発酵
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この項目では、生化学的な作用について説明しています。その他の用途については「発酵 (曖昧さ回避)」をご覧ください。

嫌気呼吸」とは異なります。
進行中の発酵。発酵混合物の上に二酸化炭素の泡が見える。

発酵(はっこう、: fermentation、?酵[注釈 1])は、酵素の働きによって有機物質に化学変化をもたらす代謝プロセスである。生化学では、酸素のない状態で炭水化物からエネルギーを取り出すことと、狭義に定義される。食品製造(英語版)においては、より広く、微生物の活動が食品や飲料に望ましい変化をもたらすあらゆる過程を指すこともある[1]。発酵の科学は発酵学または酵素学と呼ばれる。

微生物において、発酵は、有機栄養素の嫌気的(英語版)な分解を通じてアデノシン三リン酸(ATP)を生成する主要な手段である。

人類は新石器時代から、食品や飲料の生産に発酵を利用してきた。たとえば、発酵は、キュウリのピクルスコンブチャキムチヨーグルトなどの酸っぱい食品に含まれる乳酸を生成する工程で長期保存を可能としたり、ビールやワインなどのアルコール飲料の製造(英語版)にも利用されている。また、発酵は、人間を含むすべての動物の消化管内でも起こる[2]

工業的発酵(英語版)とは、化学物質、バイオ燃料、酵素、タンパク質医薬品の大規模製造に微生物を応用する工程を指す、さらに上位の概念である。
定義と語源

発酵のさまざまな定義を、非公式で一般的な用法からより科学的な定義まで次に示す[3]
微生物を用いた食品の保存法(一般用途)

空気の有無にかかわらず発生する大規模な微生物プロセス(産業界で使用される一般的な定義。工業的発酵(英語版)として知られている)

アルコール飲料または酸性乳製品を製造するあらゆる工程(一般用途)

嫌気条件下でのみ起こるエネルギー放出代謝プロセス(やや科学的)

やその他の有機分子からエネルギーを放出し、酸素や電子伝達系を必要とせず、最終的な電子受容体として有機分子を使用する代謝プロセス(最も科学的)

「発酵(ferment)」という言葉は、沸騰を意味するラテン語の動詞「fervere」に由来する。14世紀後半に錬金術の分野で初めて使われたと考えられているが、あくまで広義の意味である。現代科学的な意味で使われるようになったのは1600年頃である[要出典]。
生物学的役割

好気呼吸と並んで、発酵は分子からエネルギーを取り出す方法である。これは、すべての細菌真核生物に共通する唯一の方法である。そのため発酵は、地球上に植物が誕生する以前の太古の環境、つまり大気中に酸素が存在する以前の原始的な環境に適した、最も古い代謝経路であると考えられている[4]:389。

真菌の一種である酵母は、果物の皮から昆虫や哺乳類の内蔵、そして深海に至るまで、微生物が生息できるほぼあらゆる環境に存在する。酵母は糖分を多く含む分子を変換(分解)してエタノール二酸化炭素を生成する[5][6]

発酵の基本的な機構は、高等生物のすべての細胞に依然として残されている。哺乳類筋肉は、酸素の供給が制限される激しい運動中に発酵を行い、乳酸を産生する[7]:63。無脊椎動物では、発酵によってコハク酸アラニンも生成する[8]:141。

発酵細菌は、家畜の第一胃、汚水処理槽、淡水成堆積物に至るさまざまな生息環境で、メタンの生産に重要な役割を果たしている。発酵細菌は、水素、二酸化炭素、ギ酸酢酸カルボン酸を生成する。その後、複合微生物系が、二酸化炭素と酢酸をメタンに変換する。また、酢酸生成菌はこれらの酸を酸化し、さらに酢酸と水素またはギ酸を生成する。最後に、メタン生成菌古細菌の一種)が酢酸をメタンに変換する[9]
生化学的概要.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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疑問点:中間的な微好気性条件下での発酵に関する情報が欠けている(例: doi:10.1016/j.biotechadv.2012.11.005)。このような条件で、酸素を除去する好気性細菌の存在のもと、偏性嫌気性細菌が生存することができる(例: doi:10.1186/s12934-016-0412-z)。
真核細胞における好気呼吸と最もよく知られている発酵タイプとの比較[10]。円内の数字は分子の炭素原子数を示し、C6はグルコースC6H12O6,、C1は二酸化炭素CO2である。ミトコンドリア外膜は省略している。

発酵により、還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が、内因性有機電子受容体と反応する[11]。通常、これは解糖系により糖から生成されたピルビン酸である。この反応によって、酸化型のNAD+と有機生成物が生成される。後者の代表例として、エタノール乳酸水素ガス(H2)、二酸化炭素もよく生成する。しかし、発酵によって酪酸アセトンなど、さらに珍しい化合物が生成することもある。発酵生成物は、酸素を使わなければそれ以上代謝されないため、廃棄物とみなされる[要出典]。

発酵は通常、嫌気環境で行われる。酸素(O2)が存在する場合、呼吸によって、NADHとピルビン酸アデノシン三リン酸(ATP)を生成するのに使われる。これは酸化的リン酸化として知られている。これによって解糖系単独よりもはるかに多くのATPが生成される。このため、酸素が利用できる場合は、発酵はほとんど行われない。しかし、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)などの一部の酵母株は、酸素が豊富にある場合でも、が十分に供給される限り、好気呼吸よりも発酵を好むことが知られている(クラブトリー効果(英語版)とも呼ばれる)[12]


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