独楽
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三島由紀夫の短編作品については「荒野より (小説)#独楽」をご覧ください。
独楽2種

独楽(こま)は、何らかの塊をを中心として回転させて遊ぶ伝統的な玩具の一種。軸の先は細くなっており、周りにバランスをとるための重りがついている。
独楽の分布木製の独楽(スロヴェニア)様々なコマ

独楽は世界各地でみられ、それぞれ独自に発生したものと思われる。各地に独特なものが見られる。

一般には子供の遊びと考えられているが、マレーシアのガシンのように、地域によっては大人も巻き込んだ楽しみになっている場合もある。賭ゴマは大人の遊びである。また、日本の曲ゴマや中国の空中ゴマなど、芸能として認められている。

日本では、独楽作りは各地の民芸品、木地玩具としても作り続けられている。現在では淘汰が進んでしまったが、地域の名を冠する各地に固有の独楽はまだまだあちこちに残っている。特に九州には多くの独楽が知られている。
独楽の歴史
起源と発展『L’enfant au toton』Jean-Baptiste-Simeon Chardin (1735年)

独楽は極めて古い歴史を持つ。ひねりゴマが最も簡単なこまで、これが初めであると考えられるが、実質的な証拠としてはぶちゴマが古くから存在したことが確認されている。エジプトでは紀元前1500年ごろの独楽が発見されているが、これは木製で円柱の下を逆円錐に削ったもので、ぶちゴマと考えられる。古代ギリシャにもぶちゴマやひねりゴマに関する記述が見られる。

ぶちゴマは、胴を横から鞭で叩いて回す独楽であるが、回し始めの時には先ず紐を巻いてそれを引くことで回すものがある。どうやらこれが紐で回す投げゴマの起源となったらしい。ヨーロッパでは17世紀頃から投げゴマに関する記述や絵が見られるようになる。そこで見られる独楽は投げゴマとぶちゴマが半々程度である。
力学的研究と工学的応用

18世紀に入るとレオンハルト・オイラーなどによって独楽の角運動量歳差運動章動などの研究が進んだ[1]レオン・フーコーは1851年に地球の自転を精密な独楽によって証明しようと試み、それを「ジャイロスコープ」と命名している[1]。ジャイロスコープはもともと独楽の性質を工学的に応用した装置であるが、コリオリの力サニャック効果を利用して独楽を内蔵しなくても独楽がある場合と同じ様に機能するジャイロスコープも出現している[2]
日本における歴史

日本では6世紀ころにぶちゴマのような木製の出土品があるが、確実にぶちゴマだとは言い切れない。また、平城京跡や奈良県藤原宮跡などからも7 - 10世紀ごろのものと思われる独楽、または独楽型の木製品が出土している。平安時代ごろにはすでに大陸から伝わっており、独楽を使って遊んでいたと言う記録がある。これもぶちゴマであったらしい。また、宮廷の儀式などにも使用されていた。14世紀、『太平記』にはこまという言葉が出てくるが、これはこまつくり(古末都玖利)を略したものである。また、東北地方では、すぐりなどと、最初の2文字を略していた。また、正月のこままわしには、物事が円滑に回る、お金が回るという縁起が込められている。

18 - 19世紀にかけてヨーロッパでは独楽が流行したが、日本でも江戸時代には独楽が大進歩を遂げた。博多ではそれまでよりはるかに精密で長く良く回る独楽が作られた。これは博多ゴマと呼ばれ、この独楽を使って曲芸を見せるのが現在まで伝わる曲ゴマの始まりとなった。元禄年間にその記録がある。しばしば禁令も出されたようである。

江戸の子供たちは巻貝を加工した小さな独楽の回しっこをしていたことが伝えられており、これが明治中期に金属となって現在のベーゴマになった。ベーゴマも当初はぶちゴマであったらしいが、次第により強く回せる投げゴマに変化したらしい。ぶちゴマは江戸中期に次第に投げゴマに取って代わられたようで、明治以降には日本国内ではあまり見かけられなくなり、昭和後期には商品としては皆無といってよい存在となった。それに代わって投げゴマが日本では独楽の標準の位置についた。子供の遊びにもこれが使われ、天保年間には喧嘩ゴマとしてより強くなるように胴の外側に鉄輪をはめた鉄胴ゴマが作られるようになった。この形の独楽は永く残り、昭和末まではどこの駄菓子屋にも置いてあったものである。今治市の生産業者は、最盛期には年間200万個も生産したと言う。

しかし、昭和末より次第に投げゴマはすたれ始める。この時期は団塊ジュニア1971年 - 1974年生まれのベビーブーマー)が子供の遊びをしなくなる思春期に達していく時期に重なっており、小学生1981年(昭和56年)の1192万4653人をピークに減少が始まった(参考:2014年の小学生数は約660万人)[3][4]。また、1983年(昭和58年)に任天堂より発売された「ファミリーコンピュータ」(ファミコン)を初めとする家庭用ゲーム機バブル景気期にかけて広く一般家庭に普及した時期であり、バブル景気によって不動産価格が上昇し、子供が遊んでいた空き地が減った時期でもある。ガンプラビックリマンキン肉マン消しゴムチョロQなど、新しい子供の遊びのブームも影響したと考えられる。駄菓子屋で独楽が山をなした風景は現在では見ることができない。代わって室内で機械式の回転装置をもつ独楽がよく見掛けられるが、室内遊戯である。1999年にベイブレードが出て子供の間でブームになったが、やはり投げゴマではなく回しやすい機構を備えている。

2011年から全国の中小製造業が自社の誇りを賭けて作成したコマを持ち寄り、一対一で戦うコマ大戦が行われ、2012年2月2日には、横浜みなとみらい21地区「テクニカルショウヨコハマ2012」にて、第一回全国大会G1が開催された。第一回全国大会G1にて優勝したコマは、株式会社由紀精密のコマで、レプリカモデルが販売されている。コマ大戦にて使用されるケンカゴマは直径20mm以下、一円玉より小さいコマで、その小さなコマを製造業が設計し、切削機や旋盤などのプロの機械を用いて自社の持てる技術を全て注ぎ込み作成したものである。

当時、心技隊という団体が運営していたが、現在はNPO法人全日本製造業コマ大戦協会が運営している。

2013年2月7日に、横浜みなとみらい21地区「テクニカルショウヨコハマ2013」にて、第二回全国大会G1が開催された。第二回全国大会G1にて優勝したコマは、有限会社シオンのコマで、ミニレプリカモデルが販売されている。2015年2月15日には「世界コマ大戦2015」が横浜大さん橋ホールで開催され、7カ国29チームが参加し、優勝は日本の企業、準優勝はインドネシアの企業となった。2017年4月1日に第三回全国大会G1 Japan Cup 2017がクイーンズスクエア横浜 クイーンズサークルにて開催された。
独楽の型
一般の独楽佐世保独楽

独楽と呼ばれるものには実にさまざまなものがあり、ドングリ巻き貝をそのまま回すもの、木の幹を切り落とし、先をややとがらせただけのものから、内部に複雑な構造を持つものまである。いずれにせよ、地面や固い基盤の上で本体を回転させて遊ぶもので、その回転軸が変わらないように、とがった先端を持つ。胴体の中心に軸を突き通した姿が日本では一般的であるが、必ずしも世界中に通じるわけではない。
回し方
指でひねる
最も簡単な独楽は、指でひねって回すものである。胴体は比較的小さく、軸も短い。回転速度もさほど上げられないので、ごく簡単なもの、単純なものが多い。このような独楽は、
ひねりゴマと呼ばれる。
手のひらで回す
細くて長い軸を持ち、これを両手で挟んで、手のひらをすりあわせることで回転させるものである。回転が足りなければ繰り返してすりあわせる。手よりゴマと呼ばれ、日本の曲ゴマはこの型である。
紐を使う
大きく分けて2つの方法がある。
軸に巻き付ける
いわゆるいと巻きゴマと言われるもの。独楽本体から上に伸びた軸に、細い紐を巻き付ける。軸の一部には、管がかぶせてあるなどの工夫がしてあり、この管を持って紐を引けば本体が回り出すしくみである。
胴体に巻き付ける
いわゆる投げゴマである。胴体の底面の逆円錐の部分に下から紐を巻き付け、紐の片方を持って胴体を投げ出して、紐を引くことで回転をつける。
を使う
ぶちゴマといわれる。普通は軸を持たず、円筒形の胴体の下が逆円錐に削られた姿で、立てておいて、簡単な鞭のようなもので胴体を叩いて回転させる。別名を無精ごまとも言う。叩かないと動かないとの意である。
専用の道具を使う
最近増えてきた型で、独楽上面にかみ合わせがあり、ここに専用の回転を与える装置をつける。装置の中にはバネなどが仕込んであり、ここに力を蓄え、上の面のボタンを押してはじき出すなどの方法を採る。
複雑な構造の独楽いわゆる地球ゴマと同等の独楽

一般の独楽は円盤形か円錐形の胴に軸があるもので、胴は固くて中が詰まっているものだが、ここに特別な仕掛けを持つものがある。
音の鳴る独楽
胴が内部に空洞を持ち、胴の側面に穴が開いていれば、独楽を回転させたときに音が出るようにすることができる。ビンの口を吹くのと同じである。
形が変わる独楽
胴の側面に溝があり、そこに羽根が折りたたまれているもので、回転させると遠心力で羽根が伸び、独楽が大きくなったように見える。独楽を急に止めると勢いで羽が畳まれる。ゴムが仕掛けてあって、回転が遅くなると畳まれるものもある。
軸受により枠に保持されたもの
地球ゴマのように、コマ本体が軸受により枠に保持されたものは、回転している間でも外枠をさわっていられる。


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