産業医
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産業医(さんぎょうい、(: occupational health physician)は、企業等において労働者健康管理等を行う医師である。

日本においては、1972年(昭和47年)の労働安全衛生法施行時に従来の「医師である衛生管理者」について、専門医学的立場で労働衛生を遂行する者であることを明確にするためにその呼称を改め、専門家として労働者の健康管理にあたることとしたものである(昭和47年9月18日基発602号)[1]。同法等により、一定規模以上の事業場には産業医の選任が義務付けられる[1]。なお国家公務員においては労働安全衛生法が適用されないため、代わりに健康管理医が配置される。

労働安全衛生法について、以下では条数のみ記す。
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

労働安全衛生法 第13条 (産業医等)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。

産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

産業医は、医師であり、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について、以下の要件のいずれかを備えた者でなければならない(第13条2項、規則第14条2項)。
労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限る)が行うものを修了した者

「研修」について、告示(最終改正平成29年厚生労働省告示第97号)によって研修科目の範囲、履修方法及び時間が定められ、現在日本医師会[1]産業医科大学が産業医の認定を行っている[2]


産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修め、卒業した者であり、その大学が行う実習を履修した者

労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授准教授又は講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、又はあった者

その他厚生労働大臣が定める者

産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づき、誠実にその職務を行わなければならない(第13条3項)。産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければならない(規則第14条7項)。
選任

事業者は、すべての業種において、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに1人以上の産業医を選任しなければならない。事業者は、産業医を選任すべき事由が発生した日[3]から14日以内に選任しなければならず、選任したときは遅滞なく選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない(規則第13条1項1号)(学校保健安全法の規定により任命・委嘱された学校医の場合は選任報告書の提出は不要)。事業者は、産業医を選任することができないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは、これらの規定によらないことができるが(規則第13条3項)、許可の実例は近年は毎年一桁の件数である[4]。安全衛生管理に係る他職とは異なり、行政官庁による監督に関する規定はない。

常時3000人を超える労働者を使用する事業場においては、2人以上の産業医を選任しなければならない(規則第13条1項4号)[5]

以下の事業場については、産業医はその事業場に専属の者でなければならない(規則第13条1項3号)。
常時1000人以上の労働者を使用する事業場

以下の有害業務に常時500人以上の労働者を使用する事業場

多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

ラジウム放射線X線その他の有害放射線にさらされる業務

土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

異常気圧下における業務

さく岩機、打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務

重量物の取扱い等重激な業務

ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

坑内における業務

深夜業を含む業務

水銀砒素黄リン、弗化水素酸、塩酸硝酸硫酸青酸、苛性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

、水銀、クロム、砒素、黄リン、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

病原体によって汚染のおそれが著しい業務

その他厚生労働大臣が定める業務

また、医師であっても以下の者は産業医として選任できない(規則第13条1項2号)。平成29年の改正規則施行までは産業医の事業場内での役職について特に制限する規定がなかったため、企業の代表取締役医療法人の理事長、病院の院長等が産業医を兼務している事例がみられるところであったが、労働者の健康管理は一定の費用を伴うものであるため、以下の者が産業医を兼務した場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、産業医としての職務が適切に遂行されないおそれが考えられるためである。

法人の代表者

事業を営む個人(事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)

事業場においてその事業の実施を統括管理する者

産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項で厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない(第102条2項)[6]。「厚生労働省令で定めるもの」とは、以下の事項である(規則第98条の2第2項)。

事業場における産業医(第13条の2に規定する者を含む)の業務の具体的な内容

産業医に対する健康相談の申出の方法

産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法

事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なくその旨・その理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない(規則第13条4項)。

産業医の選任・職務義務違反をした者は、50万円以下の罰金に処せられる(第120条)。

産業医の選任義務のない事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)では、事業者は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師・保健師に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない(第13条の2、規則第15条の2)[7]。この規定により医師等に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるに当たっては、産業医の選任、国が第19条の3の規定により援助として行う労働者の健康管理等に係る業務についての相談その他の必要な援助の事業の利用等に努めるものとされ(規則第15条の2第2項) 該当する事業場は、都道府県ごとに設置される地域産業保健センターが利用でき、医師等が原則無料で相談等に応じている。
職務

事業者は、産業医に労働者の健康管理等を行わせなければならない(第13条1項)。 具体的職務としては次の事項で医学に関する専門的知識を必要とするものである(規則第14条1項)。
健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置

これは必ずしも産業医自らが健康診断を行わなければならないということを義務付けているものではないが、産業医の選任義務のある事業場においては、事業者は、当該事業場の労働者の健康管理を担当する産業医に対して、健康診断の計画や実施上の注意等について助言を求めることが必要である(「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」平成8年10月1日健康診断結果措置指針公示第1号、最終改正平成29年4月14日公示第9号)。


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