直流送電
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この項目では、電力流通における送電方式について説明しています。電気製品における電源供給方式については「直流給電」をご覧ください。

直流送電(ちょくりゅうそうでん)とは、直流送電する方法・方式のことである。

エジソン(エジソン電灯会社)のPearl Street Stationが直流発電機発電し、直流で送電するということを、1882年1月にロンドン、同年9月にニューヨークで行い、一時期は送電と言えば直流が標準であった。しかし、ニコラ・テスラジョージ・ウェスティングハウスらが交流送電の利点に気付いてそれを推すようになり、激しい電流戦争の末、結局直流送電はすたれ、交流送電が一般化した。

現代では、直流発電を直接送電するものではなく、なんらかの理由で直流送電が必要であったり有利であったりするために、交流から直流に変換して送電しているものも多い。長所が長距離大容量な電力ケーブルで顕著に現れる(ここで交流だと損失だらけになる)ため[1]北本連系線などでは直流を採用している。
長所

実効電圧の交流よりも、最高電圧が小さく、絶縁が容易である。逆に言えば、同じ耐電圧の設備でもより大容量の電力を送れる。

表皮効果を生じないため導体利用率がよく、電力あたりの電流が小さいため電圧降下・電力損失が小さい。

2条の導体で送電できる(大地を帰路とした場合は1条でも可能であるが、電蝕通信への影響が大きいのでその対策が必要)。

帰路の線路を設けた場合、交流に比較して電波障害が小さい。

正負2回線にした場合、帰路を共用できるため、3条で2条に比較して2倍の電力を送れる(交流は1.73倍)。

交流の電力系統を周波数的・電圧的に分離できる。周波数動揺などの影響を遮断できて潮流調整が容易。

電線路リアクタンスによる電圧降下やフェランチ効果(電圧上昇)を考慮する必要がなく、また調相設備が不要である[2]

静電容量による充電電流が存在しないため、特にケーブル送電の場合、容量性リアクタンスによる送電容量の制限がない[2]

短所

交流送電に比べて変圧設備が高価であり、過負荷容量が小さい。短距離の送電では、同距離の交流送電に比べて、変圧設備でのロスが大きくなる。この変圧の難しさは、大容量送電の効率が決定的に違ってしまうという、かつて直流送電が交流送電に敗れた最大の要因であり、現在でも高圧の直流と直流とで変圧することはまず無い。

大容量の直流遮断は難しい。交流は電流零点を有するため、この点で電流を遮断する事が可能である。電力系統で使われる
遮断器は容量が大きいため、遮断する段階での細工は不要である。一方直流は零点がないため、大容量の遮断器では零点を作る細工が必要である。通常は外部に蓄えたエネルギーを逆電流として挿入するか、直流に自励振動の電流を重畳させて零点を作る工夫が必要である。この方法は一部低電圧、高電圧大電流用に開発がなされ、実用化の検証が終了している。ただし交直変換器で交流→直流や交流→直流→交流という回路になっている場合は、変換器の停止や交流側に遮断器を設けることで、この点は大幅に緩和もしくは無視できる。

交直変換の際の高調波に対する対策が必要である。3相の全波整流(6アーム構成)では6n±1の高調波が交流系統側に、6nの高調波が直流系統側に流出する(nは自然数)。交流系統と連系する変圧器(変換用変圧器)2台を位相を30度ずらして接続すると交流系統への流出高調波は12n±1に、直流系統への流出高調波12nになる。これらの高調波が系統に与える影響を抑えるために変換所には高調波フィルタを設置する必要がある。影響は交流、直流の系統構成によって異なるため、事前の解析が重要である。

交流送電に比べて(直流 - 交流変換の設備が必要な分だけ)初期投資が高価である。

構成要素

整流器: 高電圧であるので整流素子として光サイリスタが使用される。

電線路

制御装置: 大容量であるので冗長性を持った構成とする。

用途
交流送電では充電電流が大きくなる海底ケーブル送電。

周波数の連系。

交流送電ループを作らないための非同期連系用。

国内の導入例

用途1に相当

北本連系 : 本州(上北変換所) - 北海道(函館変換所)間を結ぶ、日本初の本格的な直流送電。1979年運転開始。送電距離167 km(うちケーブル部分43 km)、運転電圧±250 kV、容量60万kW電源開発送変電ネットワーク所有。

紀伊水道直流連系 : 本州(紀北変換所) - 四国(阿南変換所)間を結ぶ、世界最大級の設計電圧である直流送電。2000年運転開始。送電距離100 km(うちケーブル部分49 km)、運転電圧±250 kV、容量140万 kW(設計電圧±500 kV、設計容量280万 kW)。電源開発送変電ネットワーク関西電力送配電四国電力送配電共同所有。


用途2に相当

佐久間周波数変換所

新信濃変電所

東清水変電所

飛騨信濃周波数変換設備


用途3に相当

南福光連系所 : 中部電力パワーグリッド北陸電力送配電を結ぶ、「0 kmの直流送電」。交流で連系すると、関西電力送配電の連系線も合わせてループ状になるため、安定度の点から系統を分離して連系することとした。富山県南砺市1999年運転開始、容量30万kW。中部電力パワーグリッド北陸電力送配電共同所有。


日本国外の事例およびHVDCの詳細

直流送電方式に関しては、米国や欧州では高圧直流送電 (high-voltage, direct current - 以下HVDC) という名称の技術として認識されている(各国語版参照)。以降では国際的事例とともに、HVDCに関して上記と重複する部分があるが詳細を記述する。
概説長距離HVDC配電線が、カナダのネルソン川からの水力発電電力をウィニペグの地方配電網で使用するため、交流へ変換するこの変電所へ運んでいる。

長距離送電においては、HVDCシステムはより安価であり、電気的な損失が低い。短距離送電においては、直流連系の他の利点は有用である一方で、交流システムとくらべ直流変換装置のコストが高くつくことが確実となるだろう。

HVDC送電の近代的な形式なものは、アセア社で1930年代のスウェーデンにおいて大規模に開発された技術を使用している。初期の商業的導入は1951年のモスクワカシーラ間、および1954年のゴトランドとスウェーデン本土間の10-20 MWシステムを含む[3]

世界における最長距離のHVDC連系は現在、コンゴ民主共和国における、インガ・ダムからシャバ銅山を接続するインガ-シャバ間1,700 km / 600 MW連系である。西部ヨーロッパにおけるHVDC相互接続 - 赤色は既存、緑色は建設中、青色は計画中の連系である。これらの多くが水力や風力のような再生可能エネルギーを送電している。名称についてはannotated version.を参照。
高圧送電

高電圧による送電は、電線の電気抵抗によるエネルギー損失を低減するために用いられる。一定量の電力輸送では、より高い電圧とすることにより送電電力損が抑制される。回路中の電力は電流に比例するが、電線の発熱のような電力損は電流の2乗に比例する。しかし、電力は電圧にも比例するので、特定の電力レベルにおいては、高電圧は低電流とトレードオフの関係でありうる。すなわち、電圧を上げれば上げるほど電力損は低減する。電力損は電気抵抗を少なくすることでも低減可能であり、通常導体直径を太くすることでそれは達成される。しかし太い導体は重く、より高価となってしまう。

高電圧は電灯や動力には簡単に利用できないので、送電レベルの電圧は需要家装置に適合するよう変換されなければならない。変圧器は交流でしか機能しないが、電圧変換を行うのには適している。直流方式のトーマス・エジソンと、交流方式のニコラ・テスラおよびジョージ・ウェスティングハウスとの競争は電流戦争として知られ、交流方式は明らかに勝利した。


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