珪藻
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珪藻
ヘッケルによる珪藻のスケッチ "Diatomea 4" from Ernst Haeckel's
Kunstformen der Natur, 1904
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
階級なし:SAR Sar
階級なし:ストラメノパイル Stramenopiles
:オクロ植物門 Ochrophyta
亜門:カキスタ亜門 Khakista
:珪藻綱 Diatomea

学名
Diatomea Dumortier1821
シノニム

Bacillariophyta Haeckel1878
Bacillariophyceae Haeckel1878
亜門


コアミケイソウ亜門[1] Coscinodiscophytina[2]

クサリケイソウ亜門[1] Bacillariophytina[2]

様々な珪藻の光学顕微鏡写真(暗視野)。ヘッケルによる珪藻のスケッチ

珪藻(ケイソウ)は不等毛植物に含まれる単細胞性の藻類のグループである。分類階級は珪藻植物門または珪藻綱が割り当てられる。

細胞が珪酸質の被殻 (frustule) に覆われているのが特徴である。殻の形態が放射相称のものを中心珪藻、一本の対称軸をもって左右対称であるものを羽状珪藻と呼ぶ。
細胞構造
細胞内構造

珪藻は全て光合成を行う独立栄養生物で、細胞内に1個から多数の葉緑体を持つ。光合成色素としては、褐藻等と同じくクロロフィルa、c1、c2を持つ。補助色素としては、カロテノイドであるフコキサンチンディアトキサンチンディアディノキサンチンβカロテンなどを含み、黄褐色を呈する。葉緑体は包膜が4重膜であり、紅藻の二次共生に由来するものと考えられている。

葉緑体は細胞の周囲に配されるものが多い。は細胞の中心付近に位置し、その周りを発達した液胞が取り囲む。ミトコンドリアは管状クリステで、細胞質内に分散して配置されている。

羽根型鞭毛を持つストラメノパイルの一員であるが、珪藻では通常の(殻に入った)細胞は鞭毛を持たず、中心珪藻の遊走細胞のみが鞭毛を備える。遊走子の鞭毛は前鞭毛一本で両羽型、内部の微小管配列は一般的な9+2構造ではなく、中心対微小管を欠く9+0構造構造である。鞭毛小毛は、他の不等毛藻同様に3部構成である。
細胞外マトリックス

珪藻は、単細胞生物としては多彩な細胞外マトリックスを持つ。珪藻の多くは被殻に唇状突起 (labiate process) と呼ばれる中空の管を持ち、ここから粘液性の物質を細胞外へ分泌する。特に中心珪藻でプランクトンとして生活するものでは、粘性の高い粘液が有基突起 (strutted process) を形成し、細胞から放射状に伸びる。これは海洋における細胞の沈降を抑え、細胞を有光層に留める働きがあると考えられている。

羽状珪藻の一部の種は被殻に縦溝を持ち、溝の軸方向に基物上を滑るように運動する(1-25μm/s程度)。この縦溝の内側の細胞膜直下にはアクチンフィラメントが配置されており、同時に縦溝から粘液繊維が分泌される。この繊維は細胞内に回収されず、基物上に残ることが分かっているが、細胞移動の具体的なメカニズムに関しては不明な点が多い。

一方、固着性で群体制の羽状珪藻では、細胞外に寒天質を分泌し、樹状の柄を形成して群体を為すものもある。特にCymbella 属やLicmophora 属は大型で美しい群体を作る。東京都国立科学博物館には、この群体を含む珪藻の精緻なアクリル模型が展示されている。
被殻
被殻の構造様々な珪藻の被殻。走査型電子顕微鏡による撮影。
(A:左上)Biddulphia reticulata
(B:左下)Diploneis sp.
(C:右上)Eupodiscus radiatus
(D:右下)Melosira varians

珪藻の殻は弁当箱のように、大きい外殻の内側に小さめの内殻(それぞれ半被殻; theca と呼ばれる)が組み合わされた構造となっている。蓋や底の面を殻面 (valve face)、横から見たのを帯面 (girdle face) という。多くの珪藻ではこの2面が直交するために、多くの場合光学顕微鏡による観察ではどちらか一方の面のみが見える事になる。一般に、珪藻の顕微鏡写真は殻面の形状を写したものである。殻面は変化に富むが、帯面はほとんどの場合長方形に見え、形態の差異を把握できない。Campylodiscus のように、被殻全体がねじれている珪藻もある。被殻には胞紋 (areola) と呼ばれる微細な穴や、それが配列した条線 (stria) が多数存在し、これらの数や配置は分類形質として用いられている。
珪酸代謝

珪藻では古くから殻の形成機構や、珪酸代謝機構に関する研究が進められてきた。1999年には珪酸を顆粒状に凝集させるタンパク質であるシラフィン (Silaffin) がCylindrotheca fusiformis の被殻から精製され、従来の構造学的な側面に加えて、被殻形成の化学的な研究に大きな進展をもたらした。また、珪酸の細胞内代謝に関連する遺伝子も、Thalassiosira やNitzschia のような代表属から数多く報告されている。

被殻の形成には珪酸の取り込みが不可欠であるが、これと競合的に取り込まれる二酸化ゲルマニウムを珪藻の培養に添加すると、被殻が形成されないばかりか珪藻は死滅してしまう。珪藻に限らず、同じ不等毛植物門の黄金色藻類で珪酸質の鱗片を持つ藻類などにも同様の効果がある。


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