特別市
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特別市(とくべつし)とは、通常のとは異なる、何らかの特別な地方自治制度下にある市である。制度の具体的な内容は国によりさまざまだが、自治権が拡大されることが多い。

各国の様々な制度に対する日本語呼称は、漢字圏以外に対しては確立した訳語がないことが多いので、ここでは日本語での呼称に関わらず、日本地方自治法にかつて規定されていた「特別市」に相当する市を扱う。つまり、階層性のある地方自治制度を有する国家において、都道府県相当の最上位の自治体広域自治体)と相当の下位の自治体(基礎自治体のことが多いがさらに下位に特別区相当の自治体を持つこともある)との間で階層縦断的な自治体について述べる。ただし、国によって制度・公用語・歴史的経緯が異なるため、呼称は一定しない。また、必ずしも広域自治体・基礎自治体の権限を双方全て持つとは限らず、広域自治体の性格を持つ基礎自治体、あるいは基礎自治体の性格を持つ広域自治体のような場合もある。

特別市と呼ばれるにもかかわらずこれらに当てはまらない制度もあるが、それらについては簡単に述べるにとどめる。
各国の事例
東アジア
日本「政令指定都市」も参照

日本では1947年制定の地方自治法に「特別市」の規定(第3編第1章)[注釈 1]が盛り込まれた[1]。同法で「特別市」は、法律に特別の定め(議会の議員の定数に関する規定並びに助役・収入役等の選任の方法及び職務権限など)をのぞくほか、都道府県及びに属する事務を処理し、都道府県の区域外とされた。特別市に設けられる区は、戦前の東京市京都市大阪市の3市で認められていた法人格を有し区会(明治44年勅令第239号及び240号)を持つ区ではなく、法人格を有しない単なる行政区であった。しかし、区長は公選とし有権者の解職請求の対象にもなるなど、一定の住民自治が機能する制度となっていた一方、区に議会は置かれなかった[2]。特別市制度は五大都市大阪市京都市名古屋市横浜市神戸市)を候補としていた。

しかし、特別市規定について、府県から大都市を独立させた場合に府県側に残る郡部が大都市から取り残されるという残存区域問題から、五大都市が推進派、関係府県が反対派となって激しく対立し、憲法第95条の観点から1947年12月に地方自治法が改正されて、当該市だけでなく都道府県全体における住民投票で賛成が必要とするよう法改正が行われた。人口構造から京都市を除いて府県の住民投票において特別市の実施に必要な過半数の賛成を得る見込みはなく、また人口構造から特別市への移行が可能と目されていた京都市も当時の政治状況[3]から特別市への移行が困難となったため、特別市制度は事実上凍結状態となった。特別市導入に関する住民投票は実施されずに特別市の導入例がないまま、政府は1956年に地方自治法を改正し、「特別市」の条項を削除の上、替わる制度として、行政区分の階層性を残したまま事務の再配分をする「指定都市」制度(いわゆる政令指定都市制度)を導入した[4]。指定都市は広域自治体(都道府県)の下位の階層にあるが、広域自治体の性格を持つ基礎自治体とみなせる。そのため、さまざまな面で都道府県と同列に扱われる。

2000年代後半の道州制論議では、の格を持つである「特別市」の構想も打ち出された。例として、下関市北九州市による「関門特別市」構想や、東京都区部を「東京特別市」とする案がある。例えば、2008年9月11日に東京商工会議所が「道州制と大都市制度のあり方」についての報告?東京23区部を一体とする新たな「東京市」へ?(委員会報告)を提起し[5]、その中で「魅力ある世界都市・東京を実現し、東京23区部において自己決定と自己責任を果たすにふさわしい自主自立の基礎自治体を実現するために、都区制度を廃止し、東京23区部を一体とする新たな「東京市」が必要」と提言した[6]。又、村上弘によれば、800万人の人口規模になると、ベルリン都市州ロンドン市と同じく、東京市を復活させかつ特別区の自治も認める可能性があることを指摘されている[7]

東京都は、広域自治体である都道府県でありながら、区部に関して市(基礎自治体)としての機能の一部を担っている。


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