町内会
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町内会(ちょうないかい)とは、日本集落又は都市の一部分(内)において、その区域についての親睦、共通の利益の促進、地域自治などのために、住民等によって組織されている地縁に基づく団体、およびその集会・会合のことである。民間組織であり、中には法人化法人格を取得)しているものもある。なお、住民らの利益集団としての性質もある。

自治会、町会など様々な名称で存在しているが、本項では「町内会等」と記載する。
呼称

2003年(平成15年)に総務省が行った調査では、町内会等の名称としては「自治会」(じちかい)[1]が42.8 %でもっとも多く、次いで「町内会」(ちょうないかい)が24.6 %となっている。組織の呼称は多い順に次の通り。
自治会

町内会

町会(ちょうかい)[2][注釈 1]

部落会(ぶらくかい)[3][注釈 2]

区会(くかい)[4][注釈 3]

区(く)[5][注釈 4][6]

地域振興会(ちいきしんこうかい)[7]

常会(じょうかい)[8]

地域会(ちいきかい)[注釈 5]

地区会(ちくかい)[注釈 6]

その他の呼称は次の通り。

集落会(しゅうらくかい)

地区振興会(ちくしんこうかい)

下部組織

また、各組織をさらに細かく分けた単位に次の呼称が付けられていることがある。

組(くみ)

班(はん)

支部(しぶ)

隣保(りんぽ)

連合組織

各町内会組織は複数の組織で連合を結成している場合がある。その主な呼称は次の通り。◯◯には自治会・町内会などの呼称が入る。

◯◯連合会

地区会

連合◯◯

◯◯連合会

概説
定義・特徴

中田実は、町内会等の基本的な特徴として次の5点を挙げる。[9]
一定の地域区画をもち、その区画が相互に重なり合わない。

世帯を単位として構成される。

原則として全世帯(戸)加入の考え方に立つ。

地域の諸課題に包括的に関与する。

それらの結果として、行政や外部の第三者にたいして地域を代表する組織となる。

判例では「町内会は、自治会とも言われ、一定地域に居住する住民等を会員として、会員相互の親睦を図り、会員福祉の増進に努力し、関係官公署各種団体との協力推進等を行うことを目的として設立された任意の団体」と定義している(東京簡易裁判所判決平成19年8月7日、平成18年(ハ)第20200号)。
名称・規模

町内会等の名称について決まった原則はなく、○○町会、○○自治会、○○マンション・アパート等の自治会(主にアパートマンションに多い。)と称するものや単に○○会と称するものも存在する。多くの組織の場合、「○○」の部分には「地名あるいは住居表示の名称」をそのまま表示するが、地域の自然環境や地理特性、シンボルを名称に取りいれているものや住居名(マンション名)・開発業者の社名を組織名に取り入れているものもある。

町内会等の範囲は、多くの場合伝統的な地域や集落と一致しているが、戦後昭和期に開発された地域においては、造成が行われるたびに開発区域(マンション)を単位とした町内会等が新たに設立されてきた経緯もあり、地理的な生活圏域より細分化されている場合がある。

それぞれの町内会等は、近接の別の町内会等と共同で「町内会連合会」「連合町内会」「連区(愛知県豊川市など)」などと呼ばれる連合体を組織していたり、「地区」「行政区」あるいは京都の学区などの上位地域区分を持っていたりする場合がある。これらの上位団体に対して個別の町内会等を指す呼称として「単位町内会(等)」と呼ぶことがある。
組織

認可地縁団体の場合、地方自治法第260条の5の規定により1名の代表者(しばしば「会長」と呼ばれる。)を置く義務がある。また、同260条の11の規定により、任意で監事を設置する。

任意団体の場合も、上記の「会長」のほか、「副会長(助役)」、「会計(収入役)」、「総務(事務長)」といった役職が置かれ、これらを「役員」と総称する。実務的事項については「役員会」などと呼ばれる寄合で決定されることもある。また、特定の活動分野について「部」などといった下部組織が設置され、部長などの役職が置かれることもある。部は「老人部」「女性部」「青年部」といった構成員の種類によることもあり、「防犯部」「育成部」「文化部」といった活動種類によることもある。

認可地縁団体の場合、地方自治法第260条の2第2項の規定により団体の規約(しばしば「会則」とも呼ばれる。)を定める義務がある。任意団体の場合も、多くの場合規約を定めている。

