痴漢冤罪
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痴漢冤罪(ちかんえんざい)は、痴漢をしていないにもかかわらず、痴漢をしたとして扱われる冤罪。本項目では、痴漢の誤認逮捕についてもあわせて説明する。個別の事件については「Category:痴漢冤罪」も参照。
概要

2000年ごろから徐々に問題とされはじめ、2007年公開の映画『それでもボクはやってない』をきっかけに広く世に知られるところとなった。

原因としては、被害者による犯人の錯誤や犯罪の有無の錯誤、被害者とされる者による金銭や恨みが動機のでっち上げ、警察や検察の捜査の杜撰さなどが挙げられる。また、痴漢していながら痴漢冤罪を主張する者も存在する[1][2]。「痴漢#痴漢冤罪主張事件」も参照
問題点
冤罪被害の問題点
社会復帰の困難性
これらの問題は、逮捕された時点で、あたかも犯罪者であるかのように扱う
マスメディアの影響もある。2000年代に無罪の確定判決が相次いだため、東京地方裁判所は、痴漢被疑者の勾留請求を原則却下している。東京地裁は被疑者に「事件があった路線を利用しない」誓約書への署名を求め、被疑者が署名した場合は、警視庁からの勾留請求を却下している[3]
虚偽申告
被害者や周囲による行為の有無の錯誤や加害者の錯誤ではなく「痴漢でっち上げ」の事例もあり、警察庁長官吉村博人記者会見で「極めて少数だが、痴漢被害を偽装する女性が存在する」と認めている[4]。中には男性に多額の示談金を要求するケースもある[5][6]。故意に痴漢に仕立て上げるケースでは男性共謀者が存在したり(いわゆる美人局行為)、主犯が男性の場合も多い。2008年に発生した大阪市営地下鉄御堂筋線での事件では、大阪地方裁判所にて主犯の男は懲役5年6か月の実刑判決を宣告され、共犯の女は懲役3年執行猶予5年の判決をそれぞれ受けた[7][8]。なお、この事件は実行犯の女が自首したことで発覚したものである[9]。また2017年6月には、Osaka Metro堺筋線の車内で共謀の女に対し、わざと痴漢をさせて被害をでっち上げたとして、21歳の男が逮捕監禁と虚偽告訴の疑いで逮捕された。この男は女に「示談金をもらう良い稼ぎ方がある」と話を持ちかけインターネットの掲示板に「痴漢してほしい」などと書き込ませ、誘いに乗って実際に痴漢した男性を、大阪府警察に突き出した。男は容疑を否認している。女は同容疑で逮捕の後、釈放された[10][11]
検挙のための検挙
痴漢被害者が、痴漢加害者が誰か正確に認識できず、告訴をためらっていた場合でも「警察が責任を持つ」「後戻りはできない」と、警察官が被害者に告訴を強要する場合もある[12]
推定無罪の原則
本来、刑事裁判における犯罪の証明には、捜査機関が「被告人が犯罪をした証拠」を提出する必要がある。1審で有罪になると、新証拠が出されないと無罪になりにくい[13][注釈 1]
痴漢冤罪をめぐる変化
司法の変化

痴漢の場合、物的証拠がほとんど残らないため、痴漢被害者の訴えが他の訴訟に比して重要視される傾向にあった[14]。しかし、痴漢冤罪撲滅に対する世論の高まりとともに、痴漢被害を主張する者の衣服の指紋の採取、被疑者の指に付着した衣服の繊維や被害者の体液や皮膚の組織などのDNA鑑定など、より先進的かつ客観的な物的証拠が求められるようになり、これらの物的証拠は、起訴段階もしくは審理において重要視されるようになりつつある[15]

2017年7月19日に埼京線で発生した集団痴漢事件では、警察は防犯カメラ(事件のあった1号車には防犯カメラが設置されている)の映像などの物的証拠を調べた上で被疑者4人を逮捕している[16]

2020年現在では、被害者の衣服に付着した皮脂や汗に含まれるDNAを調べることにより触れたのか触ったのか揉んだのかを判別することまでが可能になっている[要出典]。
社会の変化

2015年9月には、ジャパン少額短期保険が事件発生後48時間以内の弁護士費用を補償するサービス『痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険』を開始し、2017年に痴漢の被疑者が線路内を逃走するトラブルが相次いで報道されたことを受け、加入者が急増した[17]
痴漢冤罪に対する有識者の見解

有田芳生は、金銭目的の「痴漢被害捏造犯」の存在に言及しており、また「痴漢冤罪に巻き込まれたくない」という理由で「家に帰るときは電車を使わず、なるべくタクシーで帰宅している」とブログで記述している[18]

実際に起こった事件に関しては、鉄道関係者は「疑いをかけられた時点で、逮捕を逃れることは不可能に近い」「走って逃げても取り押さえられたらお終い」とコメントしている[19]。一方、「その場から動かずに弁護士を呼ぶべき」と主張する大学教授[20]や、「強引に逃げるとそれ自体が犯罪になるリスクがある(例えば、誰かにぶつかり怪我をさせれば傷害罪に問われる可能性がある)。名刺を渡すなどした上でその場を立ち去るべき」と主張する弁護士もいる[21]。また、警視庁は「申告があれば何でも逮捕するわけではなく、申告内容や第三者の目撃の有無などを検討してから判断する」としている[20]

行列のできる法律相談所』では、2008年に4名中2名の弁護士が「走って逃げるのが最善」と回答し[22]、2016年には4名中3名の弁護士が「現場から立ち去るべき」と回答したが[23]、2017年の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』では嫌疑をかけられた瞬間に両手を上げ「今から何も触らないから繊維検査とDNA検査をやってくれ!」と叫ぶ方法を、弁護士の北村晴男が指南した[24]。コラムニストの尾藤克之は女性の申告のみを採用する鉄道会社のマニュアルに問題があると指摘し、鉄道各社はマニュアルの存在を明らかにするべきだと解説している[25]
メディアの報道

大手マスコミが報道していない痴漢冤罪の可能性がある事件として、2009年12月のJR新宿駅で、痴漢の疑いを受けた青年が、警視庁の任意聴取後に自殺した事が「My News Japan」[26]や「紙の爆弾」[27]で報じられている。
世論調査

マクロミルが2017年6月に実施した調査によると、男性が6割以上、女性が7割以上、男性専用車両の導入に賛成した。一方で、絶対に導入するべきではないと回答した男性も4.6%(女性は0.4%)存在した[28]

この様に、男性専用車両を切望する声も少なくない[29]。ただし日本の鉄道で運行されたことは試用を含めてもない。設置しない理由として、社会の要望が少ないことを挙げる鉄道会社もある[30]
痴漢冤罪事件を扱った作品

本節では、痴漢冤罪を主題とした作品と、副次的に痴漢冤罪を扱っている作品を記載する。
主題とした作品
映画

それでもボクはやってない』(2007年)

テレビドラマ

土曜ワイド劇場京都のテミス女裁判官」・美人判事を襲う夫殺しの罠!チカン裁判不連続殺人事件』(2004年テレビ朝日

誰かが嘘をついている』(2009年フジテレビ


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