特別警報
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Clip災害レベルと特別警報のイメージ(気象庁HPより抜粋)

特別警報(とくべつけいほう、: Emergency Warning[1])は、日本において、気象災害水害地震噴火などの重大な災害が起こるおそれが著しく大きい場合に、気象庁が警告のために発表する情報。警報の一種ではあるが、警報の発表基準をはるかに超える規模で起きるような甚大な被害が発生する恐れがあり、最大級の警戒をする必要がある場合に適用される[2][3]

2013年8月30日0時(JST)から運用が開始された[2]。運用開始後当面の間は、原則として都道府県単位(ただし、北海道は7区分、沖縄県は4区分)で発表される[4]。なお、2019年5月から運用が開始された防災気象情報に関する警戒レベルでは、大雨特別警報は5段階のうち最も危険な警戒レベル5に相当する(後節参照)。

特別警報が発表されるときは、経験したことのないような異常な現象が起きうる状況で、かつ、それまでの数十年間災害の経験が無い地域でも災害の可能性が高まっている状況である。対象地域の住民は、直ちに命を守る行動をとることが推奨されている[2]。なお、「直ちに命を守る行動をとる」とは、必ずしもその場所から他の場所へと避難することを意味するものではなく、例えば、避難することが既に危険な場合は屋内のより安全な場所に移動するなど、各々が状況を見極めて適切な災害回避行動をとることを意味する[2][5]
定義

警報類の法的定義名称定義準拠法規
予報観測の成果に基く現象の予想の発表法2条6項
  
注意報災害の起こるおそれがある旨を注意して行う予報令4条
   警報重大な災害の起こるおそれがある旨を警告して行う予報法2条7項
      特別警報予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい旨を警告して行う警報法13条の2
注:「法」は気象業務法、「令」は気象業務法施行令。

気象業務法第13条の2において、「予想される現象が特に異常であるため重大な災害の起こるおそれが著しく大きい旨を警告して行う警報」と法的に定義されている。2013年5月30日に公布された改正気象業務法および改正国土交通省設置法において新たな制度として設けられたもので、同年8月30日0時(JST)から運用が開始された。通常の警報よりも更に重大性が高い災害が迫っている状況で、市町村は住民等への周知を徹底し、住民や関係機関は最大級の防災対応をとることを求めるものである[2][6]

従来の警報は、都道府県から市町村への通知および、市町村から住民官公署に対する周知は努力義務であったが、特別警報はこれを義務に位置付けることで周知の強化を図っている。また、これまで気象の解析・予測や予警報の発表は、陸域では管区気象台等、海域では海洋気象台がそれぞれ行っていたが、2013年10月1日付で海洋気象台を廃して管区気象台等に統合された[6][7]

対象となる現象は、例えば津波により甚大な被害を出した東日本大震災や、高潮暴風により甚大な被害を出した伊勢湾台風に匹敵するような、数十年に一度という非常に稀な頻度の極めて大規模な災害に発展すると考えられる、気象現象・津波・地震・噴火である[3]

なお法的な位置付けとしては上表の通り、特別警報は警報の一種であり、さらに警報自体が予報の一種であるため、特別警報も予報の一種である[2][6]。また法令上は下表の通り、現象に応じて7区分がなされているが、一部は実際に発表される表題(タイトル)と異なる。

気象業務法上の特別警報(実際に発表される特別警報とは一部異なる)[8]
種類説明
気象特別警報暴風雨暴風雪大雨大雪等による著しく重大な災害の警告。実際にはより細かく分けられ、現象名を冠した表題で発表される。
地震動特別警報地震動による著しく重大な災害の警告。発生した断層運動による地震動に限る。緊急地震速報として発表されている。
火山現象特別警報噴火降灰などによる著しく重大な災害の警告。現在は噴火警報のみが運用されている。
地面現象特別警報大雨、大雪等に伴う山崩れ地滑り等による著しく重大な災害の警告。実務上は他の警報に付随し、独立して発表されることはない。
津波特別警報津波による著しく重大な災害の警告。大津波警報として発表される。
高潮特別警報台風などによる海面の異常な上昇(高潮)による著しく重大な災害の警告。
波浪特別警報風浪うねりによる著しく重大な災害の警告。

制定の経緯

特別警報が制定された理由として、2000年代に入って気象庁は「大雨警報の重要変更」から土砂災害警戒情報への拡充(都道府県ごとに2005年 - 2008年にかけて順次開始)[9]警報注意報の発表単位の地方ごとから市町村ごとへの細分化(2010年[9]、重大な災害の切迫を呼び掛ける「見出しのみの短文気象情報」の開始(2012年[10]など防災情報の改善を行いつつあるにもかかわらず、警報などの防災情報を受けて行われるべき避難が十分でなかった事例が後を絶たず、2011年に相次いで発生した大型災害によってこの問題がクローズアップされたことが挙げられる[3][11][5]

同年3月11日に発生した東日本大震災東北地方太平洋沖地震)では仙台平野で津波浸水域が内陸6kmに達するなど東北の太平洋岸を中心に大津波に襲われ、2万人近くの死者・行方不明者を出した[12][13][14]。また同年9月上旬に日本に上陸した台風12号では紀伊半島を中心に数日間の雨量が1,500 - 2,000mmに達する記録的豪雨となり、土砂崩れ土石流氾濫などにより90人以上の死者・行方不明者を出した[15][16]。この2つの災害では、気象庁は大津波警報や土砂災害警戒情報などの最大レベルの警報を発したにもかかわらず、先に述べたような多数の犠牲者と甚大な被害を出す事態となっており、警報の重大性・切迫性が分かりにくいなどの指摘が挙がり、情報のあり方に課題を残すことになった。そしてこの教訓から、自治体からの要望や国の中央防災会議の提言において防災情報の改善が求められたことが法改正に繋がった[3][11][5]

なお、日本の気象業務において警報類は、警報の発表が1883年に開始され、その後1932年に気象特報(現在の注意報)の発表が開始されてから、1952年の気象業務法制定(気象特報を注意報に改称、警報を法的に定義)を挟んで長らく2段階の体制であった。特別警報は81年ぶりとなる新たな段階の制定となっている[17][18]

発表第1号は、2013年9月16日5時5分に京都府福井県滋賀県に発表された大雨特別警報で、台風18号の大雨によるものであった[注釈 1][19][20][21]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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