特定都区市内
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「東京都区内、都区内」はJRの運賃制度上の「東京都区内」について説明しているこの項目へ転送されています。東京都の特別区地域(東京23区)については「東京都区部」をご覧ください。
東京駅JR東日本)の駅名標。右上に付いている印「山」「区」が特定都区市内の表記で、この場合東京駅が東京山手線内・東京都区内に含まれることを意味する。

特定都区市内(とくていとくしない)は、JR運賃計算の特例の一つである。
概要

本特例はJRの旅客営業規則(旅規)第86条並びに第87条の規定に基づく。目的は大都市の駅での出札業務の簡素化である。

導入されたのは高度経済成長期の真っ直中だった時期であるが、背景として、その高度経済成長の進捗に伴ってビジネスや観光などを目的とする長距離移動需要が高まっていたことがあった。

当時、普通乗車券の発売には着駅毎に常備券を用意するか、あるいは手計算により運賃を算出した上で発着駅などを補充券に筆書し発行するかのいずれかによらなければならなかった[注 1]。前記の長距離移動需要の高まりを背景に、当時の国鉄は本制度を導入した。すなわち、当該特定都区市内の中心駅から片道の営業キロが一定以上であれば、特定都区市内駅にあるすべての駅を、いわば大きな一つの駅とみなして乗車券の発券処理をすることになるので、常備券整備や運賃計算の簡素化を図ることができる。2022年現在は札幌仙台東京横浜名古屋京都大阪神戸広島北九州福岡、の計11都市(これらを「特定都区市内」と呼称)に各々所在する駅を対象に適用されている。「東京都区」内に限っては、片道営業キロによって適用される旅規条文及び対象範囲が異なる《詳細は後記参照》。
特例の内容
旅客営業規則(旅規)より
規定内容

特定都区市内に所在する駅と、当該特定都区市内の中心駅から片道の営業キロが200kmを超える駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点または終点とした営業キロまたは運賃計算キロによって計算する《旅規86条》。

「東京都区内」の中で特に
山手線内各駅および山手線の内側に所在する中央本線総武本線の各駅(これらを「東京山手線内」と呼称)については、東京山手線内の中心駅・東京駅からの片道営業キロが100km超200km以下(1km未満は切り上げ)の区間の駅との相互間の片道普通旅客運賃についても前記特定都区市内に所在する駅の場合と同様の計算法により取り扱われる《旅規87条》。

以上旅規86条・87条による規定は、特定都区市内に所在する駅を発駅とする場合で一旦その特定都区市内の外を経たあと、再び発駅が属する特定都区市内を「通過」してから着駅に至る場合、あるいは特定都区市内に所在する駅を着駅とする場合で発駅より一旦着駅が属する特定都区市内を「通過」し外に出てから着駅に至る場合、適用対象外となる[注 2]

「大阪市内」発着の乗車券については、特例として区域外の尼崎駅久宝寺駅を経由することができる。途中下車はできない[4]。本特例は尼崎駅・久宝寺駅を経由することを事実上「外を経て」いないものとみなすものであるが、旅客営業規則に規定がないため、原則通り経路指定単駅発着の乗車券を購入することで尼崎駅・久宝寺駅および経路上の大阪市内各駅で途中下車することも可能である。

なお、その他連絡運輸の範囲外や1度も当該市内を出ないで完結する[注 3]乗車券などでやむを得ない場合も市内制度は適用せず単駅指定となる。


旅規86条・87条の規定により運賃計算される普通乗車券の有効期間は、その旅客運賃の計算に用いる中心駅から、または中心駅までの営業キロによる《旅規154条2項》。

旅規86条・87条の規定により発売した乗車券を使用する場合は、当該乗車券の券面に表示された特定都区市内の各駅では途中下車できない《旅規156条》。

特定都区市内の各駅で下車した場合には前途無効の扱いとなり当該乗車券は回収される《旅規165条》。ただし発駅と同一の特定都区市内の駅に下車した場合で実際の乗車駅と下車駅との区間に対する普通運賃を別途支払った場合、当該乗車券は旅行開始前または使用開始前のものと同一の効力を持つものとして取り扱われる《旅規166条》。

具体例

杉本町阪和線)から五日市山陽本線広島地区)まで[注 4]
杉本町は大阪市内、五日市は広島市内にそれぞれ所在する駅で、両駅とも特定都区市内に所在する駅でもある。そして、「大阪市内」の中心駅・大阪駅から「広島市内」の中心駅・広島駅までの営業キロは337.8kmであり、200kmを超えている。よって発券される普通乗車券は、券面表示が「大阪市内→広島市内」、有効期間は3日となる。なお、この普通乗車券を使って新大阪・広島間で山陽新幹線を利用する場合、実際には大阪・新大阪間で重複乗車となってしまうが、これに関しては規程150条(後記)により大阪・新大阪間の運賃を別途支払う必要は無い。

