物流危機
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物流危機(ぶつりゅうきき)とは、2000年代以降の日本において、貨物自動車運送事業に従事する運転者の数が減少する一方で荷物・貨物の自動車輸送での取扱量が増加することにより、物流の維持が困難になる事象。

陸運業1990年規制緩和および[1][2]2003年の規制の一層緩和などの競争激化により、ドライバーの月平均労働時間は195,7時間と産業別では最も長く、2位である飲食業(172,7時間)を大きく引き離しており、年収も全産業平均より5%から10%程度低くなるなど労働条件が悪化したため[3][4]、2000年代後半以降にドライバー数が急減した[5]

さらには2007年6月6日に新設された免許制度改革(準中型自動車)による若者の敬遠や[5]少子高齢化も進み、少子化による生産年齢人口の減少によりドライバーが不足。

また、ECサイトの急成長、新型コロナウイルス流行により宅配の取扱量は増加傾向にあり、物流の85%を占める企業間取引(B2B)や[6][7]、宅配共に「モノが運べない」物流危機が迫っており[8][9]2022年の倒産件数統計では、運輸業の倒産件数が業種詳細別で最多となっており、危機に拍車が掛かっている[10][11][12]
予想・予測される問題

2024年
これまで運輸、建築、医療業界で執行が猶予されていた2024年4月から開始される時間外労働の上限を年間960時間とする、罰則付き規制「働き方改革」による輸送能力不足[13][14]2024年問題)。

2027年
24万人のドライバーが不足するとの予測[5][15]

2030年
ドライバーは21万人不足し[15]、10億トン近い輸送力不足で3割以上の荷物がトラックで運べなくなる予測(2030年問題[16]
対応

物流は全産業に付随する産業となり国の根幹を支えるため、このような危機的状況から政府主導による対策が進められており、商慣行の撤廃や改革、運賃の是正と監視、デジタル技術を利用した効率化の推進や標準化による生産性の向上、物流拠点整備や共同配送および地方においては貨客混載の推進、新規格車両の導入や利用しやすい高速道路料金の実現などが検討、計画されている[17]
脚注[脚注の使い方]
出典^ 齊藤実 (2004年3月). “規制緩和とトラック運送業の構造” (PDF). 国際交通安全学会. 2023年7月14日閲覧。
^ “新時代の流通・交通 あるべき規制改革とは”. 読売新聞. (2022年11月14日). https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckeconomy/20221109-OYT8T50069/ 
^ “我が国の物流を取り巻く現状と取組状況” (PDF). 経済産業省 (2022年9月2日). 2023年7月15日閲覧。
^ “22年度道路貨物運送業の倒産は43.7%増の263件”. Logistics Today. (2023年4月10日). https://www.logi-today.com/539179 
^ a b c “物流危機とフィジカルインターネット” (PDF). 国土交通省 (2021年10月). 2023年7月13日閲覧。
^ “我が国の物流を取り巻く現状と取組状況” (PDF). 国土交通省 (2022年9月2日). 2023年7月13日閲覧。
^ 橋本愛喜 (2023年4月3日). “2024年問題を「宅配の問題」とする国やメディアによってますます見えない化する「企業間輸送」の現場”. Yahoo News. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/35cdadd6cce1a1f962ff3bf17e74f76a1f3618db 
^ ““モノが届かない”恐ろしすぎる未来…SCMで考えるべきは超有効な「2つの備え」”. ビジネス+IT. (2023年3月24日). https://www.sbbit.jp/article/cont1/109359 2023年3月24日閲覧。 
^ “ある日荷物が「離島扱い」に、迫る物流危機の衝撃”. 東洋経済. (2023年2月27日). https://toyokeizai.net/articles/-/654654 
^ “帝国データバンク調査、全体では前年比3.4倍で過去最高”. LOGI-BIZ online. (2023年4月11日). https://online.logi-biz.com/79082/ 
^ “巣ごもり支えたトラック運送に物価高の波、倒産増加?円安が追い打ち”. Bloomberg. (2022年10月27日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-27/RIL6T5T0AFB401 
^ “人手不足倒産が急増、運輸業で最も増加傾向に”. Logistics Today. (2023年10月5日). https://www.logi-today.com/565375 
^ “「2024年問題」でドライバー不足拍車の懸念強まる”. Logistics Today. (2021年11月17日). https://www.logi-today.com/464736 
^ “「2024年問題」への対応に向けた動き” (PDF). 国土交通省. 2023年7月13日閲覧。
^ a b “「物流の2024年問題」の影響について” (PDF). NX総合研究所 (2022年11月11日). 2023年7月13日閲覧。
^ “およそ10億トンの輸送力が足りない!! ドライバー不足により2030年度には貨物の3分の1がトラックで運べなくなるという試算”. Fullload. https://fullload.bestcarweb.jp/column/365270 2023年3月24日閲覧。 
^ “「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)” (PDF). 内閣官房 (2023年6月2日). 2023年7月15日閲覧。

関連項目

平成不況

2024年問題

2030年問題

事業用自動車

サプライチェーンマネジメント

フィジカルインターネット

デジタルトランスフォーメーション

物流テック

モーダルシフト

原油価格

外部リンク

我が国の物流を取り巻く現状と取組状況
PDF)- 経済産業省

トラック運送業界の2024年問題について(PDF)- 全日本トラック協会

「2024年問題」への対応に向けた動き(PDF)- 国土交通省

「物流革新に向けた政策パッケージ」のポイント(案)(PDF)- 内閣官房

物流危機とフィジカルインターネット (PDF) - 経済産業省

適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト はたらきかたススメ - 厚生労働省

自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト - 厚生労働省

持続可能な物流の実現に向けた検討会 - 国土交通省

2024年問題(働き方改革)特設ページ - 全日本トラック協会


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