白ゆき姫殺人事件
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白ゆき姫殺人事件
著者
湊かなえ
発行日2012年7月26日
発行元集英社
日本
言語日本語
形態四六判上製本
ページ数277
コードISBN 978-4-08-771459-3

ウィキポータル 文学

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『白ゆき姫殺人事件』(しらゆきひめさつじんじけん)は、湊かなえによる日本小説。『小説すばる』(集英社)にて2011年5月号から2012年1月号まで連載され、2012年7月に発売された。また、湊かなえ初の電子書籍として2013年8月23日よりeBookJapanBookLiveで配信されている[1]。また、メディアミックスにより映画化・漫画化されている。
概要

インターネット上の炎上報道被害をテーマとしており、美人OL殺害の容疑者となった女性の人物像が、架空のSNS「マンマロー」上でによって魔女のように語られ形作られてゆくミステリ作品である。

本編は以下のような構成になっている。

第一章 同僚I

第二章 同僚II

第三章 同級生

第四章 地元住民

第五章 当事者

「しぐれ谷OL殺人事件」関連資料

第一章から第四章は事件を追うフリーライター「赤星雄治」目線の取材内容が描かれ、第五章は容疑者「城野美姫」によって語られる顛末の真相が描かれている。巻末には「関連資料」という形で登場人物によるSNSの書き込みや週刊誌の事件報道が収録されている[2]。電子書籍版では各章末のリンクタップ操作することで関連資料が表示される形式になっており、電子書籍で読むのに向いた内容とも評価されている[2]

オリコンの「2014年 年間本ランキング」の文庫部門で、本作が第2位にランクイン[3]
刊行情報

単行本 - 集英社、2012年7月26日発売、
ISBN 978-4-08-771459-3

文庫版 - 集英社文庫、2014年2月20日発売、ISBN 978-4-08-745158-0

電子書籍版 - eBookJapan、BookLiveほか、2013年8月23日配信開始

あらすじ
第一章 同僚I
週刊誌のフリー記者をしている赤星雄治のもとに、高校時代の友人である狩野里沙子から電話がかかってくる。内容は3月7日月曜日の早朝にT県T市にあるしぐれ谷の雑木林で焼死体が発見された事件について、狩野が警察から事情聴取を受けたというものであった。被害者の名前は三木典子。『白ゆき』石けんを販売する化粧品会社「日の出化粧品」に勤めており、狩野の同僚であった。遺体は全身十箇所以上を刃物で刺されたあと、灯油をかけて焼かれていた。狩野から事件の詳細を聞いた赤星は、事件について興味を持ち独自調査を始める。
第二章 同僚II
赤星は三木の同僚からの取材を進め、皆から揃って三木が美人で優れた人物であるとの証言を得た。同時にそれと比較されるように挙げられる城野美姫の名前を耳にする。城野は三木の同期であり、内向的で謎が多い城野は常に三木の比較対象となっていた。それゆえに城野は三木に強いコンプレックスを抱いていたのではないか、と同僚らは口々に語った。城野が交際していた上司を三木に奪われたという噂、事件時刻近くに三木が城野の車に乗っていたという目撃証言、事件後城野は虚偽の理由で会社を休んでいることを聞き、赤星は城野への疑いを抱くようになっていった。
第三章 同級生
これまでの取材をまとめて雑誌に掲載した赤星のもとに、城野の大学時代の同級生・前谷みのりから抗議文が届く。手紙には記事には取材で得られた証言を面白おかしく歪めて書き立てており、記事を読んだ人に城野の人格を誤解されると糾弾する文章とともに、城野の無実を証明すべく人物像を示す大学時代のエピソードが書き添えてあった。赤星はさらに同級生へと取材を広げ、城野の「呪いの力」の噂を耳にする。中学時代に城野が片想いしていた江藤慎吾からは、軽率な行動で城野を怒らせてしまった一週間後に自転車で事故にあったという証言を得た。周囲の人間は呪いだと騒ぎ立てたそうだが、江藤自身は呪いを否定し、城野が自転車に細工をしたのだろうと語った。
第四章 地元住民
赤星の取材は城野の地元に及び、城野の小学校時代の親友・谷村夕子と出会う。谷村は小学校時代に同級生からの苛めを苦にし「死にたい」と城野に伝えたとき、城野が持ってきた雑誌にあった「いじめ対処法の
白魔術」を実践したことを赤星に語った。谷村は予想外の城野の言動に引いたものの、自分を救おうとしてくれたことを嬉しく思ったという。その白魔術は紙で人型を作って燃やすものであったが、火の不始末により祠を燃やす火事を起こしてしまう。地域住民の消火活動で火は消えるが、燃え残った人型を発見され「呪いの儀式をしていた」と噂されるようになる。城野の無実を信じる谷村の矛先は赤星へと向かう。赤星の記事やマンマローをチェックしていた谷村は、城野が散々悪者のように書かれた内容に憤慨しており、嘘に惑わされず事実だけを書くよう赤星を叱責する。赤星は城野の自宅にも訪れた。両親は最初は娘が犯人だとは信じていなかったが、父親の浮気の話へと話題がそれていき、最後はカッとなった母親が父親に「娘が殺人をしたのはあなたのせいよ」と責め立てる。それを受けた父親はうなだれ、赤星の前で土下座し謝罪する。
第五章 当事者
城野はビジネスホテルの一室で、事件に関するテレビや雑誌の情報を見ていた。報道では三木は美人で優しい人だったとあるが、実際は美人であることを鼻にかけた嫌味な人間だったことを城野は知っている。城野はある飲み会での出来事を思い返した。寝てしまった三木を見て同僚らは「性格は別として三木ほど美しい人はいない」という話をしていたが、話を振られた城野は「一番美しいと思うのは幼馴染みの夕子ちゃんだ」と答えた。寝ながらにそれを聞いていた三木は、それ以来城野をターゲットとして好きなものを奪っていき、その最たるものが交際していた上司であった。城野は心の支えであった双子のバイオリンデュオ「芹沢ブラザーズ」だけは悟られまいとしていたが、それを察知した三木は恋人関係になったと城野にアピールした。事件当日は会社の飲み会があった。その前日、三木は城野に「風邪気味だから芹沢ブラザーズのコンサートに代わりに行かないか」と持ちかけた。複雑に思いながらも城野は新曲聴きたさに誘いを受けるが、当日朝に三木は「体調も回復したし彼のために行く」と態度を翻す。意気消沈した城野は、給湯室で狩野に全てを打ち明ける。それを聞いた狩野は同じ境遇だと打ち明け、城野に「三木からチケットを奪え」と唆した。作戦は飲み会で風邪気味の三木に狩野が風邪薬と偽って睡眠薬を飲ませ、終了後駅に向かう三木を城野が車で送り、眠り込んだところでチケットを奪うというものであった。若干の手違いがあったものの作戦は成功し、車の中で眠った三木を放置したまま、城野はコンサート会場へと向かった。会場に到着した城野は芹沢ブラザーズの会場入りを、他のファンとともに会場前で待っていた。芹沢ブラザーズが到着すると周囲は騒然とし、城野が握手を求めて手を伸ばした瞬間後ろから押され、芹沢ブラザーズを突き飛ばしてしまう。これに動転した城野は近くにあったビジネスホテルに直行し、現在に至る。三木が死んだことを知ったのはその後であった。城野はテレビや雑誌において、周囲の人間からの自分に対する証言を見聞きした。その中には、自分が知りもしない自転車に細工したとの記述、親友が自分の行いを迷惑だと思っているとの記述、また両親が娘の罪を認めて土下座したとの記述もあった。そういったものを目にし、地元になど帰りたくない、自分が行く場所などないと感じていた。
「しぐれ谷OL殺人事件」関連資料を含めたあらすじの補足