目黒山手線)から上田北陸新幹線)まで[注 5]
目黒は「東京山手線内」に所在する駅で、その中心駅たる東京から上田までの営業キロは189.2kmとなり、100km超200km以下の範囲内に収まっていることから、発券される普通乗車券の券面表示は「東京山手線内⇒上田」となる。有効期間は2日。

杉本町(阪和線)から大高東海道本線名古屋地区)まで[注 6]
杉本町は大阪市内に所在し、名古屋市内駅である大高は名古屋市内に所在する、いずれも特定都区市内に属する駅である。杉本町から大高までの営業キロは220.4kmであるが、杉本町の属する「大阪市内」の中心駅・大阪駅から大高の属する「名古屋市内」の中心駅・名古屋駅までの営業キロは190.4kmと200kmに満たない。その一方で、杉本町・名古屋間は208.0km、大阪・大高間は202.8kmといずれも200km超となっていることから、発券される普通乗車券の券面表示は「杉本町(単駅)⇒名古屋市内」か「大阪市内⇒大高(単駅)」のいずれかとなる。有効期間はいずれの場合も2日。なお、このようなケースでは、乗客から特に求めがない限り、乗車後の予定変更に対応できるよう、着駅側についてのみ本特例が適用される。

東京から新幹線と在来線を乗り継ぎ富士まで、そこから身延線甲府に抜けた後、中央本線・総武本線で千葉まで
具体的には、以下に示す経路を辿る

[東京]- (東海道新幹線) - 三島 - (東海道本線・静岡地区) - 富士 - (身延線) - 甲府 - (中央本線) - 御茶ノ水 - (総武本線) - [千葉]
この経路を辿って千葉に向かう場合、東京から千葉までの営業キロは404.8kmとなる。ただし、東京から東海道新幹線(東海道本線)に乗って一旦「東京都区内」を出たあと、甲府からの中央本線にて再度「東京都区内」に入り総武本線にて通過する経路であることから、本特例の適用対象とはならず、「東京都区内」発とはならない。そのため、この経路で発券される普通乗車券の券面表示は「東京(単駅) ⇒ 千葉〔経由:新幹線・東海道・身延・中央東・総武〕」となり、よって「東京都区内」に所在する駅も含め区間内の全ての駅で途中下車が可能となる。有効期間4日間。
旅客営業取扱基準規程(規程)より

中心駅からの営業キロによる本特例適用の有無を原因として、適用非対象駅までの運賃がそれより遠方にある適用対象駅までの運賃より高額になる場合は、適用非対象駅までの運賃を適用対象駅までの運賃と同額にすることができる《規程114条》。
実際の発駅(または着駅)と運賃計算上の起点駅(または終点駅)が異なり、中心駅から200km前後の場合にこうした矛盾が生じることがある。【規定114条適用例】
作並仙山線)から笈川(磐越西線)まで[注 7]作並は「仙台市内」の駅ではあるが、中心となる仙台・笈川間の営業キロが200km以下(198.3km)なので本特例は適用されない。従って作並・笈川間の運賃は同区間の営業キロ227.0kmをそのまま適用して4070円となる。しかし笈川の一駅先の塩川までを考えた場合、中心駅・仙台と塩川の間の営業キロが200km超(200.2km)となることから本特例が適用されて3740円となり、「近い駅までの方が運賃が高くなる」という矛盾が生じる。その為、作並・笈川間の運賃は本特例の適用される仙台・塩川間の運賃に合わせ3740円とすることができる。乗車券の券面表示は「作並(単駅)→笈川」で、3日間有効。

東京近郊区間内相互発着の場合に於いて、「特定都区市内」中心駅からの券面表示経路による営業キロが200km超であっても、中心駅からの営業キロが200km以下になる経路が存在する場合は、本特例を適用しないで運賃を計算することができる《規程115条1項》。

東京近郊区間内相互発着の場合において、東京からの券面表示経路による営業キロが100km超であっても、東京からの営業キロが100km以下になる経路が存在する場合は、東京山手線内発着の特例を適用しないで運賃を計算することができる《規程115条2項》。
上記2本の規定は、2009年3月14日に制定された規程(新)115条によるものである。

【規程(新)115条適用例】小岩(総武本線)から植田常磐線)まで

東京都区内に所在する小岩から福島県内に所在する植田までの最短経路は「総武本線 - 武蔵野線 - 常磐線」で、営業キロは189.2km。当該経路のままで「東京都区内」の中心駅・東京から見た場合の営業キロが200km超(202.0km)となっていることから、距離の上では本特例が適用されて「東京都区内 ⇒ 植田〔経由:総武本線、武蔵野線、常磐線〕」という券面表示の普通乗車券(運賃3740円)が発券されるところである。しかし、乗車区間および中心駅・東京から着駅・植田までの区間がいずれも東京近郊区間内で完結していること、更に中心駅・東京から植田までの区間の最短経路である「[東京]- (東北本線) - 日暮里 - (常磐線) - [植田]」を辿った場合の営業キロが200km以下(193.6km)となることから、券面表示「小岩(単駅) ⇒ 植田〔経由:総武本線、武蔵野線、常磐線〕」の普通乗車券(運賃3410円)の発券を受けることができる。なお、東京近郊区間内で完結することから有効期間は1日(当日限り有効)〔旅規154条〕となり、かつ「途中下車不可」の扱い〔旅規156条2号〕となる。


