琥珀
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「こはく」はこの項目へ転送されています。かつて運行していた列車については「八戸線」を、2019年公開の日本映画については「こはく (映画)」を、漫画『Dr.STONE』の登場人物については「Dr.STONE#石神村」をご覧ください。

琥珀
バルト海産の琥珀
分類有機鉱物
シュツルンツ分類10.C その他の有機鉱物
化学式主成分 C10H16O+(H2S)>
結晶系非晶質
へき開なし
断口貝殻状断口
モース硬度2 ? 2.5
光沢樹脂光沢無光沢
蜂蜜色白色黒色
条痕白色
密度1,05 ? 1,096(g/cm3)
光学性透明、半透明、不透明
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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琥珀のペンダント古代から続く琥珀の道(古代から琥珀市場が開かれていたポーランド、カリシュ市)2003年に再建された、サンクトペテルブルクエカテリーナ宮殿の「琥珀の間

琥珀(こはく)またはコハク(: Amber、アンバー)は、天然樹脂化石であり、宝石である。半化石の琥珀はコーパル(: Copal)、加熱圧縮成形した再生コハクはアンブロイド(: ambroid)という[1]

西洋でも東洋でも宝飾品として珍重されてきた。

鉱物に匹敵する硬度を持ち、色は飴色、黄色を帯びた茶色ないし黄金色に近い。
組成

琥珀は純物質ではないが、主成分は高分子イソプレノイドである。これは、樹液に含まれるテルペンが天然樹脂やその化石となる過程の高温・高圧の下で、酸化蒸発重合などの化学変化を起こし、その結果として生じた重合体である[2]

200℃以上に加熱すると、油状の琥珀油に分解され、さらに加熱を続けると黒色の残留物である「琥珀ヤニ、琥珀ピッチ」という液体になる[3]
名称

「琥」の文字は、中国において虎が死後に石になったものだと信じられていたことに由来する[4]。日本の産地である岩手県久慈市の方言では、「くんのこ(薫陸香)」と呼ばれる。

英名 amber はアラビア語: ????‎ (?anbar、龍涎香のような香りがするもの)に由来する。

古代ギリシアではエーレクトロン(古希: ?λεκτρον)と呼ばれる。意味は「太陽の輝き」という意味である[5]

英語で電気を意味する electricity は琥珀を擦ると静電気を生じることに由来している[6]

古代ローマでは、 electrum、sucinum (succinum)、glaesum、glesum[7]などと呼ばれていた[8]

ベルンシュタインドイツ語: Bernstein)はドイツ語で「燃える石」の意で、琥珀を指す。これは可燃性である石であることから名づけられた。
琥珀の利用
装飾

ネックレスペンダントネクタイピンボタンカフリンクス指輪などの装身具に利用されることが多い。人類における琥珀の利用は旧石器時代にまでさかのぼり、北海道の「湯の里4遺跡」、「柏台1遺跡」出土の琥珀玉(穴があり、加工されている)はいずれも2万年前の遺物とされ、アジア最古の出土(使用)例となっている[9](ゆえに真珠や翡翠と並び「人類が最初に使用した宝石」とも言われる[10])。また、ヴァイオリンの弓の高級なものでは、フロッグと呼ばれる部品に用いられることがある。宝石のトリートメントとして、小片を加熱圧縮形成したアンブロイド、熱や放射線等によって着色する処理も行われている。

ロシアの琥珀なら宝飾品に使われるのは三割程度と言われ、宝飾品にならない物が工業用として成分を抽出して使われる。
ニス

熱で融解した琥珀にテレビン油またはアマニ油を溶解させた場合は、「琥珀ニス、琥珀ラッカー」と呼ばれる状態になり、木材の表面保護と艶出しとして塗布される[3]
薬用

その他の利用法として、漢方医学で用いられることがあったという。

南北朝時代医学者陶弘景は、著書『名医別録』の中で、琥珀の効能について「一に去驚定神、二に活血散淤、三に利尿通淋」(精神を安定させ、滞る血液を流し、排尿障害を改善するとの意)と著している[4]

ポーランドグダンスク地方では琥珀を酒に浸し、琥珀を取り出して飲んでいる。
古生物学「アリ入り」琥珀

樹脂の粘性に囚われた小生物(ハエ、アリ、クモ、トカゲなど)や、毛や羽、植物の葉、古代の水や空気(気泡)が混入していることがある。特に虫を内包したものを一般に「虫入り琥珀」と呼ぶ。昆虫やクモ類などは、通常の化石と比較すると、はるかにきれいに保存されることから、化石資料としてきわめて有用である。

小説『ジュラシックパーク』のフィクションの設定は、琥珀内の蚊から恐竜の血とDNAを取り出して復元するというもので、作品発表当時のバイオテクノロジーで実際にシロアリでできたという事例がアイデア元となっている。ただし、数千万年前ともなると琥珀に閉じ込められた生体片のDNAを復元することは実際には不可能である[注 1]

市販の「虫入り琥珀」については、本物偽物も交えて、偽物には精巧稚拙いろいろある。年代の浅い生物入りのコーパルをあえて琥珀の名称で売っているもの、コーパルなどを溶解させ現生の昆虫の死骸などを封入した模造品、樹脂で作った偽物[12]、3Dプリント製[13]など。

ビルマ琥珀(英語版)は、ビルマ琥珀の古代生物相(英語版)などの古生物を内包した琥珀が発掘される。

Lebanese amber(英語版)

香料

特定の条件で琥珀を燃やした時に松木を燃やしたような香りがするが、近年の琥珀の香りと呼ばれるものは、人工的に再現された香が特許として取得され使用されている[14][15][16]

それとは別に、近年のアンバーと呼ばれる香には、アンバーグリスを再現したものも指している[17][18]。このアンバーグリスは、琥珀と同様に浜に打ち上げられたマッコウクジラ結石である。

琥珀と似たような香木には、同様に樹脂の化石である薫陸というのも存在するがコハク酸を含まない。
産地ポーランド、グダニスク琥珀製造業者組合のパレード

産地だけなら世界中にある。質と量が充実しているのはバルト海沿岸地域とドミニカ共和国。日本では岩手県久慈市で、質は良く、量は世界スケールで見れば少ない。

バルト海沿岸のプロイセンに相当する地域である、ポーランドポモージェ県グダニスク沿岸とロシア連邦カリーニングラード州が世界一の産地となっており、ポーランド・グダニスク沿岸とカリーニングラード州だけで世界の琥珀の85%を産出[19]し、その他でも、リトアニア共和国ラトビア共和国など大半がバルト海の南岸・東岸地域である。


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