異常震域
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異常震域が現れた2007年7月16日23時17分頃(JST)の地震の震源と各地の震度。
震源は京都府沖の北緯36.8°、東経135.2°付近、震源の深さ370km、M6.6(気象庁による)。北海道浦幌町で最大震度4を観測した一方、震央付近ではほぼ無感となった。2005年3月20日福岡県西方沖地震の震源と各地の震度。震源に近い海岸の福岡市西区で震度5弱となった一方、陸側の東区や離れた佐賀県みやき町などで震度6弱となった。1707年10月28日の宝永地震の震源と各地の震度。大阪平野・奈良盆地で大きな揺れとなった。また、出雲および信濃方面には地震みちが見られる。

異常震域(いじょうしんいき、英語: zone of abnormal seismic intensityまたは英語: zone of anomalous seismic intensity)は、通常ならば震源地(震央)で最も大きくなり、中心から同心円状に広がりながら小さくなるはずの地震で観測される震度(あるいは加速度)が、通常とは異なる傾向を示す現象、また、そうした震度分布がみられた地域のことである。
解説

震源地より遠く離れた所で異常に震度が高くなる現象である。かつて地中に地震が伝わる特別な抜け道があると考えられ、地震みち(じしんみち)と呼ばれていた[1]。1920年代には異常震域という用語が用いられるようになった[2]

異常震域が現れる原因は、

その周辺地域の地盤の状態が異なるため(軟弱な地盤と地震波の反射、回折など)

上部マントルの地震波速度構造の違い[3]で、減衰度合いが経路上の構造によって異なるため(構造線やプレート境界、マントルをまたぐなど)

によるものの2つに分けられる。前者と比較して後者のほうが広い範囲で大きな震度が観測され、地震学の用語としては、異常震域は後者を指すことが多い[4][5]

後者の例として、太平洋プレート中で発生した2007年7月16日の京都沖日本海の深発地震では、京都や、プレート境界をまたいだ中京関西地方や中部地方での揺れは小さかった一方、距離的には遠い北海道で大きな揺れを観測した。

着達する地震振幅は距離に反比例して、また着達までの時間には指数関数的に小さくなる[6]。地下のマグマ中を進む地震波の速度は非常に遅く、このため火山地下のマグマ溜まりをまたぐ震源では減衰して地震動が小さくなるということも起こりうる。

逆に、オホーツク海での深発地震や十勝沖から千島列島沖の太平洋プレート中で発生する地震では、北海道・東北地方の日本海側や新潟県より北海道・東北地方の太平洋側、関東地方で大きな揺れを観測する場合もある。東北地方の日本海側や新潟県での揺れが小さくなる理由は、東北地方の中央部に南北に連なる火山が影響しており、地下のマグマ溜まりにより地震波が減衰しているためと考えられている。
地盤の状態による例

地盤が弱い地域の場合、大きい震度が観測される。深発地震での例も参照。
豊岡市(兵庫県)
豊岡(気象庁の観測地点)は、最大有感距離地点(震度1以上が観測される最も震源からの距離が遠い地点)となることがある。兵庫県南部地震(1995年)等において、震源距離が近い大阪姫路よりも大きい震度が観測されている(豊岡:震度5、大阪・姫路:震度4)。千島列島沖地震では最大有感距離地点(震度1)を観測した。2011年4月は東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の余震活動などで4回震度1が観測され、4月7日の宮城県沖地震(深さ66km、M7.2)や4月16日に栃木県宇都宮市で震度5弱を観測した地震(深さ79km、M5.9)は深発地震に起因するものだった。また、2016年の熊本地震の活動でも、震度1以上を6回観測した[7]
諏訪盆地周辺(長野県)
諏訪盆地周辺は、諏訪湖の堆積層のため、地盤の弱い地域である。このため、周辺の松本盆地松本市塩尻市など)や伊那谷北部(伊那市など)に比べ、大きい震度が観測されることが多い。
宮代町笠原(埼玉県)
埼玉県が宮代町役場に設置した震度計の観測地点名「宮代町笠原」は、東北・関東の太平洋海底を震源とする地震で埼玉県内最大震度が観測されることが多い。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、埼玉県で震度入電のある観測点の中で最大の「震度6弱」が観測されている。
会津若松市(福島県)
東日本大震災発生前では、2006年10月14日に福島沖で発生した地震で最大の震度3が観測されている。福島県のほかの観測点では震度2か震度1だった[8]。また、2008年7月21日に発生した福島沖の地震でも、浜通りの葛尾村とともに震度4を観測した。
中山町長崎(山形県)
最上川須川の合流地点付近に位置するため、地盤が周囲に比べ貧弱であり、2011年3月11日の東日本大震災では震度5強を観測した[9][10]
二宮町(神奈川県)
地震計が設置してある消防署(中里地区に所在)は、周辺の田畑を区画整理し造成した住宅地の一角にあり、そのため地盤が弱いとされていた[11]。2015年5月30日の小笠原諸島西方沖地震(深さ682km)では震度5強を観測したが、隣接する大磯町では観測された震度は4だった。この地震では、上述の埼玉県宮代町も震度5弱を観測している。東日本大震災の本震でも震度5強を観測したほか、前震でも震度3を観測している。
輪島市門前町(石川県)
2012年2月8日の佐渡島の地震(M5.7)や2017年6月25日の長野県南部の地震(M5.6)で震度4を観測した。同じく石川県能登地方の「穴水町大町」については、設置環境に問題があるとして2011年8月2日に震度計の切り替えが行われたが、この問題を気象庁が6年以上にわたって放置していた[12]


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