白血球
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走査型電子顕微鏡写真。左から赤血球血小板、白血球(リンパ球)色は画像処理でつけたもので、実際の色ではない

白血球(はっけっきゅう、: white blood cellあるいは: leukocyte)とは、生体防御に際した免疫担当する細胞である単球マクロファージ)、リンパ球好中球好塩基球好酸球の5種類を含んだ総称的物質を指す。

この細胞成分は、外部から体内に侵入した細菌ウイルスなどの異物の排除や、腫瘍細胞・役目を終えた細胞排除及び分解殺失などを役割とする造血幹細胞由来の細胞である。

血液検査などではWBCと表されることが多い。

大きさは6から30µmマクロファージはそれ以上)。数は、男女差はなく、正常血液3,500~9,500/μL(1 μLあたり、3,500から9,500個)程度である。詳細は「#白血球数の基準値」を参照
白血球の種類 好中球好酸球好塩基球リンパ球単球 5種類の白血球

末梢血内には顆粒球・リンパ球・単球があり、顆粒球ギムザ染色による染色のされ方の違いによって好中球好酸球好塩基球の3つに分類される[1]

したがって末梢血内の白血球は通常、好中球好酸球好塩基球リンパ球単球の5種類とされる。

顆粒球は骨髄で産出され、末梢血内の白血球の半分から3/4程度を占める[2]細胞質には殺菌作用を持つ顆粒が存在する。リンパ球は末梢血内の20から40%を占め、単球は3から6%ほどを占める[2]

組織内には単球の分化が進み組織ごとに適応し、異物の呑食・不要になった体細胞の処理、体液性免疫細胞への抗原提示サイトカインの放出などさまざまな役割を果たすマクロファージが存在する。
白血球数の基準値

内科学の代表的な教科書では白血球の基準値は3,500?9,500/μLとされている[1]。しかし末梢血内の白血球数は個人差が大きく、また一個人内でも短時間で変動する。そのために検査機関ごとに、あるいは成書ごとに基準値の設定には差があり、成人では基準下限値は3,300?4,000/μL、基準上限値は8,000?11,000/μLと幅がある[2]。新生児および乳幼児は成人より数が多く、新生児では20,000/μLを超えることも珍しくない。また、新生児から乳児期にはリンパ球の割合が高く、70%程度になる[2]

疾患などがあると、基準値より増加、減少する[3]

基準値より増加の場合→白血球増多症: Leukocytosis)

50,000/μL以上
白血病骨髄増殖性疾患、栗粒結核敗血症悪性腫瘍
10,000?50,000/μL 
感染症自己免疫疾患代謝障害、薬物中毒、白血病、骨髄増殖性疾患、ステロイド剤の影響、ストレス喫煙妊娠

基準値より減少の場合→白血球減少症: Leukopenia)

1,000?3,000/μL
再生不良性貧血抗ガン剤放射線治療の副作用、薬剤アレルギー、ガンの骨髄転移、骨髄異形成症候群、悪性貧血機能亢進、腸チフス、ウイルス感染症、骨髄線維症粘液水腫AIDS無顆粒球症
1,000/μL以下
1,000?3,000/μLと同じ

上記の疾患などは白血球数の増減があるが、白血球数だけでは確定診断できない[4]
好中球詳細は「好中球」を参照好中球(中央紫色の核を持つ物体)の光学顕微鏡写真。中央に1個ある好中球以外の血球は赤血球である。

好中球(好中性白血球)(Neutrophil)は末梢血内では白血球全体の50から70%を占め[2]、顆粒球では約90から95%を占める。細菌や真菌などの感染には好中球が最初に集結し、かつ主に好中球が対処するが、好中球は体液性免疫細胞への抗原提示は行わない。好中球が処理し切れなかった細菌などの異物をマクロファージなどが貪食し、抗原提示を行い、体液性免疫を獲得する。怪我などをした後に傷口から発生する膿は、細菌との戦いで死んだ好中球の死体を主としている。
形状

無色半透明のおおむね球状であるが、偽足を出し、盛んにアメーバ様運動をするので、形は定まっていない。標準の血液細胞染色であるギムザ染色で中性色素に染まる殺菌性特殊顆粒を持ち、成熟すると核が分かれる(分葉)ので多核白血球といわれることもある。最終完成形の好中球は分葉核球と呼ばれ、核は分かれるが、核の間は核糸で繋がっている。分葉核球になる前には核が大きく曲がったジェリービーンズ様の桿状である段階がある(桿状核球)。殺菌性顆粒はリソソームの一種であり、ゴルジ体(内網装置)で作られる。直径は12?15μmであり[5]、白血球の中ではリンパ球より大きく、単球・マクロファージより小さい。アルコール固定・染色された好中球の顕微鏡像
数量・寿命

末梢血内には1マイクロリットル当たり2,000から7,500個程度の好中球が含まれ[2]、成人の末梢血内には概ね10の10乗個のオーダー(桁)の好中球が存在する。体重50kgの場合でおおよそ80億個から300億個程度の数量である。

しかしながら好中球は血管壁や組織、脾臓肝臓などにも末梢血内に匹敵する量の好中球が辺縁プールとして存在する。さらに骨髄には末梢血内の10から30倍もの量の貯留プールが存在し、生体内すべてでは10の11乗のオーダー、数千億個の桁の好中球が存在する。

大きな貯留プールがあるため、細菌感染時などには貯留プール内の好中球が動員され、末梢血内の好中球数は速やかに増加する。また、食事や運動、ストレスなどのわずかな体の変化でも、その血流量の変化によって血管壁に滞留などで辺縁プールに存在していた好中球が末梢血内に移動するので、好中球数は変化しやすい。細菌感染時には、炎症性のサイトカインの働きで骨髄内での生産も亢進される。

感染がない時でも、一部の好中球は血管から組織内に移動し存在する。

血液内での好中球の寿命は1日以内、概ね10時間程とされる。組織内では数日である。

好中球は骨髄内で生産されるが、1日当たり10の11乗個(1000億個)程度作られる[2]
好中球の生体防御のしくみ

生体に細菌などが感染すると、好中球は感染した炎症部位に遊走して集まり、細菌を貪食殺菌する。
遊走走査型電子顕微鏡写真。好中球(黄色)が 炭疽菌(オレンジ)を貪食しているところ。なお、色は見やすくするために画像処理時に着色したもので、実際の色ではない。

細菌真菌類が侵入した組織では、組織内のマクロファージ肥満細胞がただちに反応し、インターロイキン-1(IL-1)などのサイトカインを放出し、それらのサイトカインにより、組織内の細胞は炎症性変化を起こす。また、それ以外の過程を含め、炎症性変化を起こした組織はインターロイキン-8(IL-8)を代表とする多種類のケモカイン(サイトカイン)や、その他の多種類の好中球遊走刺激因子を放出する。それらの刺激因子や細菌自身が産出する物質、活性化された補体を表面のレセプターで感じ取った好中球は遊走運動を活発化させる。速度は最大40μm/minになる。好中球は表面に多数あるレセプターで刺激因子の濃度の濃い薄いを感じ取り、因子の濃度の濃い方向に遊走し、感染巣に集結する。


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