相対論的力学(そうたいろんてきりきがく、relativistic mechanics)とは、特殊相対性理論、および一般相対性理論に基づく古典力学である。
この記事では計量テンソルの符号の規約として (−, +, ... ,+) を採用する。 ニュートン力学において粒子の運動は、時刻 t を媒介変数とする粒子の位置の関数 x = r(t) として表される。つまり、粒子の運動を表すことは時々刻々の位置を追うことである。相対論においては時間が空間とともに4元ベクトルとして振る舞うので、運動のパラメータとして時間を用いると、ローレンツ変換の下での共変性が明白ではなくなる。すなわち、相対論において時間は運動を記述する自然なパラメータではなくなる。そもそも相対論には自然なパラメータが存在せず、パラメータの付替えの下で相対論は不変である[1][2]。なお、明白なローレンツ共変性を犠牲にすれば、時間を運動のパラメータとして選ぶこともできる。 適当な運動のパラメータを λ として、粒子の位置を x = X ( λ ) {\displaystyle x=X(\lambda )} で表す。 パラメータの付替え λ → λ' = f(λ) が適当である条件として、旧いパラメータ λ の増加に伴って、新たなパラメータ λ' も単調に増加する必要があり d λ ′ d λ = f ˙ ( λ ) ≥ 0 {\displaystyle {\frac {d\lambda '}{d\lambda }}={\dot {f}}(\lambda )\geq 0} である。特に、光速 c を用い、時間 t = X0/c を運動のパラメータとして選ぶことができるので d t d λ = 1 c X ˙ 0 ( λ ) ≥ 0 {\displaystyle {\frac {dt}{d\lambda }}={\frac {1}{c}}{\dot {X}}^{0}(\lambda )\geq 0} である。 ニュートン力学においては、位置の時間導関数として速度が定義された。相対論においては自然なパラメータが存在しないため、導関数 X ˙ {\displaystyle {\dot {X}}} は物理的意味を持たない。すなわちパラメータの付替えに対して、導関数は連鎖律により X ˙ ( λ ) = d X d λ → d X d λ ′ = d X d λ / d λ ′ d λ {\displaystyle {\dot {X}}(\lambda )={\frac {dX}{d\lambda }}\to {\frac {dX}{d\lambda '}}={\frac {dX}{d\lambda }}{\bigg /}{\frac {d\lambda '}{d\lambda }}} と変化するので、dλ'/dλ の分だけ変化する。この変化を相殺するように、4元速度 U μ ( λ ) = c X ˙ μ ( λ ) − X ˙ ν X ˙ ν {\displaystyle U^{\mu }(\lambda )={\frac {c{\dot {X}}^{\mu }(\lambda )}{\sqrt {-{\dot {X}}^{\nu }{\dot {X}}_{\nu }}}}} で定義される。定義から明らかに UμUμ = −c2 である[3]。 運動のパラメータとして時間 t を用いれば U 0 ( t ) = c 1 − v 2 / c 2 , {\displaystyle U^{0}(t)={\frac {c}{\sqrt {1-v^{2}/c^{2}}}},} U ( t ) = v 1 − v 2 / c 2 {\displaystyle {\boldsymbol {U}}(t)={\frac {\boldsymbol {v}}{\sqrt {1-v^{2}/c^{2}}}}} U μ ( t ) = ( γ c , γ v ) {\displaystyle U^{\mu }(t)=(\gamma c,\gamma {\boldsymbol {v}})} である。 固有時間は d τ d λ = 1 c − X ˙ μ X ˙ μ {\displaystyle {\frac {d\tau }{d\lambda }}={\frac {1}{c}}{\sqrt {-{\dot {X}}^{\mu }{\dot {X}}_{\mu }}}}
運動学
4元速度と固有時間