この項目では、生きているもの全般を指す概念について説明しています。なまものと読むときの概念については「生鮮食品」を、星野源の楽曲については「生命体 (曲)」をご覧ください。
生物(せいぶつ、英: life、独: Organismus、Lebewesen[1][2])は、無生物と区別される属性、つまり「生命」を備えているものの総称。そしてその「生命」とは、生物の本質的属性として生命観によって抽象されるものであり、その定義はなかなか難しいものとなっている[3]。生き物(いきもの)とも。
定義ウイルスが生物なのか非生物なのか、生命を持つのか持たないか、については議論がある。(左)正二十面体様 (中)らせん構造 (右)無人探査機のような形状のファージビフィズス菌発芽したひまわり
「生命現象を示すもの」[1]というのが一応の定義であるが、これ以外の定義も存在し、統一は困難であるとされる[4]。生物が持ち、無生物が持たない能力や特徴としては「自己増殖能力」「エネルギー変換能力」「自己と外界との明確な隔離」が挙げられ、これに「進化する能力」を加えることも多い[5]。また、生物は外界とのやりとりを絶やすことのない開放系を取りながら、恒常性(ホメオスタシス)を維持する能力を持ち、常に変化する[6]。生物はすべて細胞を基礎としており、細胞によって構成されていないウイルスなども寄生する細胞がなくては増殖できない[7]。
動物・菌類・植物・原生生物・古細菌・細菌などの総称。多くの場合ウイルスを含めない[8]が、立場によっては含めることもある[9][10]。なお、『岩波生物学辞典』ではウイルスは生物であるか断言できないとしている[11]。
生物の分類詳細は「生物の分類」を参照
現在生きている生物は少なくとも300万種、おそらくは1000万種に達する[12]が、これらをその特徴に応じて大小の分類階級に所属させ、それによって生物を整理し秩序を与えることを分類という[13]。分類階級のうち、次に掲げるものは必ず設置される(基本分類階級)。すなわち大きいほうから順に界、門、綱、目、科、属である[14]。
歴史的に最も古くは生物は植物と動物からなるとした二界説(植物界、動物界)[15]があり、その後の生物観の進展とともに、三界説、五界説、八界説[16]などが登場した。一般によく知られる五界説ではモネラ界、原生生物界、植物界、菌界、動物界に分類する[17]。しかし近年では分子系統学の成果を反映して、界よりさらに上位の枠組みとしてドメインが設けられており、細胞特性に従い生物全体を真核生物、細菌(バクテリア)、古細菌(アーキア)に分類する三ドメイン説が一般的になってきている[18]。三ドメイン説においては、動物、植物、菌類、原生生物はすべて真核生物という単一のドメインに属する。一方、モネラ界は細菌および古細菌という2つの大きなドメインに分割される。見た目の大きさという点では、細菌および古細菌はすべて微生物であるため、真核生物と違って日常で目にすることはまずないが、生態の多様さという点では細菌および古細菌ドメインは真核生物よりはるかに大きい。