片頭痛
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片頭痛

The Head Ache(頭痛を描いたジョージ・クルックシャンクの絵、1819年
概要
診療科神経学
分類および外部参照情報
ICD-10G43
ICD-9-CM346
DiseasesDB8207 (片頭痛)
31876(脳底型片頭痛)
4693(家族性片麻痺性片頭痛)
MedlinePlus000709
eMedicineneuro/218 neuro/517 emerg/230 neuro/529
Patient UK片頭痛
MeSHD008881
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片頭痛(へんずつう、migraine)とは、頭痛の一種で、偏頭痛とも表記する。発作的で脈打つような痛みや嘔吐などの症状を伴うのが特徴である。
概要

特別な原因疾患を伴わない一次性頭痛に分類され、その名の通り頭の片側に現れることが多いが、両側から痛む場合[1]や後頭部にかけて起きることもある[2]。軽度から激しい頭痛、体の知覚の変化、吐き気といった症状によって特徴付けられる神経学症候群である。生理学的には、男性よりも女性に多い[3][4]

典型的な片頭痛の症状は片側性(頭の半分に影響を及ぼす)で、拍動を伴って4時間から72時間持続する[4][5]。症状には吐き気・嘔吐羞明(光過敏)、音過敏などがある[6][7][8]。およそ3分の1の人は「前兆」と呼ばれる、視覚、嗅覚、あるいはその他の感覚の(片頭痛が間もなく始まることを示す)異常を経験する[9]

急性期治療としては、痛みにNSAID鎮痛剤や、セロトニン作動薬であるトリプタンなどの服用[10]、吐き気に制吐剤の服用、そしてさらなる発症の抑制がある。

片頭痛には変異型があり、脳幹に由来するもの(カルシウムカリウムイオン細胞間輸送の機能不全が特徴的である)や、遺伝的性質のものなどがある[11]双子に関する研究で、片頭痛を発症する傾向への遺伝的影響が、60?65パーセントの確率であることが分かった[12][13]。さらに変動するホルモンレベルも、片頭痛と関係がある。思春期前には男女ほとんど同じ数だけ片頭痛を発症するのに対し、成人患者では実に75パーセントが女性である。妊娠中の女性は、片頭痛発作の回数が改善することが多く、特に妊娠後期は寛解する場合が多いが、妊娠中に新たに発症する場合もある[14]。ただ、前兆のある片頭痛の場合は改善する可能性は低い[15]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
分類詳細は「en:ICHD classification and diagnosis of migraine」を参照

国際頭痛学会(International Headache Society, IHS)は『国際頭痛分類 第2版(ICHD-2)』で、片頭痛の分類と判断の指標を提供している[16]

ICHD-2によると、片頭痛は全部で6種類に分類できる。うち何種かはさらに詳しく分類される。以下は分類リストである。

前兆のない片頭痛あるいは普通型片頭痛は、前兆(視覚障害、下も参照)を伴わない片頭痛である。

前兆を伴った片頭痛は名前の通り前兆が発生する片頭痛である。それほど多くはないが、頭痛なしで、あるいは片頭痛ではないただの頭痛とともに前兆が現れる場合もある。他の下位分類としては、運動麻痺と前兆が起こる片頭痛である家族性片麻痺性片頭痛や孤発性片麻痺性片頭痛がある。近親者に同様の症状があれば「家族性」、そうでなければ「孤発性」とされる。他には、前兆と頭痛が言語障害めまい耳鳴り、その他脳幹関連の症状とともに起きる(運動麻痺はない)、脳底型片頭痛がある。

小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)には、下位分類として周期性嘔吐症(時折激しい悪心や嘔吐が起こる)、腹部片頭痛(腹痛で、一般的には吐き気を伴う)、小児良性発作性めまい(時折めまいに襲われる)がある。

