産業スパイ(さんぎょうスパイ、英: industrial espionage)、経済スパイ(けいざいスパイ、economic espionage)、または、企業スパイ(きぎょうスパイ、corporate spying、corporate espionage)とは、純粋な国家安全保障の目的で行われる活動とは異なり、商業的な目的で行われる諜報活動である[1]。
経済スパイは政府により指揮または編成され、国際的な範囲での活動であることに対し、産業スパイや企業スパイは、その多くが国内単位で発生し、会社や企業間で行われる[2]。 経済スパイや産業スパイ活動の目的は、端的にはターゲットとする組織などの情報を収集することである。収集する情報には、工業生産に係るアイデア、技術、プロセス、レシピや製法といった知的財産に関する情報、または、顧客情報のリスト、価格設定、研究調査、入札予定の情報や、企画、マーケティングに関する情報、製品の構成や生産工場といった、企業が占有している情報や運営に係る情報が含まれる[3]。また、トレードシークレットの窃盗、賄賂や脅迫、テクノロジーによる監視といった活動を指すこともある。こうしたスパイ行為は、営利企業に対するものだけでなく、政府契約の入札の情報を収集する目的などで、政府をターゲットとすることもある。 経済スパイや産業スパイは、コンピュータソフトウェア、ハードウェア、生物工学、航空宇宙、通信、輸送とエンジン技術、自動車、工作機械、電気事業、材料工学とコーティングなど、テクノロジーに関連した産業で最も一般的である。シリコンバレーが、スパイ活動が最も盛んな地域として知られているが、競合する企業に関する有用な情報を持つあらゆる産業がターゲットとなる可能性がある[5]。 情報は市場における成否を握る。つまり、自社のトレードシークレットが盗まれれば、その競争条件は同等、または、競合他社が有利となることもある。多くの場合、情報収集はコンペティティブ・インテリジェンス
スパイ活動の形態
ターゲットとなる産業競合他社にデザインを盗まれないため、車体にカモフラージュが施された車輌[4]。
情報の盗用と妨害行為
近年、経済スパイや産業スパイの定義は拡大している。例えば、企業への妨害工作も産業スパイと見做されることがあり、もともとの産業スパイ持つ意味合いから、広義に解釈されるようになった。スパイ活動と破壊活動における、明確な相互作用は、いくつかの政府、企業によるプロファイリング研究でも実証されている。アメリカ合衆国政府では、現在「Test of Espionage and Sabotage(TES)」(→スパイ活動と破壊活動のテスト)というポリグラフ検査が行われており、スパイ活動と破壊活動対策の相互関係の考え方に寄与している[7]。 経済スパイや産業スパイは主に2つの目的により発生する。1つは、会社に不満を持つ従業員による、金銭目的、または、会社に損害を与える目的で行われる情報の持ち出し、もう1つは、競合他社や外国政府による、技術的、財政的利益追求の情報収集である[8]。「モグラ (英: Mole)」つまり信頼できる内部関係者は、一般的に、産業スパイや経済スパイの最良の情報源であると考えられている[9]。歴史的に"patsy"(→カモ)と呼称される内部関係者は、自発的、または強要により、情報提供を誘導される。patsyは、最初に些末な情報の引き渡しを要求され、一度でも情報漏えいの不法行為に手を染めると、より機密性の高い情報を引き渡すように脅迫が行われる[10]。個人で行われる場合、別の会社への転職に合わせて、機密情報を持ち出すこともある[11]。このような明確なスパイ行為は、数多くの産業スパイ事件で注目され、法廷闘争を引き起こしている[11]。 スパイ活動に自国の諜報機関を用いず、一個人を雇う国もある[12]。
情報収集のプロセス