『百鬼夜行シリーズ』(ひゃっきやこうシリーズ)は、京極夏彦による日本の小説のシリーズ。講談社より刊行されている。 1950年代の戦後日本を主な舞台とした推理小説で、民俗的世界観をミステリーの中に構築している点が特徴[1]。個々の作品のタイトルには、『画図百鬼夜行』などの鳥山石燕の画集に描かれた妖怪の名が冠せられている。妖怪は作中に実体としては登場しないが、その妖怪に見立てられた奇怪な事件を「京極堂」こと中禅寺秋彦が「憑き物落とし」として解決する様を描く。作品内では民俗学、論理学など様々な視点から妖怪の成り立ちが説かれる。「憑き物落とし」が「事件の種明かし」になることで、推理小説の枠内で語られることが多いが、推理小説的な「トリック」に重きを置かない伝奇小説的な作品もある。 謎解き役である中禅寺の通称(屋号)から京極堂シリーズ(きょうごくどうシリーズ)と呼ばれることも多いが、作者自身はシリーズ名を特定はしていない。 番外編として、本編に登場した様々な人物のサイドストーリーを描く「百鬼夜行 陰/陽」シリーズ、探偵・榎木津礼二郎が大暴れして事件を破壊する「百器徒然袋」シリーズ、旅先で事件に首を突っ込んだ妖怪研究家・多々良勝五郎の的外れな推理がなぜか当たってしまう「今昔続百鬼」、記者・中禅寺敦子と女学生・呉美由紀の女性バディが事件に臨む「今昔百鬼拾遺」シリーズ、以上4シリーズの鳥山石燕の画集からタイトルを採った短編集が刊行されている。2015年より、著者公認のシェアード・ワールドシリーズ「薔薇十字叢書」も展開されている[2]。 シリーズ本編は、主に講談社ノベルスから刊行されたのち、講談社文庫から通常文庫版と分冊文庫版が刊行され、順にハードカバー化もなされている。通常文庫版は1000ページ以上に及ぶことがあり、分厚いことで有名。2019年より「電子百鬼夜行」として電子書籍化も進められている[3]。 シリーズ第1弾『姑獲鳥の夏』(1994年)は、京極夏彦のデビュー作品であり、メフィスト賞創設のきっかけとなった。 累計発行部数は1000万部を突破している[3]。メディアミックスとして『姑獲鳥の夏』は映画化、『魍魎の匣』は映画化・アニメ化、また複数作品が志水アキにより漫画化されている。 2023年発売の『?の碑』は、前作『邪魅の雫』から17年ぶりの新作本編となった[4]。 声はテレビアニメ版『魍魎の匣』での声優、演は映画『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』での役者。
概要
主な登場人物
主要人物
中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)
声 - 平田広明[5] / 演 - 堤真一本作の主人公。中野で古本屋「京極堂」を営む男。家業は住居部の裏手にある「武蔵晴明神社」の宮司にして陰陽師、副業として「憑物落とし」の「拝み屋」でもある[注 1]。妻の実家の営む菓子司の屋号を勝手に自身の店に拝借しており、その店の屋号に因んで「京極堂」と呼ばれる。「武蔵晴明神社」は平安時代の陰陽師である安倍晴明が祀られていて所縁もある。仏教、基督教、回教、儒教、道教、陰陽道、修験道といった各国各地の宗教、口碑伝承、民俗学、妖怪等に造詣が深く、官幣社以外の神社にも詳しく、変な社を識っている。商売柄、文献書物にも詳しく、古典籍に限らず、和洋漢の書物に通暁し、研究者でも識らないような細かいことを実に能く識っていて、古文書古記録の整理や鑑定に長けている。重度の書痴でもあり、家屋敷から店舗に至るまで本で溢れている。なお、宗教関係者ではあるが、真の意味での信仰を持てない人間だと自覚している。「この世には不思議なことなど何もない」と言うのが口癖にして座右の銘。