原級留置(げんきゅうりゅうち)とは、学校に在籍している児童・生徒・学生(在学生)が、何らかの理由で進級しないで同じ学年を繰り返して履修すること。俗に落第や留年とも呼ばれる。 落第や留年に対する公式の表現で、在学生に対しこうした処分を課すことを原級留置処置、原級留め置き、または留級と表記される場合もある。対義語は、「及第」・「通常の進級」である。 類似のケースに当たるものに小学校就学を標準よりも遅らせる「就学猶予」、学校卒業後の上級学校への進学時に期間が空く「過年度進学」がある。また、東京大学教養前期課程においては、進学選択で3年生からの所属先が決まらない場合に、学年の途中で2年生から1年生となる「降年」という制度が行われている。 原級留置の扱いは国によっても初等教育・中等教育・高等教育の段階によっても異なる。 特に初等教育や中等教育では、課程主義をとっていて留年率の高い国(フランス、ドイツ、フィンランドなど)もあれば、制度上・理論上は留年となりうるが実態上は留年がない国(イギリスや日本など)もある[1]。 原級留置の処置にされるケースには以下のような場合がある。 日本の大多数は6歳で就学し、15歳で中学校を卒業するということが常態になっている[2]が、学校教育法は諸学校の在学年齢/卒業年齢に上限を設けないため、実務上は高年齢児童生徒の学年に飛び級ができる。 なお、認定こども園を含む幼稚園、義務教育期間の9年間を学修する小学校、中学校等の学齢期(15歳以下)の学校である前期中等教育では年齢相当の学年を履修しなくても所属しうる最高学年に編入学できるが、高等学校、高等専門学校、大学などの後期中等教育以降では同等の教育機関で履修したことがない限り、最初から履修する必要がある。 高等学校以上の課程では留年可能回数の上限や在学可能期限の上限を設ける場合もあるが、大学院修士課程のような極めて厳格な校則だと「一度たりとも留年を認めず、即退学とする」場合もあり、続いて「留年は1度だけ認めるが、2度目の留年が決定した場合は即退学とする」場合もある。 公式用語は「原級留置」 「原級」は明治時代の等級制の名残であり、学年制では「原学年留置」となるが、慣例的に原級留置の語が使われている。 しかし、「留置」という言葉は勾留施設でもある留置場を連想させるとして、戦前は「原級据え置き」と表記したり、現在でも「げんきゅうとめおき」「原級留め置き」と表記もする人もいる。 後期中等教育(高等学校と中等教育学校後期課程以降)以降での原級留置数は公表されているが、小中学校については統計が公表されていない。 教育委員会規則において公立小中学校の「校長は、児童又は生徒を原級留置したときは、速やかに教育長に報告しなければならない」と定められる場合があり、学齢超過の人数については在学者と年齢を区分した国勢調査[3]で知ることができる(詳細は「年齢主義と課程主義」)。 日本の学校制度では、大部分の公立小学校・中学校の学年は年齢主義を取っており、就学猶予者、帰国子女などの特段な事情がある場合を除き、年齢によって所属する学年が決められる運用がされている。学校教育法施行規則では小中学校の各学年の修了や卒業は児童生徒の「平素の成績」を評価して認定するよう定めており、児童生徒の成績不良を理由に校長の判断で原級留置させることも可能であり[4]、学年末には「進級判定会議」「卒業判定会議」が存在する。 かつては、病気療養等を理由とする長期欠席による原級留置が公立小中学校における学校判断である程度見られた。これは1953年(昭和28年)に兵庫県教育委員会教育長の照会に対し、文部省(中央省庁再編後の文部科学省)初等中等教育局長が「一般的にいって、第3学年の総授業時数の半分以上も欠席した生徒については、特別の事情のない限り、卒業の認定が与えられないのが普通であろう」と回答しており(s:課程の修了又は卒業の認定等について 一方、平成時代の1990年代に入って長期欠席児童生徒が急増し、1990年代以降は児童生徒の保護者が強く希望した場合に原級留置が僅かに取られる程度となり、前述の文部省通知は事実上効力を失いつつあり、公立小学校・中学校において成績不良や出席日数未達であっても進級・卒業をさせる運用をしている。
概要
学校制度上の原級留置「年齢主義と課程主義」を参照
当人の責めに帰すべき事由の場合
成績の不良。
不登校や当人の不祥事による謹慎・停学などにより、出席日数
私生活面においてだらしない(遅刻が多過ぎる、授業中寝ている、課題のレポート未提出など)。
その他児童・生徒・学生としてふさわしくない行為があった場合。
当人の責めに帰さない事由の場合
事故や病気、障害などにより長期の入院や加療を要する場合。
休学(海外留学などの場合)。
その他、本人が希望する場合(一部の大学では延長して在籍が認められている)。
日本の学校制度
公的な表記
実態と統計
小学校・中学校「義務教育#日本における義務教育」も参照