大阪市内発着の乗車券で大阪・北新地両駅相互の乗り継ぎ、神戸市内発着の乗車券で新神戸と「三ノ宮元町神戸新長田の各駅」間相互乗り継ぐための一時出場が認められている《規程145条2項》。

特定都区市内発着となる普通乗車券を所持する旅客が、列車に乗り継ぐため同区間内の一部が複乗となる場合は、旅客運賃を収受しないで当該区間の乗車を認める《規程150条》。

【規程150条適用例】

「東京都区内 → 松本(経由:中央東・篠ノ井)」と券面表示された普通乗車券を使って西荻窪から乗車し、新宿特急列車(「あずさ」など)に乗り継いで折り返すことが出来る。


大阪市内発着となる普通乗車券を所持する旅客は、別途運賃不要で以下の区間を区間外乗車することができる《規程150条2項》。

塚本を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「加島 - 尼崎間」

加島を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「塚本 - 尼崎間」

その他の駅を出入口駅とする大阪市内発着の乗車券の場合「塚本 - 尼崎 - 加島間(この場合、尼崎では途中下車不可)」

尼崎駅が大阪市内駅ではないものの、上記の乗車をする場合に限っては塚本 - 尼崎 - 加島間も大阪市内区間と同様の扱いを受けられるものである。

同様の特例は、大阪市内駅ではない久宝寺駅を挟んだ「加美 - 久宝寺 - 新加美」間にも適用される[4]




東京都区内に京葉線葛西臨海公園経由で出入りする場合でも、東京都区内発着の乗車券と総武本線・小岩発着の乗車券を併用することで乗車できる。同じく、横浜市内発着の乗車券と根岸線本郷台発着の乗車券を使って東海道本線または横須賀線戸塚経由で乗車することや、大阪市内発着の乗車券とJR東西線・加島発着の乗車券を使って東海道本線(JR神戸線)・塚本経由で乗車することもできる《規程155条[注 8]》。

設定区域一覧

現在本特例が適用されているのは、札幌市・仙台市・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・神戸市・広島市・北九州市・福岡市の計10都市と東京23区内。

駅の設定は基本的に各市の市域内。ただし、(JRが定める)中心駅へJR線だけで行くために一旦市外に出なければならない駅の扱いは駅により異なる。神戸市に所在する
道場や福岡市内の筑肥線各駅は除外されている[注 9]。一方で山陽新幹線新神戸と相鉄線直通列車羽沢横浜国大[注 10]は含まれている。また横浜市内の矢向や大阪市内の新加美、広島市内の矢野などから中心駅への経路には、特定都区市内に指定された市以外の市町を挟むが、便宜上他市町の駅も含める。この場合、乗車券の券面にこれら除外駅や含まれる駅を表記(横浜市内の場合は、「横浜市内・川崎・鶴見線内」、または「横浜市内・川崎」と表記)する場合がある(旅規187条3項)[注 11]

当該都区市内での新線開業や新駅開業、市町村合併による市域拡大の場合は、当該の新駅が既存のJR線内に当該都区市内のみで接続する場合に限り、当該都区市内ゾーンへの組入れが行われている。

1983年の筑肥線「博多 - 姪浜」間廃止までは、廃止区間の中間駅に加えて姪浜・今宿周船寺の各駅も福岡市内の駅に入っていたが、廃止に伴い3駅は除外された[注 12]

京葉線新木場葛西臨海公園両駅の場合は、1988年の開業当初は都区内では「独立」したJR線のため東京都区内ゾーンに組み入れられなかったが、その後1990年に東京まで延伸開業した際に、同時に開業した八丁堀などの途中駅とともに東京都区内ゾーンに組み入れられた。

1997年(平成9年)3月8日の片町線(学研都市線)「京橋 - 片町」間廃止に伴い、片町駅が除外された。また、同日のJR東西線開業に伴い、尼崎駅を除く同線の各駅を大阪市内駅に追加。

上記の追加に伴い、市外乗車「塚本 - 尼崎 - 加島」間および大阪駅と北新地駅との乗り継ぎの特例が設定される。


仙台市内に属する仙台を除く仙山線の駅は、設定当初は北仙台1駅のみだったが、市域拡大と新駅開業に伴い2022年現在では臨時駅を含めて下図の12駅と増加している。なお、臨時駅である西仙台ハイランド八ツ森両駅も2014年(平成26年)3月15日に廃止される[5]まで含まれていた[6]

2003年(平成15年)12月1日の可部線可部 - 三段峡」間廃止に伴い、河戸から小河内までの各駅が除外された[注 13][注 14]


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