赤星雄治は取材で得られた情報を、雑誌記事以外にマンマローにアップしていた。城野美姫の個人情報流出の一因ともなり、「白ゆき姫殺人事件」の犯人城野は魔女という流れを作ったが、真犯人が逮捕されると今度は赤星の個人情報が流出し始めた。

赤星は前谷みのり・谷村夕子と少なくとも2度抗議を受けているが、いずれもそれすら歪めて誇張した記事を作成している。

前谷も城野擁護のためにマンマローを利用しているが、それが原因で一部の個人情報が流出した。

三木典子殺害の犯人は狩野里沙子である。狩野は会社の主力商品である「白ゆき石けん」の盗みを繰り返しており、それを三木に気づかれていた。会社に告発されるのではと思っていたときに城野から相談を受け、放置された城野の車で眠る三木を見て犯行に及んだ。

登場人物
主要人物
赤星雄治(あかほし ゆうじ)
週刊誌にグルメ系の記事を書いているフリーのライター。23歳。
城野美姫(しろの みき)
本事件の容疑者。日の出化粧品の社員で、大人しい地味な雰囲気は同期の三木典子と常に比較されている。芹沢ブラザーズのファン。25歳。
三木典子(みき のりこ)
本事件の被害者。山中で焼死体となって発見された。日の出化粧品の社員で、社内一の美女と噂されている。25歳。
日の出化粧品
狩野里沙子(かのう りさこ)
日の出化粧品の社員で、殺害された三木典子の職場でのパートナー。赤星とは高校時代からの友人。23歳。
満島栄美(みつしま えみ)
日の出化粧品の社員で、城野美姫の職場でのパートナー。狩野里沙子の同期で、通称「みっちゃん」。
篠山聡史(しのやま さとし)
日の出化粧品の社員で、城野美姫らの上司で係長。城野美姫とは恋人同士と思われていたが…。
小沢文晃(おざわ ふみあき)
日の出化粧品の社員。城野美姫、三木典子の同期。直に結婚予定である。
城野美姫の友人
前谷みのり(まえたに みのり)
城野美姫の大学時代の友人。
尾崎真知子(おざき まちこ)、島田彩(しまだ あや)
城野美姫の高校時代の同級生。
江藤慎吾(えとう しんご)
城野美姫の中学時代の同級生で、サッカー部キャプテン。
城野美姫の地元
松田芳江(まつだ よしえ)
城野美姫の実家周辺の住民。
谷村豊(たにむら ゆたか)
城野美姫の実家周辺の住民で、谷村夕子の祖父。
八塚絹子(やつか きぬこ)
城野美姫の小学校時代の友人の母。
谷村夕子(たにむら ゆうこ)
城野美姫の小学校時代の親友。
松田フキ(まつだ ふき)
城野美姫の実家周辺の住民で、松田芳江の義母。
城野皐月(しろの さつき)、城野光三郎(しろの こうざぶろう)
城野美姫の両親。
映画

白ゆき姫殺人事件
監督
中村義洋


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