バーチャル・リアリティ(英: virtual reality)とは、現物・実物(オリジナル)ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術およびその体系。略語としてVRとも。日本語では「人工現実感」あるいは「仮想現実」と訳される(#「仮想現実」という訳語について)。古くは小説や絵画、演劇やテレビなども、程度の差こそあれVRとしての機能を有している[1]。 バーチャル・リアリティは、コンピュータによって作り出された世界である人工環境・サイバースペースを現実として知覚させる技術である[2]。時空を超える環境技術であり、人類の認知を拡張する[3]。 コンピュータグラフィックスなどを利用してユーザに提示するものと、現実の世界を取得し、これをオフラインで記録するか、オンラインでユーザに提示するものとに大別される。後者は、ユーザが遠隔地にいる場合、空間共有が必要となり、テレイグジスタンス (en:Telexistence
目次
1 概要
2 歴史
2.1 SF作品におけるコンセプト段階
2.2 技術開発
3 特性
4 基礎となる技術と応用
5 「仮想現実」という訳語について
6 バーチャル・リアリティを取り扱った作品
7 VRデバイス
8 VRの問題点
8.1 健康リスク
8.2 VR酔い
8.3 VRへの関心度
9 エレクトロニック・スポーツ(eスポーツ)としてのバーチャル・リアリティの利用
10 脚注
11 参考文献
12 関連項目
13 外部リンク
概要
ユーザーが直接知覚できる現実世界の対象物に対して、コンピュータがさらに情報を付加・提示するような場合には、拡張現実 (en:Augmented reality) や複合現実 (en:Mixed reality) と呼ばれる。
現実と区別できないほど進化した状態を表す概念として、シミュレーテッド・リアリティ(Simulated reality) やアーティフィシャル・リアリティ (Artificial reality) があるが、これはSFや文学などの中で用いられる用語である。 スタンリイ・G・ワインボウムによる1935年の短編小説「Pygmalion's Spectacles」にゴーグル型のVRシステムが登場する[4]。これは、視覚、嗅覚、触覚の仮想的な体験をホログラフィに記録してゴーグルに投影するというシステムで、バーチャル・リアリティのコンセプトの先駆けとなった。 1962年に、映像技師のen:Morton Heilig
歴史
SF作品におけるコンセプト段階
技術開発 アメリカ陸軍のVR射撃訓練装置
1968年に、ユタ大学のアイバン・サザランド によってヘッドマウントディスプレイ(HMD、頭部搭載型ディスプレイ)のThe Sword of Damoclesが開発されたもの[5]が最初のウェアラブル型のバーチャル・リアリティ装置であるとされる。
1978年に、MITで初期のハイパーメディアおよびVRシステムであるen:Aspen Movie Mapが開発された。これはユーザが、仮想世界の中でコロラド州アスペンの散策を行うことができるというシステムであった。季節は夏か冬を選ぶことができた。初期のバージョンは実際に撮影された写真を張り合わせた世界であったが、3版目からは3Dコンピュータ・モデルによって仮想世界が再現された。
1982年に、アタリはVRの研究チームを創設したが2年で解散した。
「バーチャル・リアリティ」という言葉は、ジャロン・ラニアーが設立したVPL Researchが、1989年に発表したVR製品のデータ・グローブ (Data Glove)・アイ・フォン(Eye Phone)・オーディオ・スフィア (Audio Sphere) の紹介から一般的に使われ始めた[6]。
ウェアラブル型ではなく部屋の壁の全方位に映像を投影して没入環境を構築するVRシステムは、1991年にイリノイ大学のElectronic Visualization Laboratoryの Thomas DeFanti らによって提案された CAVE [7](Cave automatic virtual environment、没入型の投影ディスプレイ)が有名である。1997年にはCABINが東京大学インテリジェント・モデリング・ラボラトリーに設置され、2012年まで、15年間にわたり運用された[8]。岐阜県各務原市のVRテクノセンターには6面を大型スクリーンで囲んだCOSMOSが設置された[9][10]。
かつてヘッドマウントディスプレイ(HMD)は仮想現実の表示デバイスとしては適さないと評価された時期があり、1990年代から2000年代初頭にかけて、この種の投影型表示装置と液晶シャッタグラスを組み合わせて没入型デジタル環境を実現して仮想現実の研究の発展に貢献した時期があったものの、装置が大掛かりで設置するための空間や維持費がかかることもあり、近年では一部を除き、下火になりつつある[11]。
1990年代に一時期、アーケードゲームのVirtuality(1991年)やジョイポリスに設置されたVR-1(1994年)、Sega VR(1994年)や家庭用ゲームのバーチャルボーイ(1995年)、PCゲームのVFX1(1995年)など、主にゲーム機をはじめとして各方面でVR装置の開発が試みられた。しかし、当時は表示画素が粗く、トラッキングの精度が不十分でコンピュータの処理能力が限られていた事もあり、本格的な普及には至らなかった[12]。
1994年には、VRデータ用のファイルフォーマットVRMLが開発された。
2007年には、Googleがグーグルマップにストリートビュー機能を追加した。これは全方位パノラマ撮影されたストリートの風景を体験できる機能である。2010年には3Dモデルも追加された。
アメリカでは2000年代から軍隊でパラシュートの訓練などにHMDが使われ始め、2012年後半に登場したOculus RiftからVRへの投資は加速した[13]。2016年はValve CorporationのSteamVR規格対応の「HTC Vive」、スマートフォンを装着して使う"モバイルVR"であるGear VRに対応した『Minecraft』が発売された[14](簡易のGoogle Cardboardや一体型のオールインワンVRもある[15])。