特許協力条約
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特許協力条約
通称・略称PCT
署名1970年6月19日
署名場所ワシントンD.C.
発効1978年1月24日
1978年10月1日(日本)
締約国152ヶ国(2017年3月9日現在)
寄託者世界知的所有権機関事務局長
主な内容複数の国において発明の保護(特許)が求められている場合に各国での発明の保護の取得を簡易かつ一層経済的なものにする
関連条約工業所有権の保護に関するパリ条約
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特許協力条約(とっきょきょうりょくじょうやく、Patent Cooperation Treaty、PCT)は、複数の国において発明の保護(特許)が求められている場合に各国での発明の保護の取得を簡易かつ一層経済的なものにするための条約である。
概要

世界知的所有権機関が管理する条約のひとつで、日本での官報告示における名称は、1970年6月19日にワシントンで作成された特許協力条約である。法令番号は昭和53年条約第13号。

この条約は、国際出願によって複数の国に特許を出願したと同様の効果を提供するが、複数の国での特許権を一律に取得することを可能にするものではない。この条約等によって複数の国で特許権を取得したかのような「国際特許」、「世界特許」または「PCT特許」といった表現が使用されることがあるが、世界的規模で単一の手続によって複数の国で特許権を取得できるような制度は、現在のところ存在しない。

特許協力条約は、1970年6月19日ワシントンD.C.で作成され、1978年1月24日に発効した。その後、数回修正されている。

米国は、知的財産に関する条約に米国の地名を冠することを目的としてワシントンで外交会議を開催したとされ、当初はワシントン条約との呼び名も用いられたが、現在はPCTが略称として定着している。

2017年3月9日現在、締約国の数は152である。日本は1978年7月1日に加入書を寄託しており、本条約は1978年10月1日に日本について効力が発生した。
背景

PCTは工業所有権の保護に関するパリ条約(以下、パリ条約)をベースとしている。パリ条約は、工業所有権の保護のための同盟を形成するもので(パリ条約第1条(1))、パリ条約第19条ではパリ条約の規定に反しない限り、パリ条約の同盟国間で「特別の取極」(とくべつのとりきめ)をする事を認めている:パリ条約第19条 特別の取極同盟国は,この条約の規定に抵触しない限り,別に相互間で工業所有権の保護に関する特別の取極を行う権利を留保する。

PCTは、こうした「特別の取極」により、パリ条約に反しない範囲で国際的に統一された特許出願手続を提供するものである。よってPCTのいかなる規定も、パリ条約の締約国の国民又は居住者の同条約に基づく権利を縮減するものと解してはならない(PCT条約1条(2))。
締約国

PCTの締約国は、パリ条約の同盟国に限られ、パリ条約の同盟国が「署名し、その後に批准書を事務局長に寄託する」か若しくは「加入書を事務局長に寄託する」かによりPCTの締約国になる事ができる(PCT条約62条)。
関連する条約と法令

関連する条約法令として以下のものがある。
条約

特許協力条約

特許協力条約に基づく規則

特許協力条約に基づく実施細則

法令

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行令

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規

出願人にとっての利点

工業所有権の保護に関するパリ条約は、「各国特許の独立」の原則を尊重しつつ特許の保護のための各国の同盟を形成し、ある同盟国で特許出願をした同盟国民には他の同盟国において1年間の「優先権」を認める。1年間の優先権とは、ある同盟国(第一国)で特許出願したものと同じ内容の出願を、第一国出願の日から1年以内に他の同盟国(第二国)に出願した場合に、第二国にした出願の審査に関してはその出願は第一国への出願の日に行われたものとして扱われる権利である。

パリ条約の優先権の制度がないと、自分の発明に対して世界的な保護を求める人は、世界各国にほぼ一斉に同じ内容の出願をしなければならないが、優先権の制度があると、とりあえずどこかの一国で出願をすれば、1年間の猶予期間が与えられ、その間に各国で出願する必要があるかを判断し、各国で出願する準備をすればよい。出願を各国語に翻訳したり各国において自分の代理人を選定したりするために莫大な出費とかなりの時間が必要になるので、1年間の猶予期間は重要である(パリ条約は特許以外にも実用新案意匠商標商号などの保護に関係する条約であるが、この記事においては、特許の保護に関してのみ言及した。またこの記事は法律的な正確さよりもわかりやすさを重視した。)。

しかし、パリ条約による優先権が実現する1年間の猶予期間は短いものである。特に、第一国にした出願の審査結果が1年以内に出ることは一般に期待できないので、出願人は、第一国の審査結果を見ずに各国に出願する手続を開始することになる。第一国の特許庁による審査の結果、自分の発明と同じものを以前に別の人が発明していたことが判明し、出願が拒絶された場合、他国でも出願が拒絶されることは明白であるから、出費を節約したい出願人は、第一国の特許庁による審査の結果を見て、他国でも特許を受ける望みがありそうな場合にのみ他国での出願を行うことにしたい。

したがって、世界中で発明の保護を求めたい出願人にとっては、1年間より長い猶予期間が望ましい。また、猶予期間の間にどこかの特許庁による審査の結果を見て、自分の発明が特許を受ける見込みがあるか否か、世界各国で手数料を支払って出願する価値があるか、を判断できることが望ましい。さらに、手数料の総額を低く抑えられる制度が望ましい。

特許協力条約が実現する国際出願は、上記のような出願人の希望を叶えるものである。国際出願を利用すると、猶予期間を2年半(30か月)に延長できる。そして、その間に自分の出願に特許を受ける見込みがあるのかを判断するための材料となる国際調査機関による国際調査報告と国際調査機関の見解書、さらには国際予備審査機関による国際予備審査報告を受け取ることができる。手数料の総額も、世界の複数の国で特許を取得する場合には、世界各国に個別に出願するときに比べて低く抑えられるように設計されている。

ここで、国際調査機関や国際予備審査機関は具体的には加盟国に存在するうちのいくつかの特許庁である。調査や予備審査に必要な各国語文献の蓄積を有し、各国語文献を理解して検索できる職員を有する大規模な特許庁のみが国際調査機関や国際予備審査機関として働き、国際出願に特許を受ける見込みがあるかの報告書を作成する。
国際出願
対象範囲

PCT条約は「特許」を対象にするが、PCT条約における「特許」は、特許、発明者証、実用証、実用新案、追加特許、追加発明者証及び追加実用証を意味する(PCT条約2条(ii))。
国際出願
出願の主体

以下の者が国際出願をすることができる:

締約国の居住者及び国民(PCT条約9条(1))


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