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ホッキョクグマ
ホッキョクグマ Ursus maritimus
保全状況評価[1][2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約附属書II
分類
Thalactos maritimus
和名
ホッキョクグマ
英名
Polar bear
ホッキョクグマ(北極熊、Ursus maritimus)は、クマ科クマ属に分類される食肉類。 北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏[3][4]。
目次
1 分布
2 形態
3 分類
4 気候変動の影響
5 生態
6 道具を使うホッキョクグマ
7 人間との関係
7.1 飼育
7.2 保護
7.3 食用
7.4 獣害
7.5 和名と俗称
7.6 その他
8 画像
9 参考文献
10 関連文献
11 脚注
11.1 注釈
11.2 出典
12 外部リンク
分布
形態 ホッキョクグマは北極の生活のために体を進化させた。保温性の高い毛皮、分厚い脂肪、短い足は、寒冷な気候への適応である。メディアを再生する 泳ぐホッキョクグマ(ドイツのBremerhaven Zoo
体長オス:200-250cm メス:180-200cm 体重オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)[5]。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。近年は地球温暖化の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45kg、メスの平均体重が31kgも減少した[6]。
他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ[4]。体は大きくても耳が小さい[7]ため体勢は寒冷地に適応している[3]。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている[3]。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる[3][4]。出産直後の幼獣は体重0.6kg[4]。前述の長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また流氷に乗って長距離移動することもある[8]。クマの中では視力は良いほうである[9]。
全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。多くの哺乳類の体毛がたとえ白色であっても光を透過しないのに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、内部が空洞になった特殊な構造のために、散乱光によって白く輝いて見える。ホッキョクグマの透明の体毛は陽光の通過を妨げず奥にある皮膚にまで届き熱をもたらす[注釈 1]。もたらされた熱はぶ厚い脂肪層と体毛に保護され、容易に失われることはない。それに加え体毛内の空洞も蓄熱の役割を果たすという巧みな保温機構を成立させている。体温が殆ど外に逃げないため、体から輻射される赤外線の量が非常に少ない。この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際は雪の反射光に遮られる為、ほぼその姿を捉えられないことが知られている。なお、動物園などに飼育されている個体の場合、体毛の空洞に汚れが入り込むことで黄色っぽく変色したり、ときには空洞内に藻が発生し緑みがかかった色になってしまうことがある。この状態を俗に「ミドリグマ」ともいう[10]。 ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万2,000年前に共通の祖先から枝分かれした[11]。そのため互いに交配し、生殖能力のある子孫を残せることが判明しており、野生下でも稀にこのような個体の存在が確認されている。このためヒグマとホッキョクグマの生殖的隔離は不完全となっている。昨今では温暖化の影響もあり、北上してきたヒグマと陸地に上がってきたホッキョクグマの生息域が重なり「ハイブリッド」と呼ばれるヒグマとホッキョクグマの交配種が確認されている。ハイブリッドは体毛はホッキョクグマのように白いが、盛り上がった肩と土を掘るための湾曲した長い爪などヒグマの特徴を強く受け継いでいる。 2004年(平成16年)、アイスランドの地質学者が、ノルウェー・スバールバル諸島の地層からホッキョクグマのあご骨と犬歯を発見。ペンシルベニア州立大学などの欧米の研究チームは化石に残された遺伝子と、米アラスカ州に生息するホッキョクグマ2頭とヒグマ4頭の遺伝子を比較解析した。その結果、氷期だった約15万2000年前にヒグマとホッキョクグマの共通の祖先から枝分かれし、最後の間氷期が始まる直前の約13万4,000年前には現在のホッキョクグマに近い形で存在していたことが判明している。 現在、ホッキョクグマとヒグマの祖先のその後の環境について次のように推測されている[12]。間氷期の始まる前の時期は寒く、15万年前は現在よりも9-10度気温が低く、間氷期が始まると温度が上昇し、間氷期の中で最も暖かかった約12万年前には、極地の気温は現在より3-5度高かった。その後温度は上下を繰り返しながら全体的に下がっていった。約1万年前に終わった氷期では8-10度低かったと推定されている。その後、温度は上昇し現在に至る。結果として約15万年前からホッキョクグマの祖先は温度の急激な変化を何度も乗り越えてきたことが判明している。このため、ホッキョクグマが地球温暖化に対してどこまで適応できるのか、関心が高まっている[11]。しかし近年の研究では、北極圏における海氷の減少に伴い、比較的南方に棲む群から生息数の減少が観測されており、このまま地球温暖化が進行すると北極圏全体の個体が危機に晒されるだろうと警告されている[13][14]。また南下したとしてもヒグマ等との競争に弱いと見られ、絶滅の危険性が指摘されている[15][16]。村にまで集団南下した例がある[17]。
分類
気候変動の影響
生態 スヴァールバル諸島・スピッツベルゲン島のホッキョクグマ クジラの死骸に近寄るホッキョクグマメディアを再生する ホッキョクグマの子供