皮革
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製品に加工する直前の皮革と、代表的な工具

皮革(ひかく)は、動物皮膚を剥いだ「皮(英語版)」と、皮からを除いて鞣して(英語版)得られる「革」の総称である[1][2][3]毛皮は毛をつけたままなめしたもので、広義には皮革に含まれる[3]

人工的に作られた人造皮革(人工皮革と合成皮革)と区別するため、動物の皮膚をなめしたものを天然皮革(てんねんひかく)や本革(ほんがわ)ということもある。皮革の中でも元々生えていた体毛まで利用するものは毛皮 (Fur) という。
皮と革

皮とは生物の表面を覆う組織であり、人類は特に動物の皮を利用してきた[4]。動物の皮膚をそのまま剥ぎ、製品として使用したものを皮という。皮は乾燥させると硬くなるが、乾燥中に繰り返し揉んだりほぐしたりして加工すると柔らかさを保つ性質がある[4]

しかし、皮には高温多湿の環境では腐るという大きな欠点があるため、これを腐らないよう鞣して(なめして)加工したものが革である[4]。「革」は動物の皮を両手でピンと張ったところを表した文字である[4]。なめして革に加工できる皮を原皮という[4]

英語では皮はスキン (skin)、革はレザー (leather) にあたる[4]。原皮の分類では大きさによりskinとhideに分けられる[4]牛皮の場合、中牛程度までの大きさをskin、それより大きいものをhideという[5]
歴史エジプトの埋葬地サッカラにある侍従長トーの墓にあった紀元前3500年ごろの皮の加工を表した壁画

人類の祖先は動物の皮に着目し、これを利用するようになったが、最初はネズミやウサギなどの小動物が利用されたと考えられている[4]。最初の皮革の利用は毛皮であった[4]。皮は有機物であるため、埋蔵状態によっては崩壊してしまい古代の遺物が残される例は少ない。考古学としては、これらの少ない遺物、壁画、文献などから当時の皮革について研究が行われる[6]

例として、約5300年前のミイラであるアイスマンは革のコート、革のレギンス、毛皮の帽子、干し草を詰めた靴がある。これらは用途によって意識的に選ばれていたパッチワークで、コートは家畜化されたヒツジ革4頭分、家畜化されたヤギの革などで作られ、腰布はヒツジ革、レギンスはヤギ革、靴ひもは牛革、帽子はクマの毛皮であった[7]。また、これらのなめしの加工としては、動物性脂肪に漬けたあとに意図的に土に埋める方法が採用されており、撥水性に優れた性能を持っていたと試料を分析したグループは述べている[8]

皮革は硬質の樹脂であるプラスチックが発明されるまで人類が入手できる最も強靭な素材だった[4]

日本では日中戦争の激化に伴い、1938年(昭和13年)7月1日から牛革の流通が制限されることとなった。靴店などは在庫がある限り販売を続けたが、次第にウマ、ヒツジ、ブタ、クジラ、サメなどの代用品[9]第二次世界大戦後の経済的な混乱期まで使用することとなった。
原料皮と種類

なめして革に加工できる皮を原皮というが、原皮になりうるものは脊椎動物の皮に限られている[5]。また、実用的な皮革に加工するにはコラーゲン線維が十分に絡んでいて一定の厚みや硬さが必要である(皮下に十分に脂肪を蓄えて食用に適するよう品種改良されてきたニワトリなどは不向きとされている)[5]。また、革製品の加工に安定供給できるような素材である必要がある[5]

皮革の材料としては以下の動物が挙げられる。製品種類とともに記述する。
哺乳類
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革は一般的に牛の革を使用する。

一般的な革であり、革靴に使用される革としては最大数量。一般に成の背中から脇までの皮を使用する。カウブル等の分類があるが、基本的に全て肉牛の皮である。表面にエンボス加工を施すことにより、オーストリッチダチョウ)・ワニヘビなどの模造をすることも可能である。外見上の特徴は特に無い。

ハラコ - 胎児から生後間もない仔牛の革。出産前に死んだ雌牛の腹にいた仔牛(腹子)から採れることが多い。ほとんど出回らない。現在は10 kgまでの子牛を含めることもある。

ベビーカーフ - タンニンなめしで加工された、胎児 - 生後3か月までの仔牛の革。

カーフ - 生後約6か月までの仔牛からできる革。仔牛なので傷が少なく、しなやかで、高級品である。

キップ - 生後6か月 - 2年程度までの牛からできる革。ヨーロッパ原皮にはキップという言葉はない。小型のコブ牛をキップに含めることも多い。

ステアハイド - 生後2年以上経過した去勢された雄牛からできる、最も一般的な革。

カウハイド - 出産経験があり、生後2年程度経過している雌牛からできる革。一般的にステアハイドより薄く、柔らかい。

ブル - 去勢されずに育ち、生後3年以上経過した雄牛からできる革。分厚く、強度がある。

内地物 - 国内で消費された牛からできる内地原皮を加工した革。一毛和牛(肉牛)、ホルスタイン乳牛、去勢牛)などがある。海外物は鉄条網や枝の傷が入ることが多々あるが、内地物ではそのトラブルが比較的少ない。

ブライドルレザー - カウハイドに数か月かけてタンニンなめしを施し、を染み込ませた革。頑丈で、表面には白い蝋の粉(ブルーム)が浮き出る。

非常にやわらかい革を作ることも半透明にもできる。表皮の下には脂肪層があるので、牛革のように厚い革にはできないのが特徴。摩耗に強いので、ランドセルや靴の内革などに使用される。三角形にそろった毛穴は一目で革と判別でき、価値が低いとして扱われてきたが、近年は海外ブランドでもデザイン性を生かした衣料製品などに使われるようになった。特に、柔らかくなめしてガーメント(衣料革)に使われたり、硬く半透明にして(生皮)ランプシェードなど工作用に使われることもある。日本から輸出される数少ない革でもある。

臀部以外の比較的柔らかい部分は靴の内革に多く使用される。

コードバン (cordovan) - 本来は、スペインコルドバ産の山羊皮である。それに似せたの臀部の分厚い皮も、コードバンと呼ばれ、高級ランドセルのかぶせ部分や名刺入れ等に使用されている。欧米地などの狩猟でよく使用される狩猟靴にしばしば採用される。オイルドレザーのものもある。

ポニー (pony) - 小型の馬の革。同じ面積の牛革と比較すると約半分の重量しかなく、柔らかく、軽い。流産や早産した仔馬の革は一般的にポニーと呼ばれる[10]。小型のポニー種の革も同様にポニーと呼ばれる。稀少な牛革の「ハラコ」の代替品としても利用される。

ホースフロント (horse front) - 首の部分に当たる革。キメ細かいが、摩擦抵抗が弱い。

羊「羊革」を参照

シープスキン - 柔らかいのが特徴。脂肪の穴が多いので、なめしても革に空隙(くうげき)が多く残り、断熱効果が高いので、防寒着にも多く使用される。

ムートン(ドイツ語版) - 羊の毛がそのまま残っている毛皮。第二次世界大戦時、フライトジャケットの極寒冷地用に使用され、防寒性が非常に高い。

山羊「山羊皮」および「モロッコ革」を参照


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