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相転移(そうてんい、英語: phase transition)とは、ある系の相(phase)が別の相へ変わることを指す。しばしば相変態(そうへんたい、英語: phase transformation)とも呼ばれる。熱力学または統計力学において、相はある特徴を持った系の安定な状態の集合として定義される。一般には物質の状態(固体、液体、気体)の相互変化として理解されるが、同相の物質中の物性変化(結晶構造や密度、磁性など)や基底状態の変化に対しても用いられる。相転移に現れる現象も単に「相転移」と呼ぶことがある。「物質の状態」も参照 何を持って「相」と定義するかは分野によって異なる。例えば平衡熱力学の範疇では、準安定状態を熱力学的状態として定義できないため、準安定状態の組を相として定義することもできない。準安定状態を扱うためには、準安定状態においても平衡状態と同様に温度や圧力などが定義でき、平衡熱力学の枠組みで扱えることを仮定するなどの工夫が必要になる。 系の相が多種多様に考えられるのと同様に、相転移の機構もまた、対象とする系とその相によって様々だが、相転移が起こる理由はその系にとってより安定な系の状態が現れたためである。その状態が安定かどうかは、例えば熱力学では温度や圧力、磁場、電場などの組み合わせによって決定されるが、微視的には原子や分子、あるいは核子や電子間の相互作用や、それらと場との相互作用などが寄与している。 相転移の顕著な例として、氷が水になったり水が水蒸気になったりする、固相や液相、気相の間の転移の他に、異なる多形や同素体への転移が挙げられる。炭酸カルシウムがヴァテライトからカルサイトやアラゴナイトへと変化したり、炭素がダイヤモンドからグラファイトへ変化したりするのがその例である。 他にも様々な相転移があり、その代表的な例として以下のものがある。
概要
構造相転移(気相、液相、固相間の転移など)
磁気相転移(常磁性、強磁性、反強磁性などの間での転移)
金属-絶縁体転移
常伝導-超伝導転移(超伝導)
常誘電体-強誘電体転移
真空の相転移(宇宙論)
相転移を検出する技術としては、示差熱分析 (DTA[注 1]) などがあり、例えば合金の構造相転移などに対して用いられる。 相転移を起こす温度や圧力などの状態量の値の組を転移点(変態点)[注 2]と呼び、特に転移点上の温度を転移温度という。特定の物質において転移点は熱力学的状態により決定される値であり、たとえば特定の成分系
転移点
転移点の例を次に示す。 相転移は大別すると準安定状態を持つ第一種相転移[注 4]と、それを持たない第二種相転移 [注 5]に分類される。 これとは別にポール・エーレンフェストの分類法では自由エネルギーの温度あるいは圧力の n 階微分が不連続点を有する場合を n 次相転移[注 6]と呼ぶ。例えば、1 階微分が不連続点を有する場合を一次相転移[注 7]、2 階微分が不連続点を有する場合を二次相転移[注 8]と呼ぶ。[注 9]転移点が一次相転移か二次相転移かの別により「一次相転移点」、「二次相転移点」と呼び分ける場合もある。 一次相転移と第一種相転移とは一致するが、エーレンフェストの二次相転移の定義に該当しない高次相転移も第二種相転移には含まれる。なお、実験的には誤差の存在により自由エネルギーの高次の微分が連続なのか不連続なのかを見分けることが難しい場合が多いため、二次以上の高次の相転移を区別せずに「高次相転移」などと呼ぶこともある。 相転移は自発的に生じる場合もあるが、一次相転移のように準安定状態を持ちうる場合は、過熱状態や過冷却状態のように転移点を越えても相転移を生じない場合がある。このような準安定状態では何らかの外的要因で核となる新しい相が発生し、それが引き金となって系全体に相転移が波及する。 物質の三態の間の状態変化はいずれも代表的な第一種相転移であり、次のように呼び分けられる。 転移前の相転移後の相現象の呼称転移点の呼称転移熱の呼称
沸点、融点、昇華点、(凝固点)
キューリー温度、ネール温度
ガラス転移点[注 3]
マルテンサイト変態点
相転移の種類
第一種相転移
固相
(固体)液相
(液体).mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}融解(ゆうかい)融点(ゆうてん)融解熱(ゆうかいねつ)
気相
(気体)昇華(しょうか)
気化(きか)昇華点(しょうかてん)昇華熱(しょうかねつ)
液相
(液体)固相
(固体)凝固(ぎょうこ)
固化(こか)凝固点(ぎょうこてん)凝固熱(ぎょうこねつ)
気相
(気体)蒸発(じょうはつ)[注 10]
気化(きか)沸点(ふってん)蒸発熱(じょうはつねつ)
気化熱(きかねつ)とも呼ぶ。
気相
(気体)液相
(液体)凝縮(ぎょうしゅく)[注 11]
液化(えきか)(特になし)凝縮熱(ぎょうしゅくねつ)