白亜紀恐竜奇譚_竜の国のユタ
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白亜紀恐竜奇譚 竜の国のユタ
漫画
作者
所十三
出版社秋田書店
掲載誌週刊少年チャンピオン
発表号2006年40号 - 2009年26号
巻数8巻+6巻
話数70+55
テンプレート - ノート
ポータル漫画

『白亜紀恐竜奇譚 竜の国のユタ』(はくあききょうりゅうきたん りゅうのくにのユタ)は所十三による日本少年漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店にて連載。2部構成で、第1部は全70話、2006年40号から2008年12号に連載され、そのうち第19-33話がユタ幼年編にあたる。第2部『D-ZOIC』(D-zoic。ディーゾイック)は全55話で、2008年19号から2009年26号にかけて連載された。
概要

単行本には「超本格恐竜冒険ファンタジー」のコピーが記載されている。その通りに、恐竜の関わりや生活を描いた冒険活劇である。白亜紀末、マーストリヒト期(6550万年前[1])の北アメリカ人類が王国を作り生活している。描写からも舞台は北米らしいということが散見されるほか、解説コーナーなどでは明確に「白亜紀末の北米である」と説明されている。

北米と言っているが、もっと限定的に、アメリカ西部のことである[2]。理由は古地理であるため。西のララミディア大陸と東のアパラチア大陸が合体して北米大陸ができた。ユタ北米=ララミディア大陸=現代アメリカ西部で、その東方はアパラチア大陸=現代アメリカ東部に当たる。6550万年前のユタ時代にはもうララミディアとアパラチアは合体しているが不毛の大地で隔てられているため動物が往来できないという設定。[3]

舞台と設定は独特だが、王道の少年漫画である。2部単行本の裏表紙にて、英文で説明があるが、「戦いと冒険が、少年を大人にする」という少年漫画のテーマに則っている。

2部のタイトル『D-ZOIC』は「竜の時代」のような意味。DはDragon(Draco)、Dinosaur共通の頭文字。[4]

「恐竜と人間が共存するファンタジーである」と同時に「恐竜を科学的にリアルな生物として描く」という試みがなされている。テレビや図鑑で描かれる姿と異なるような点も、作者なりの思考を反映させたものである。ファンタジーではあるが、火を吹くドラゴンや万能の魔法使いなどは放棄して、科学の足枷をつけた話作りが行われている(SFかもしれない、とも)。2部から登場する冥王国の擬竜についても、スタンスは同様である。[5]

白亜紀の地球に人間がいるという前提のもとで、文明レベルは産業革命以前のものとなっている。生態系に準じた植物相となっていることで、現代の植物基準での農業と食料が存在しない。動物としては、大型哺乳類も家畜哺乳類も存在せず(つまりもおらず)、代わりに「竜」や「竜鳥」といった動物達を使役している[6]

戦いは、馬の代わりに竜を用いる、中世・近代以前の戦争。勢力ごとに軍隊に特徴があり、強い個人もいる。だが、いくら強くても竜をうまく使えなければ絶対に戦争に勝てないように描写されている。どんなに強い個人であろうと、巨竜に踏まれたり噛まれたら死ぬ。主人公の特殊性も、武ではない。

作中の通貨単位は「ゴールド」、長さの単位は「メルテル」。解説コーナーでは恐竜の全長が「メートル」で説明され、また主人公のユタは矮人族(こびと)の少年という設定。この設定は、小型の恐竜にも騎乗できるが、大型の恐竜を敵にした場合はサイズ比で不利になるということである。

新規恐竜ファンの入門をテーマに描かれている。単行本には、解説コーナー『恐竜特捜隊』が設けられており、作者は「恐竜伝道師」を名乗る。

終盤は展開が駆け足気味となった[7]が、完結している。
あらすじ

1部では、竜(恐竜)の言葉を聞くことができる少年ユタの冒険が描かれる。ユタが冒険をする一方で、海王陣営は「降臨の地」の扉を開く鍵なる人物、「竜の言葉を解する者」を探している。終盤にてユタこそがその人物=鍵であることが確定する。

2部では戦争が始まる。冥王マルタは擬人と擬竜の軍勢を率いるが、それらは「神の御業」のほんの片鱗でしかなく、降臨の地に行けばさらなる力が手に入るのだという。冥王の侵略に対して原王海王が抵抗し、鍵であるユタを複数の勢力が狙って来るような状況で、ユタが各地を動き回るという構図になる。ユタ自身も降臨の地へ行ってみたい・行かねばならないと思うようになる。最終的にユタは降臨の地へと赴き、海王カドモスが冥王マルタを倒して完結となる。
物語開始以前

白亜紀末の北米に、人間が王国を作り生活している。伝説によると、天空のオフタルモスから人が、竜の住まう地上に降りて来たのだという。「竜の国」は原海森山洋の五王国から成り立ち、原海森には真人族、山には矮人族、洋には巨人族が住んでいる。世界の外側、神の定めた「禁制領域」には陸上海洋共に進出できていない。

海王アルゴスは、「降臨の地」を求めて、北と東の禁制地域に遠征隊を派兵したが、手掛かりは何も見つからず、多くの犠牲を出しつつ、新種竜と病のみを持ち帰ってきた。この海王国に対して、平原王国と森王国が制裁戦争を仕掛ける(コモンズ三国戦役)。海王国のマルタ王子も軍を率いて出陣する。戦災は山王国と大洋王国にも飛び火し、五王国全土で多くの死傷者が出る。最終的には戦争は終結し講和がなされた。海王国では、マルタが廃嫡され、弟のカドモスが新海王に即位する。またこれに伴いコモンズ三国では賢人制度が撤廃された。五国暦980年ごろの出来事である。
1部・ユタ幼年編

