田沢疏水
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「昭和の大合併」以前の仙北郡 1.大曲町、2.神宮寺町北楢岡村ふくむ)、3.刈和野町峰吉川村ふくむ)、4.角館町、5.六郷町、6.金沢町、7.花館村、8.淀川村、9.荒川村、10.土川村、11.大沢郷村、12.強首村、13.南楢岡村、14.内小友村、15.外小友村、16.大川西根村、17.藤木村、18.高梨村、19.四ツ屋村、20.長野町、21.神代村、22.生保内町、23.田沢村、24.檜木内村、25.西明寺村、26.中川村、27.雲沢村、28.清水村、29.白岩村、30.豊川村、31.豊岡村、32.横沢村、33.長信田村、34.千屋村、35.横堀村、36.畑屋村、37.飯詰村、38.金沢西根村 着色は現在の市町域(紫:大仙市、桃:仙北市、水色:横手市、赤:美郷町

田沢疏水(たざわそすい)は、秋田県南東部に広がる仙北平野を南北に流れる農業用水路である。

2006年(平成18年)2月3日に「疏水百選」に選ばれている。受益面積は約3,890haである[1]仙北平野(横手盆地北部)地形図 南北に連なる急峻な奥羽山脈(東)と低平な仙北平野(中央)のあいだには、山脈から西へ向かって流れる小河川の堆積作用により大小の扇状地が形成されている。右側上方(北東)にみえる青色部分が田沢湖。その南側の山間地に疏水の取水口である神代調整池が確認できる。
立地と地域概況

横手盆地の北半を占める通称「仙北平野」は、北流する雄物川およびその支流で南西に向かって流れる玉川の流域に相当し、これらに注ぐ斉藤川・斉内川・丸子川出川などの小河川はさらに多くの支流を集めて東の奥羽山脈から西に向かって流れている[2]。これら小河川の堆積作用によって、山脈の西麓(盆地東縁部)には六郷扇状地や千屋扇状地をはじめとする多数の複合扇状地が発達しており、その扇端部には長野豊川清水横沢三本扇・横堀高梨千屋本堂城廻・畑屋六郷飯詰など、伏流水の湧き出る湧水地帯が南北に連なり、扇端部およびその西方の後背湿地は古くから美田の広がる「米どころ」として知られてきた[注釈 1]。とくに六郷湧水群は、古来「百清水」と称され、昭和60年(1985年)には「名水百選」にも選定された湧水の多いところで、伝統的に日本酒醸造業や清涼飲料水の製造がさかんな地である。一方、谷口にあたる扇状地扇頂部ではこれら小河川の水を灌漑用水として使用してきた。

しかし、扇頂部と扇端部の中間に広がる扇央部の伏流水地帯(神代村真崎野、豊岡村の柏木野・木内林、長信田村の田屋野・小曽野・千本野、横沢村の駒場野、千屋村の若林野、金沢町から六郷町六郷東根にかけての明天地野の各地域)は、地表面では水無川となっていて水が得にくいうえに、土壌は砂礫層が卓越して保水力に乏しいため稲作には向かず、林地牧草地畑地道路、また明治以降は桑畑などとして用いられてきた[3]。このうち、林地は木炭の一大産地であり、かつては燃料資源において重要な位置を占めており、農家の冬期間の副業として炭焼きがさかんにおこなわれていた[注釈 2]野ツツジアカマツスギの広がる原生林も広大な面積を占めた[4]。牧草地は、主として産のために活用され、農耕馬軍馬供給した。仙北郡中西部の神宮寺町笹倉には国立の種馬所があり、南端の飯詰村山本には江畑新之助が建設した後三年競馬場があった[注釈 3]

養蚕もまた、戦前の地域経済を支えた。初代六郷町長を務めた畠山久左衛門は、当地の養蚕業の発展に尽力した人物として知られている[5]
沿革
前史
上堰・下堰・御堰の建設「下堰」掘削時に出土した国宝の「線刻千手観音等鏡像」(大仙市豊川の水神社所蔵)

仙北平野東部の奥羽山脈西麓地域における未墾地開拓の歴史はきわめて古く、江戸時代前・中期にさかのぼる[6][7]。扇央部に広がる原野・採草地は、水量豊富な玉川の水を利用して開墾が進められた[7]。玉川に取水した当時の主要な用水路としては上堰(白岩豊岡横沢)、下堰(白岩・豊川・横沢)があり、さらに四ケ村堰(豊川)、若松堰(神代)、黒倉堰(白岩・神代)、鶯野堰(長野)、高瀬堰(四ツ屋花館)、松倉堰(四ツ谷、神宮寺)などがあった[7][注釈 4]。ただし、これらは主として扇端部の灌漑には利用されたものの、扇頂部や扇央部の砂礫地のほとんどは依然放置されたままであった[7]

この扇央部の山林原野を開墾することは藩政期を通じての念願であった[7]。「上堰」完成から約130年後の文政7年(1824年)、ようやく久保田藩の藩主佐竹氏が開墾事業に乗り出した[6][8]。これは、角館蘆名氏の遺臣蓮沼仲の進言と計画によるもので、藩主佐竹義厚による裁可のもと藩営事業として「上堰」の東側に白岩から六郷まで約33キロメートルにおよぶ用水路「御堰(おせき)」を建設し新田開発と古田の補給水として利用しようというものである[6][7][8][注釈 5][注釈 6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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