最高裁判所判例
事件名国家公務員法違反被告事件
事件番号昭和44(あ)1501
1974年(昭和49年)11月6日
判例集刑集第28巻9号393頁
猿払事件(さるふつじけん)は、公務員の「政治的行為」と刑罰に関して争われた刑事事件である。公務員の政治活動を制限することは憲法に違反しないと判決された。 北海道宗谷郡猿払村の鬼志別郵便局に勤務する労働組合協議会事務局長を務めていた郵政事務官が1967年1月8日に当日告示された第31回衆議院議員総選挙に際し、労働組合協議会の決定に従って日本社会党を支持する目的をもって、同日同党公認候補者の選挙用ポスター6枚を自ら公営掲示場に掲示したほか、その頃4回にわたり、右ポスター合計約184枚の掲示方を他に依頼して配布した[1]。 国家公務員法第102条第1項は、一般職の国家公務員に関し、「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定し、この委任に基づき人事院規則14―7(政治的行為)は、右条項の禁止する「政治的行為」の具体的内容を定めており、右の禁止に違反した者に対しては、国家公務員法第111条の2が3年以下の懲役又は10万円以下の罰金を科する旨を規定しているが、郵政事務官はこの法に違反したとして同年9月に稚内簡裁が罰金5000円の略式命令を言い渡された[2]。しかし、被告人は非管理職でその職務に全くの裁量の余地なく、選挙活動はいずれも勤務時間外に職務を利用することなく行われたのに、それを処罰するのは違憲であると主張して正式裁判に持ち込んだ[2]。 1968年3月25日の旭川地裁は弁護側の主張を認め、「非管理職である現業公務員でその職務内容が機械的労務の提供に止まる者が勤務時間外に国の施設を利用することなく、かつ職務を利用し若しくはその公正を害する意図なしで行った「政治的目的を有する文書、図画類を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し又は多くの人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること」(人事院規則第6項第13号)に該当する行為で且つ労働組合活動の一環として行われたと認められる所為に刑事罰を加えることをその範囲内に予定している国家公務員法第110条第1項第19号は適用される限度において、行為に対する制裁としては合理的にして必要最小限の域を超えたもの」と判断され、被告人は無罪であるという判決を出した[2]。 1969年6月25日の札幌高裁は表現の自由の意義を強調し、アメリカの憲法判例で用いられる「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を準拠した上で無罪判決を支持して検察の控訴を棄却した[3]。 猿払事件の一審無罪判決に倣って、以下の同種の事件において無罪判決が下されていた[4]。
内容
事件の中身
下級審
徳島郵便局事件(1965年7月施行の参院選で公民館で行われた個人演説会で司会を行い、約30人の聴衆に投票を勧誘した行為で起訴された事件)の一二審無罪判決