特定建築物
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特定建築物(とくていけんちくぶつ)は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、特定用途に利用される部分の面積が、3000m2以上(学校教育法第1条に規定する学校の場合は8000m2以上)の建築物と定義されている。

維持管理権原者は、衛生的・快適に使用できるよう、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理を行い、建築物環境衛生管理技術者を選任し監督させ、その基準に適合させるための意見を尊重する義務がある。また、特定建築物でない建築物においても、多数の者が使用・利用するものについては同様の管理を行うよう努めなければならないとされている。

日本国内の特定建築物の数は、事務所17,660棟、店舗7,284棟、百貨店2,135棟、興行場1,215棟、学校3,140棟、旅館5,966棟、その他3,638棟の計41,038棟を数える(2008年)[1]
特定建築物の範囲特定建築物の例(東京都庁)

特定建築物の範囲は、特定用途に利用される部分の面積が、3,000m2以上(学校教育法第1条に規定する学校の場合は8,000m2以上)の建築物と定義されている。

特定用途に利用される部分の面積とは
特定用途(そのもの)の部分

特定用途に附随する部分(廊下便所など)

特定用途に附属する部分(専用の倉庫駐車場など)

を合計したものである。

特定用途の種類番号用途内容備考
1興行場興行場法に定義される興行場をいい、映画演劇音楽スポーツ演芸又は観せ物を公衆に見せ、又は聞かせる施設
2百貨店大規模小売店舗立地法第2条に規定する大規模小売店舗(飲食店業を除き、物品加工修理業を含む)7の店舗のうち特に大規模なものスーパーマーケット・疑似百貨店を含む
3集会場会議・社交等の目的で公衆の集合する施設をいい、公民館・市民ホール・各種の会館・結婚式場
4図書館図書・記録・その他必要な資料を収集し・整理し・保存して、公衆の利用に供することを目的とする施設図書館法に規定するものに限らない
5博物館美術館歴史・芸術・民俗・産業・自然科学・美術等に関する資料を収集し・整理し・保存して、公衆の利用に供することを目的とする施設博物館法に規定するものに限らない
6遊技場設備を設けて、公衆に麻雀パチンコ卓球ボウリングダンス・その他の遊技をさせる施設体育館・その他スポーツ施設は含まれない
7店舗卸売小売店等の物品販売業の他・飲食店理容所・美容所・その他サービス業に係る店舗を広く含む
8事務所事務をとることを目的とする施設をいう。名称にかかわらず事実上事務を行っていると同視される施設も該当する銀行等は店舗と事務所の両方の用途を兼ねるとして把握される
9学校小学校中学校高等学校大学高等専門学校盲学校聾学校養護学校幼稚園専門学校各種学校等類似の教育を行う施設や研修を行うための施設(研修所)も該当する
10旅館旅館業法第2条第1項に定義する旅館業を営むための施設(旅館、ホテル等)寄宿舎は含まれない

特定建築物に関する建築確認申請時における通知・事前協議

建築確認申請がなされた特定建築物の構造・設備等について、建築主事などから管轄の保健所長などを通じて都道府県知事へ通知され意見が述べられる場合がある。または、条例により建築主に事前協議が義務付けられる場合がある。
特定建築物に関する届出

特定建築物の維持管理権原者は、使用開始の日から1ヶ月以内に、地方公共団体保健所などの衛生担当部局(地域によって異なる)を経由して、建築物が所在する都道府県知事などに特定建築物届を届出る必要がある。また、届出事項に変更が生じたとき、もしくは特定建築物に該当しなくなったときには、そのときから1ヶ月以内に届出が必要である。

届出事項
特定建築物の名称・所在地(地番表示も必須)

特定建築物の用途・構造・設備の概要

特定建築物の特定用途及び特定用途以外の面積

特定建築物の所有者等の氏名住所法人の場合はその名称、事務所の所在地、代表者の氏名

建築物環境衛生管理技術者の氏名住所免許番号・兼任している場合はその名称と所在場所

特定建築物が使用されるに至った年月日

添付書類としては次のものが必要である。
特定建築物の構造設備の概要書

案内図

配置図

空気調和設備(機械換気設備)の系統図及びダクト配管図

給排水設備の系統図

主要機器一覧表

建築物環境衛生管理技術者の免状の写し(免状の本証を持参しての確認が必要である)

建築物環境衛生管理技術者の選任

特定建築物の維持管理権原者は、建築物環境衛生管理技術者を選任し、維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督させ(法6条第1項)、建築物環境衛生管理基準に適合させるためのその意見を尊重しなければならない(同第2項)。選任にあたっては、直接雇用・他事業者への建築物総合管理の委託などによって法的関係が成立していれば良いとされる。

所有者等は特定建築物ごとに1名の建築物環境衛生管理技術者を専任しなければならない(建築物衛生法施行規則5条第1項)、建築物のそれぞれの所有者等が、複数の特定建築物の建築物環境衛生管理技術者を兼任しても職務の遂行に支障ないと認める場合には、2つ以上の特定建築物の兼任が認められる(同第2項)。職務遂行に支障がないとは管理業務計画を立案し、建築物環境衛生管理基準に従いすべての建築物を適切に管理する等、監理技術者の職務が遂行できることをいう。兼任できる建築物数の上限や相互の距離についても、職務の遂行に支障ない範囲とされ、具体的に定められていない。[2]

以前は原則として建築物環境衛生管理技術者は他の特定建築物と兼任できず、一定の要件(相互の距離、それぞれの用途、特定用途に供される部分の延べ面積、構造設備、特定建築物維持管理権原者の同一性など)が確保されている場合のみ兼任が認められたが、令和3年12月24日付け、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省令第199号)により条件が緩和された[3]。兼任する場合は、所有者等は管理技術者の職務の遂行に支障が無いことを確認した結果を記載した確認書を、次節の帳簿類とともにそれぞれの建築物に備え付けておかないといけない。改正以前より複数の建築物の監理技術者を兼任している場合、新たに確認書を作成する必要は無いが、新たに兼任する特定建築物が増えた場合(2つ兼任→3つ兼任となった場合など)は全ての建築物について確認書を作成しなければならない。[2]

改正以前の取り扱いは次の通り[4][5]学校教育法」第1条に規定する学校以外の特定建築物の場合 : 統一的管理性が確保されている場合においては、3棟までの兼任を認めることができる。学校教育法第1条に規定する学校の場合 : 同一敷地内又は近接する敷地内にある建築物で、統一的管理性が確保されている場合においては、兼任を認めることができる。なお、統一的管理性とは、建築物の維持管理権原者が同一で、かつ、空気調和設備給水設備等建築物の衛生的環境の確保に係る設備が類似の形式であり、管理方法の統一化が可能なものをいうものであること。

また、利害が相反するため、建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく登録営業所に置かれる建築物環境衛生総合管理業等の監督者等と兼務できない。これは令和3年12月の改正後も同様である。[2]
帳簿類の備え付け

特定建築物の維持管理権原者は、次の帳簿類を備え付けておかなければならない。
建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類

建築物の構造、設備の配置・系統を明らかにした図面(増改築や設備変更を行ったときは、図面の変更や追加記入が必要)

その他、環境衛生管理に必要な帳簿類

2に関しては特定建築物が存在している期間、1,3に関しては5年間の保存義務がある。

建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類項目点検整備計画管理・実施状況記録


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