10年後、五国暦990年。山王国辺境に位置するナーガの村に住む矮人族の少年ユタは、友人のフィルと2人で海王軍のパレードを見物に出かけ、出会った竜騎士の青年に、立派な竜使いとなるよう激励される。だが祖父のツーコンは、先代海王に竜使いとして仕えた息子のワイトが夭折したことを受けて、孫のユタが竜使いになることには反対していた。

ユタとフィルは、洞窟「竜神様の祠」に探検に出かけるが、帰り道、大雨で水位が増した川中の岩上に取り残されてしまう。パキ(パキケファロサウルス)のジサマとツーコンが川岸に駆け付け、竜笛と独特の鳴き声を用いて、伝説の竜アラモス(竜脚類アラモサウルス)を呼び寄せる。ツーコンもまた竜使いであったのである。ユタとフィルの2人は、アラモスの長い首を伝って川岸まで渡り助かるが、流木が衝突してツーコンはケガを負い、「五国一の竜使いとなれ」と遺言して命を落とす。

同じころ、海王国では、海王カドモス不在の間にマルタ教皇が王位簒奪を謀り謀反、王城を占拠していた。実は先にユタが出会った竜騎士の青年こそが海王カドモスであり、彼は帰国に際して単身でユタと再会する。カドモスはユタに導かれて山を越え、敵味方の想定以上に早く帰国を果たす。カドモスは竜を駆使してマルタの反乱を鎮圧する。追い詰められたマルタは堀に身を投げ、ワニに呑み込まれて消息を絶つ。海王カドモスが竜を使って反乱軍を倒したというニュースは、ナーガの村にも伝わる。
1部「白亜紀恐竜奇譚 竜の国のユタ」

五国暦995年。海王カドモスは竜使いを集めている。そのような彼を、山王シージンは6550万年後の未来と同じ過ちを犯そうとしていると批判する。

ユタは夢である一人前の竜使いになるための初仕事として、海王軍の隊商(キャラバン)の道案内(ガイド)の仕事に応募し採用される。ジサマ、幼馴染のフィル、ベテラン竜使いのフックらが一緒である。道中いきなりレックス(ティラノサウルス)に遭遇するも、ジサマのアドバイスを聞き撃退を遂げたことで、自分が竜の心の声を聞くことができるということを自覚する。さらには森でケガをしたアンを救い、続いてナノティラヌスの子供「ナノチビ」を拾う。そうしているうちに、予想外のトラブル続出とドーウェン隊商長の愚行により、積荷をほとんど失い死傷者を抱えたまま日が暮れてしまう。夜のヴァジェトの森は、肉食竜の無法地帯と化す。隊商は竜討士のバーンとジャッコを護衛に雇って野営を行い、肉食竜の襲撃をなんとか防いで夜明けを迎える。疲労のまどろみの中、ユタは5年前の出来事を夢に思い出す。(→19-33話・ユタ幼年編→)

荷を失った損害の賠償に迫られた隊商長は、ユタを騙して、ジサマと一緒に人買いに売ってしまい、ユタはそのまま平原王国王都ファブニールの奴隷闘竜士にさせられてしまう。矮人族を奴隷扱いにした上で闘竜の見せ物にする原国に対して、ユタは間違っていると宣言したことで、観客全員を敵に回し、処刑同然の闘竜試合に出される。ユタとジサマの対戦相手は、凶暴な禁制地域の竜ドリュプトス(ドリプトサウルス)と闘竜士フリード。ユタはフリードの槍を奪い取りドリュプトスの命を守る。この闘いぶりを意気に感じた原王マルシュは、ユタを勝者と宣言する。その顛末を見たパウルスは、ユタこそが「竜の言葉を解する者」「鍵」であると確信する。

また一方でフィルやバーン達も、ユタを救うべく、危険を冒して原国に入国する。賊「雷竜党」に襲われるも、彼らが原国と敵対する組織だということで思惑が一致する。さらに昼間からオフタルモスの星が灯るという凶兆が起こり、時を同じくして山王シージンが病に倒れる。

原王国は領土を荒らす雷竜党を討伐すべく軍を派兵していた。パウルスとユタは闘技場での活躍で実力を認められ、ドリュを連れて兵士として戦場に赴くことになる。戦場の混沌を利用して、ユタは隙を見て逃げ出し帰郷するという計画である。

原国軍は雷竜党が村を荒らしていると思っていた。雷竜党は原国軍が村を略奪していると思っていた。だがどちらも誤りであり、実際に荒らしていたのは第三勢力であった。人ならざる者(竜人)と未知の竜から成る軍勢、そいつらは「人間を食べる」のである。「タイパン峠の戦い」が勃発し、原国軍と雷竜党は共闘して、大きな犠牲を出しつつも、竜人の部隊を打ち負かす。竜人達の頭目は、冥王を名乗るマルタ教皇であった。

ユタはフィル達と再会を果たし、ナーガの村に帰郷する。一月に満たない期間の旅であった。
2部「D-ZOIC」

半年が経過した。冥王軍は西進を続け、海原森三国国境に割り込み陣取る。冥王マルタの目的は海王国の奪回ではなく、西の山王国にいると目される「鍵」なる人物を獲得すること。山王国には「ヒトモドキ」のランス達が、「人」を装って入国する。

アンの後輩のルルがナーガの村に来るということを知ったユタは、彼女を迎えに行く。森の中でルルはランスに保護されていたが、彼こそが冥王軍のヒトモドキである。ユタの仲間達と、ランス、テトリ(小型)、ゴッロ(大型)らヒトモドキ達の間で戦闘が始まる。


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