町内会等の重要事項は、会員である住民の世帯主が全員参加する総会で決定される。認可地縁団体の場合、地方自治法第260条の13の規定により、年1回の通常総会の開催が義務づけられているが、任意団体の場合も、多くの場合年1回開催である。一般に総会への参加意欲は低調で、総会委任、一部構成員のみの参加が常態化しているところもある。

構成員が多い町内会等或いは「隣組」の名残により、区域をさらに細分化した「組(班)」を設置し、「組(班)長」といった役職を置く事がある。組はしばしば町内会等や行政からの通達指示事項を伝達する最小組織となり、伝達方法として「回覧板」と呼ばれる古風な連絡手法が用いられている。集合住宅が組の単位となる場合、貸主や管理人が組長を務める慣例となっていることもある。

役員や他の役職の人選は互選によることが多いが、定年退職した男性による持ち回りが慣例化していたり、代わる人員がいないために、同一人物が相当高齢になるまで就任していることも多い。
財務

町内会等の財務について明確なルールはないが(認可地縁団体の場合、財産目録の整備のみは義務づけられている。)、市区町村の補助金・助成金に関する手続きを行う便宜から、ほとんどすべての場合、公会計と全く同様の3月末を決算期とした現金主義会計により経理されている。

収入は、基本的には「会費」と呼ばれる加入者からの負担金のほか、行政からの補助金・委託費、バザー縁日の売上、各種の寄付金(協力金・協賛金などという名称もしばしば用いられる。)などで賄われる。

会費は、持ち家の有無など外形的な世帯特徴により所得水準を判断し、累進的に会費の額を設定した「見立て割」がしばしば用いられるが、昭和期の総中流化により、画一の会費とする場合も増加した。[10]
役割

町内会等の活動内容は、地域性・歴史性によって大きく異なる。平成18年度国民生活モニター調査「町内会・自治会等の地域のつながりに関する調査」においては、実施している割合の上位から
行事案内、会報配布等の住民相互の連絡

市区町村からの情報の連絡

盆踊り・お祭り

街灯の管理

行政への陳情・要望

といった活動を行っていた。

一方で、戦後昭和期(1968年)の「住民自治組織に関する世論調査」では
募金(の協力)

市(町村)と住民の連絡

消毒

運動会、レクリェーション、旅行

街灯管理

となっており、時代による変遷が見られる。

以下、町内会等の活動のうち主なもののみ挙げる。
冠婚葬祭・親睦一般的な会館。小会議室や炊事場のほか、広い座敷部屋を備えているのが通例。

住民の結婚式葬式があった際には、町内会等が人員を動員し式の運営や炊き出しを行う。また、住民同士の親睦活動として新年会などの各種の親睦、運動会などの体育活動、歌謡・舞踊・演芸などの文化活動を行う。

これらの活動については、町内会等と別に老人会婦人会青年団子供会といった世代別団体が担っていることもあるが、町内会等の役員が充て職となっていたり、町内会等の加入者が当然に加入することになっているなど、実質的に一体化していることも少なくない。

活動を行うための場所として、戦後昭和期には「会館」あるいは「集会所」「地域公民館」などと呼ばれる集会施設が多く建設された。これらは、町内会等が自主的に整備する場合もあり、行政主導で整備する場合もあった。また、土地区画整理事業都市再開発事業などの一環として、実質的に開発区域の町内会等が使用する集会施設として整備されることもあった。また、マンションを単位とした町内会等においては、規約共用部分として設置された集会施設がこの役割を果たすこともあった。

平成期以降は結婚式場や葬儀場の普及により、集会施設の果たす役割は急速に縮小し、総会・役員会や文化サークル活動での使用に限られている。
祭礼「町内神輿」が集合し、松原神社 (小田原市)に向かう様子

地域で伝統的に行われてきた祭礼の運営や補助、あるいは寺社や境内地の清掃や修繕などの維持管理を行う。一般的には鎮守神を祭る神社の祭礼が対象であるが、一向宗が盛んな北陸地方における報恩講のように寺院が行う祭礼が対象となることもなる。

これらの活動については、町内会等と別に氏子会や檀家会といった信徒による団体が担っていることもあるが、町内会等の役員が充て職となっていたり、町内会等の加入者が当然に加入することになっているなど、実質的に一体化していることも少なくない。

大規模な祭礼の場合は、町内会等単位で神輿などの祭具を所有したり、別々に行列や神楽を行うこともあった。いわゆる「喧嘩祭り」においては、しばしば町内会等を単位として闘争が行われ、地域同士の械闘に発展することもある。


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