用水路
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「井手」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「井手 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
町中に敷設された用水路(兵庫県西脇市稲作などの灌漑農業に欠かせない農業用水路。を引き込む際に使う水門も設けられている。また、日本では水田と一体で生態系も築かれている。写真は富山県南砺市

用水路(ようすいろ)は、農業灌漑上水道工業用水道などのためにを引く目的で造られた水路である。名称に井路(いろ、せいろ、いじ)、分水(ぶんすい)、疏水(そすい)がつくことがあり、地下を抜ける暗渠は水路隧道などとも呼ばれる。流れがあればマイクロ水力発電もできる。
概要日本最古の農業用水路「裂田の溝

農業(灌漑)、工業水道飲料水を含む生活用水や消防)、水車や水力発電の動力など、主に人間の経済活動に用いるための水を用水(ようすい)と呼ぶ。この用水を河川ため池湧水などの水源から離れた場所に引くために人工的に造られた水路が用水路である。日本では、個々の名称として「?用水」と呼ばれる用水路が各地にあり(「日本の用水路一覧」を参照)日本語では「用水」「用水路」を厳密に区別せずに用いることが多い。また、疏水(そすい)とも呼ばれ、2006年(平成18年)2月3日には、農林水産省が日本の農業を支えてきた代表的な用水を「疏水百選」として選定している。

水路を設けたり、そこに水を流したり、水の配分を決めたりすることを分水と呼ぶ。

なお、専ら水運用に使われる水路は運河と呼ばれ、または専ら排水が目的の水路は放水路と呼ばれる。これらは通常は用水路に含まない。

ただし、かつては上記の目的で造られた用水路も、時代の流れに伴う流域住民の生活の変遷により、用途の変更や、役目を終えて埋められたものも存在する。また、用水路としての役目に代わって、現在は流域住民の憩いの場として機能している場合もあり(「親水」を参照)、水路の呼び名は個別の事情や歴史的経緯に依るところが大きい。

また、コンクリートの普及や土木技術の進展により、堤防ダムの建設が相次ぐとともに、既存の用水路もコンクリート護岸化が進められるなど、治水利水を兼ねた各種の改修が進められる。
構造
日本の農業用水路

田へ水を入れている様子。用水路と田の間にはが設けられている(写真ではの下に埋め込まれている)。樋に水を送り込むため、堰板を入れて用水路の水位を上げている。これにより特段の動力を用いることなく田への導水ができる。

農作物の生育に必要な水を河川、ため池などの湖沼、湧水や井戸から田畑に供給する役割を担う。長野県北信地方では、稲作には冷たすぎる雪解け水を温めるため、幅が広くて水深が浅い水路(ぬるめ)を整備している[1]。地表に水路を開削するほか、江戸時代でもトンネル式の横井戸が掘られた地区もある(鈴鹿山脈東麓では「まんぼ」と呼ばれる)[2]

なお、同じ江戸時代に造られたトンネル式用水路の例としては、山梨県南都留郡富士河口湖町船津と富士吉田市新倉字出口を結ぶ新倉掘抜が知られ、これは農業用水として河口湖の湖水を船津側から富士吉田側に供給するために山の下を貫通させて約170年かけて掘られたもので、全長3.8キロメートルを測る日本最長の手掘りトンネルと言われる[3](富士河口湖町・富士吉田市それぞれの指定史跡[4][5])。

一般に、水田と用水路の間には(とい)が渡してあり、水田と用水路がつながっている。また用水路は水田とほぼ同じ高さで設けられる。用水路から離れた場所にある田については、用水路との間をつなぐ溝が掘られており、これが用水路兼排水路として使われる。

引水時は、用水路に堰板を入れるなどして水位を上げ、樋を開けて自然流入により田へ水を流し込む。その後は堰板を樋に入れ、田と水路を分断する。排水時にはまた樋を開け、高低差により排出する。これにより、別段の動力を用いることなく給排水が可能になっており、起伏に富んだ日本の地形を活かした仕組みになっている。

近代以降に改良された用水路では、堰板の代わりに水門が設けられている場合もあるが、取水・排水の仕組みは同様である。また用水路との間に高低差がある場合や、地下水を用いる場合などで、水車ポンプなどを用いて水を汲み上げる場合もあり、この場合は自然流入ではなく動力が必要になる。

なお、日本の一般的な水田においては、春から梅雨の頃に田に水を入れ、夏には一旦水を引く(これを中干しという)。水田や農業用水が河川・湖沼とつながっている場合、この時期に合わせて春に田へ入り産卵し、稚魚は田で産まれ育ち、排水とともに用水路に戻って、用水路の底で冬眠するドジョウなどの生きものが存在し、水田の生態系の一端を形成している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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