網膜片頭痛は、片眼の視覚障害や一時的失明を伴う片頭痛である(上述の前兆を伴った片頭痛とは異なる)。

片頭痛の合併症は、片頭痛や前兆が長いか頻繁であるか、発作や脳障害を伴うものである。

片頭痛の疑いは、ところどころに片頭痛の特徴が見られるが、確証を持って片頭痛であると言える証拠がない場合の症状である。

診断「en:ICHD classification and diagnosis of migraine」も参照

片頭痛は、過小診断されたり[17]誤診されたり[18]することがある。国際頭痛学会によると、前兆のない片頭痛は以下の「5, 4, 3, 2, 1基準」に照らし合わせて診断される。

5回以上の発作

4時間から3日にわたる発症持続

片側だけの発症、拍動性、中程度から激しい程度の痛み、日常的な身体動作の回避やそれによる症状悪化、のうち2つ以上当てはまる

吐き気や嘔吐、羞明、音声恐怖のうち1つ以上当てはまる

前兆を伴った片頭痛については、上のうち2つのみ当てはまればそのように診断される。

「Pulsating, duration of 4?72 hOurs,Unilateral,Nausea,Disabling(拍動、4-72時間の持続、片側性、吐き気、障害)」の略であるPOUNDingという語は片頭痛の診断に役立っている。上の5つの基準のうち4つが合致した場合、その片頭痛の診断における陽性尤度比は24となる[19]

「障害」か「吐き気あるいは過敏症」のうちどちらかが当てはまれば、感度81パーセント、特異度75パーセントの診断となる[20]

片頭痛は群発頭痛などの他の頭痛の原因とは区別されるべきである。片頭痛でないものは、激しい痛みや刺すような片側性の頭痛を伴い、通常発症は15分から3時間程度続く。症状の発現はすぐで、片頭痛の特徴でもある前兆のような徴候は現れない。
徴候と症状

片頭痛の徴候と症状は患者によって異なる。そのため、患者が発症の前、発症中、発症の後に何を経験するかは、一概に言えない。下のリストにある4つの段階は、片頭痛患者が通常経験する症状であるが、これらを必ず経験するとは限らない。さらに同じ片頭痛患者でも、経験する段階や症状は、発症が起きるごとに変わる場合がある。
頭痛の数時間から数日前に起きる予兆

頭痛の直前に起きる前兆

痛みの段階(頭痛段階)

後発症状

予兆段階

片頭痛患者の40?60パーセントが予兆と呼ばれる前駆症状を発症する。この段階の症状としては、興奮、気持ちの落ち込みか高揚といった気分の変化、疲労あくび、過度の眠気、特定の食材に対する欲求、筋肉のこわばり(特に首周辺)、便秘下痢排尿回数の増加、その他内臓に関する症状、といったものがある[21]。これらの症状は通常、片頭痛の症状の数時間から数日前に起きるため、患者本人や家族は片頭痛の発症が近いことを予知することができる。
前兆段階

およそ20?30パーセントの片頭痛患者が前兆を伴って発症する[22][23]。前兆は、発症の前か発症に伴って現れる局所的神経障害である。5分から20分かけてゆっくり段階的に現れ、普通は60分以内に治まる。片頭痛の頭痛段階は、通常この前兆段階が終わってから60分以内に始まるが、数時間ほど遅れたり、そのまま始まらずに終わったりすることもある。前兆の症状には、視覚的なものや感覚的なもの、運動神経に関するものがある[24]

視覚的な前兆は、最もよく起きるものである。閃輝暗点と呼ばれる、まぶしいジグザグの線や見えにくい部分が視界に広がる症状が典型例である(星形要塞のような形に見えることから「要塞スペクトル」とも呼ばれる[注釈 1][25])。患者の中には、まるで厚いガラスかスモークのかかったガラスを通して見ているかのような、チラチラ光る、ぼやけた、曇った視界を訴える者もいれば、場合によっては視野狭窄や片側視野欠損を訴える者さえいる。


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