「乳糖不耐症」とは異なります。
牛乳アレルギー(ぎゅうにゅうアレルギー、英: Cow's milk allergy)は、牛乳に含まれるたんぱく質に対するアレルギー反応である。食物アレルギーとしては鶏卵の次に多い[1]。主な原因は、牛乳に含まれるタンパク質の一種であるアルファs1-カゼインである[2]。反芻動物の牛、羊、ヤギの乳では交差反応を示しうる[3]。アナフィラキシーを発症する事もある[3]。
以下、乳は特に断らない限り牛乳を中心とする。 0歳を頂点に多くは乳・幼児期に発症する[1]。大半は数年で症状を出さなくなる。乳児では母乳が認知機能や免疫系の発育を含めて最善である。次点で牛乳タンパク質分解乳が推奨されているが、大豆や米に由来する配合乳の方が早くおさまるという研究結果も現れている[4]。また、加熱処理された牛乳に耐えられる子供は多く、その摂取によりすべての牛乳への耐性の獲得者が増加した[5]。 有病率は、未就学児で1 - 17.5%、5 - 16歳で1 - 13.5%、成人で1 - 4%の範囲で報告されており、選択の偏りのない出生コホート研究では、フィンランド1.9%、ノルウェーの4.9%である[3]。16歳までに79%がアレルギー感作において耐性を獲得する[5]。 日本の食物アレルギーでは鶏卵に次ぐ多さで、牛乳、鶏卵は幼児に多い[1]。0歳時を最多にして年齢と共に減っていき、多くは乳幼児期に発症する[1]。幼児には多く見られ、2 - 3歳で耐性を獲得し自然に消えていくことが多い。 牛乳に対するアレルギーを持つ子供の13%から20%は、牛肉にもアレルギーを持つ[6]。 イスラエルでのコホート研究は、2週間までに牛乳タンパク質に暴露された場合、4-6か月で暴露されたされた場合に比較して、牛乳アレルギーの発生率が低かった[5]。アトピー性皮膚炎の子供の3分の1が牛乳アレルギーと診断され、牛乳アレルギーの1歳未満の乳児の40 - 50%はアトピー性皮膚炎であった[3]。帝王切開は牛乳アレルギーの危険因子である[7]。 牛乳中の主なアレルゲンはカゼイン、乳清(ホエイ)の両方に存在する。カゼインでは、αs1-カゼイン、αs2-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインであり、罹患者はαに100%反応し、κでは91.7%である。乳清では、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、血清アルブミンで、罹患者はこれらに最大で約80%が反応するが、免疫グロブリンに反応することは滅多にない[3]。主な原因はαs1-カゼインである[2]。αs1-カゼインは乳製品を食べた母親の母乳中からも検出される[8][9]。 カゼインは牛乳タンパク質の8割を占め、αs1-カゼインとβ-カゼインとでその7割を占める[3]。 反芻動物のウシ科に属する牛、羊、ヤギの乳とで罹患者は交差反応を示すことがあり、この反芻動物のタンパク質はヒト、豚や馬、ラクダ科とは異なり構造の類似性が低い[3]。β-カゼインはヒトやラクダの乳には含まれない[3]。 胃腸症状が32 - 60%に、皮膚症状が5 - 90%に、アナフィラキシーが約1%に生じる[3]。「アナフィラキシー」も参照「アレルギー」も参照 IgEが関わる牛乳アレルギーの場合、急性蕁麻疹を発症する[10]。IgEが関わらない牛乳アレルギーでもかゆみや紅斑は生じ、アトピー性湿疹を生じることがある[10]。後者はまだ診断基準がはっきりしていない[11]。前者の場合、牛乳の摂取から2時間後までに症状が起き、皮膚、呼吸器、胃腸に症状を出し、また重篤なアナフィラキシーを起こし命にかかわることがある[12]。後者の場合、最大72時間まで症状が出るのが遅れ、激しい腹痛、食道からの逆流、下痢や便秘、血便や湿疹が起こることがある[12]。 牛乳が使用されていない製品であっても、乳成分入りの材料を含む場合があり注意が必要である。状況によっては深刻な結果になってしまう。 乳糖不耐症は、糖分の乳糖(ラクトース)を消化する能力が低下しているために生じる[10]。通常、3歳ごろに自然にその能力を失う[10]。 このため、乳糖を予め分解すれば乳糖不耐症では問題は起こらないが、牛乳アレルギーの場合は抗原となり得るタンパク質が存在する限り問題が起こるのである。なお、牛乳アレルギーは病的な状態であるのに対し、乳糖不耐症は元々成長と共に発現するものなので、成人に現れた乳糖不耐症は病的な状態であるとは考えられていない。ただし、乳児に現れた乳糖不耐症は病的な状態である。 乳タンパク質の不耐(Milk protein intolerance : MPI)は通常個々にはアレルギーも不耐も起こさない食物タンパク質への遅延反応である。MPIは non-IgE抗体を生成し、アレルギーの血液検査では発見されない。MPIは牛乳アレルギーとよく似た症状を発症し、対処方法も牛乳アレルギーと同じである。MPIは豆乳にも当てはまる(milk soy protein intolerance : MSPI)。 MPIの牛乳は、牛乳だけでなくその派生商品(パンやケーキ)も含まれる。さらに「non-dairy」つまり乳成分を含まないとラベルされた商品でも引き起こされることもある。non-dairyは乳成分が0.5%未満のことを指すためである。[13]これらにはカザミノ酸のようなワクチンが存在する。 牛乳タンパク質分解乳についての予備知識は、#幼児に対する牛乳の代替を参照。ここでは家族歴などアレルギーのリスクが高いアレルギーを発症していない乳児の予防について。 2017年のコクランレビューでは低品質な証拠が、部分分解乳の方が牛乳を使った配合乳と比較して牛乳アレルギーを減少させることを示していた[14]。これは以前と同じ結果である。2016年の英国食品基準庁 (UKF) が委託したメタアナリシスは、利益相反や出版バイアスがあり乳児のアレルギーのリスクを低下させる一貫した証拠はないとし、証拠の質が低いという点はGRADE基準に沿って評価され証拠を却下した。商業的な動機よりも、透明性が確保されることが必要だとした[15]。試験を事前登録して試験の存在を明らかにし、研究資金を商業から独立させ、母乳育児に悪影響がないよう監督されるべきだとコメントされている[15]。
疫学
原因物質
症状
皮膚症状
皮疹、蕁麻疹
胃腸症状
嘔吐、下痢、便秘、鼻炎、胃の痛、胃食道逆流症、逆流性食道炎
呼吸器症状
呼吸困難
乳糖不耐症との違い
乳タンパク質の不耐との違い
予防
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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