大きな位置エネルギーを持っている。高い場所と低い場所の位置エネルギーの差は、その間を移動する運動エネルギーに等しい。すなわち、(高い場所の位置エネルギー)=(低い場所の位置エネルギー)+(高い場所と低い場所を移動する運動エネルギー)

となる。よって、低い場所から高い場所へ移動するには、物体にその差分の運動エネルギーを付加しなければならないことになる。

一方、高い場所から低い場所へ移動するには、地球の重力により落下するという現象により、自然に運動エネルギーが付加される。摩擦力や空気抵抗をなくしてこの運動エネルギーを過不足なく利用できれば、その物体はまた同じ高さの場所へ戻れるはずである。

この原理を利用したのが地球の重力を利用する方法であり、チューブをV字型にすれば、加速時は列車の重み(地球の重力)で坂を下り、これにより得た運動エネルギーを使用して坂を上って同じ高さへ戻ることを繰り返し、人工的なエネルギー付加が不要となる。

ただし、現実にはチューブと列車の接触が避けられず摩擦力をゼロにするのは不可能なため、坂を上っても列車が同じ高さに戻ることはできない。よって、上り坂をリニアモーター等で引き上げる方法も考えられた[1]
各国の歴史

イギリスではイザムバード・キングダム・ブルネルの指導の下に1847年から真空チューブ列車の試験を行い、1848年の2月から9月まで運行されたが、管のシールやその他の問題で通常の蒸気機関の3倍近い費用がかかったため成功しなかった[2]
19世紀後半以前より、アメリカ大陸ブリテン島を結ぶ大西洋のトンネル建設の提案が存在した。このアイディアはドイツの小説家、ベルナルド・ケラーマン (Bernhard Kellermann) の書いた『Der Tunnel(邦題:トンネル)』で提案された。この作品は1933年にドイツで映画化され、さらに1935年、イギリスで『Transatlantic Tunnel』という題名でリメイクされた。

現在の真空列車の概念は空中に設置されたチューブ内を磁気浮上式リニアモーターが走るというもので、アメリカの技術者ロバート・ゴダードが大学生時代に詳細な試案を1910年代に創始したものである。ゴダードは1945年に死去するが、死後発見された彼の案によればこの列車はボストンからニューヨークまで時速1,600kmで走り12分で到着するというものであった[3][4]

真空列車については、その主要な提唱者であるランド研究所員のロバート・F・ソルター (Robert F. Salter) が1970年代に発表したものがあり、彼は1972年に詳細な記事を書いて1978年に再発表した。彼は詳細として、当時のアメリカ政府が利用可能な技術を利用してチューブ内を走る列車が構築できるはずであると楽観的に話した。しかしその時点ではリニアモーターカーはまだ開発されておらず、ソルターは鉄の車輪で建設をすることを提案していた[5]

深い地下内に設置されたチューブ内は扉が開放され、真空状態であるチューブ内を空気が後ろから列車を押すことにより列車を加速させ、巡航速度に達すると今度は重力を用いてさらに加速させることになっていた。その後、巡航速度まで達した列車は前で希薄になっている空気を入れることによりその速度を抑えて減速することになっていた。また駅には空気ポンプが設置されて列車とチューブの隙間や摩擦などで失われる空気圧を補充することになっており、列車自体に動力が必要ではなかった。その後修正されたこの重力と大気を用いた列車案は、エネルギーの消費は無いが亜音速が限界であった。そのため大陸横断するよりも数十から数百マイルを走るのに適しており、最初のルートも提案された。

列車には連結器が存在せず各々の車両が密接するようになっており、路線は鋼を用いる関係上簡単に曲線を作るわけにいかなかったため直線で作ることを求められていた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:29 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef