特許請求の範囲
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特許請求の範囲(とっきょせいきゅうのはんい)は、特許を受けようとする発明を特定するための事項の記載、またはその事項を記載した書類である。その記載が特定する発明について特許が与えられるべきか否かの審査が行われ、特許を受けた発明の技術的範囲がその記載に基づいて定められる。

特許を受けようとする一または複数の発明を箇条書きにした形式をとり、箇条書きの各項目は請求項(せいきゅうこう)と呼ばれる。各項目には番号が振られ、「請求項1」、「請求項2」などと参照される。請求項には名詞句として発明が記載される。

特許請求の範囲および請求項という用語は日本の特許法のものである。特許協力条約(PCT)における請求の範囲(claims)および請求の範囲(claim)に対応する。日本の特許法における特許請求の範囲または請求項も、「クレーム」または「クレイム」と呼ばれることがある。

日本の実用新案法における実用新案登録請求の範囲(じつようしんあんとうろくせいきゅうのはんい)は、実用新案登録を受けようとする考案を特定するための事項の記載、またはその事項を記載した書類であり、特許法における特許請求の範囲に対応する。実用新案登録請求の範囲の箇条書きの各項目は、請求項と呼ばれる。目次

1 意義

2 分類

2.1 物クレーム・方法クレーム・使用クレーム

2.2 独立請求項と従属請求項

2.3 開放クレームと閉鎖クレーム

2.4 マーカッシュ・クレーム

2.5 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム

2.6 除くクレーム

2.7 数値限定クレーム

2.8 機能的クレーム

2.9 願望クレーム

2.10 チャレンジクレーム


3 解釈

3.1 権利一体の原則

3.2 均等論


4 記載要件

4.1 サポート要件

4.2 明確性要件


5 日本

6 米国

7 欧州

8 特許協力条約

9 関連記事

10 脚注

意義

特許の出願人は、特許を受けようとする発明を明細書において詳細に説明しなければならない。しかし、明細書の記載からは、出願人が特許を受けようとする発明が必ずしも明らかにならない。

例えば、新しい触媒の発明の明細書には、その触媒の成分、その触媒の製造方法、その触媒を利用して目的物を生産する方法、その触媒を利用するときの反応装置、など複数の発明が記載されることになる。このうちのどの発明について出願人が特許を受けようとしているのかは、明細書から必ずしも明らかにならない。また、ある装置の発明の明細書には、その装置の構造が詳細に説明され、その装置の部品としてつるまきバネを用いるという記載があるとすると、つるまきバネは単なる例示であってゴムひもで代用できるものであるのか、つるまきバネを用いる点が発明の重要なポイントであるのかは、明細書から必ずしも明らかにならない。

出願人が特許を受けようとする発明が明示されないと、特許権の効力がどこまで及ぶかについて争いが生じやすく、出願人つまり特許権者にとっても、第三者にとっても、不利益である。

そこで、出願人が特許を受けようとする発明を明示する書類として、特許請求の範囲が必要となる。
分類
物クレーム・方法クレーム・使用クレーム

物の発明を特定する事項を記載した請求項を物クレーム(ものクレーム、product claim)、方法の発明を特定する事項を記載した請求項を方法クレーム(process claim)などという。

物クレームであるのか方法クレームであるのか明確でない請求項は、後述の「明確性要件」に違反するとして特許を受けることができないことが多い。物の発明であるか方法の発明であるかによって、特許権の効力が異なり得るからである。

使用クレーム(use claim)は、特定の物質を特定の目的で使用することを発明(用途発明)したときに記載することがあるクレームである。例えば、クエン酸シルデナフィルという物質自体は従来(狭心症の治療薬として)知られているとして、それがまったく別の目的(ED治療薬として)使用できることを発見したとき、「クエン酸シルデナフィルのED治療薬としての使用」というクレームを書いたとすれば、これは使用クレームである。

日本の特許制度では、発明は物の発明か方法の発明かのいずれかであることを前提にしているので(例えば特許法1条2項や101条参照)、使用クレームは方法の発明の一種として解釈される。[1]上記の例の場合でいえば、「クエン酸シルデナフィルのED治療薬としての使用」は、「クエン酸シルデナフィルをED治療薬として使用する方法」と解釈される。
独立請求項と従属請求項

請求項は、それより前に記載した他の請求項を引用して記載することができる。他の請求項を引用して記載した請求項を、引用形式の請求項、従属請求項、従属項、従属請求の範囲(dependent claim。PCT規則6.4を参照。)などという。他の請求項を引用しない請求項を独立請求項、独立項,独立請求の範囲(independent claim)などという。

特許請求の範囲の最初に記載される「請求項1」は、必ず独立請求項である。以下の例の請求項3のように、引用請求項をさらに引用する請求項や、複数の請求項を択一的に引用する請求項も認められる。(複数の請求項を択一的に引用する請求項を認めていない国もある。)

【請求項1】Aを備える装置
【請求項2】さらにBを備える請求項1に記載の装置
【請求項3】さらにCを備える請求項1または請求項2に記載の装置

この例の場合、請求項2は「AおよびBを備える装置」を、請求項1を引用することによって簡潔に書いたものである。請求項3は、「AおよびCを備える装置」または「A、B、およびCを備える装置」を請求項1または2を引用することによって簡潔に書いたものである。
開放クレームと閉鎖クレーム


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