爆撃照準器
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1910年代の初期の爆撃照準器1923年の試作品、ノルデンMK XI爆撃照準器

爆撃照準器(ばくげきしょうじゅんき)とは、航空機爆弾を正確に投下するために用いる照準器である。爆撃照準器は第一次世界大戦から戦闘用の航空機に装備されており、最初は爆撃機の用途に合わせて設計されたものが用いられていた。その後、アビオニクスの複雑化・高機能化および作戦機そのもののマルチロール化に伴って、爆撃照準器の機能は火器管制システム(FCS)に組み込まれていった。
概要

爆撃照準器は、航空機から投下された後の爆弾が移動するだろう弾道を計算する。落下中には主に2種類の力、つまり重力と空気抵抗がかかる。これらが大気中を通る爆弾の弾道をおおよそ放物線状のものにする。加えて空気密度や風のような他の要因が存在し、これらも考慮されるものの、命中までかなりの時間を大気中の通過に費やすような爆弾にのみ重要である。こうした影響は低高度爆撃や爆弾の速度を高めることで落下時間を最小化できる。急降下爆撃はこれらの影響をもとに考えだされた。

ただし、低高度爆撃では地上部隊の反撃による爆撃機への危険性も増し、より高い高度での正確な爆撃がいつも求められた。このため、さらに洗練を増した高高度爆撃専用の爆撃照準器が次々と設計されるに至った。

爆撃照準器が最初に使われたのは第一次世界大戦の前であり、また幾度か大きな改修を受けている。最初期のシステムはアイアンサイトで、計算済みの投下角度があらかじめセットされていた。いくつかのケースでは、手ごろな桁に打ち込まれた一揃いの釘、機体に書きこまれた照準線、もしくは構造の特定の部品に視覚的な位置合わせをしたもので構成されたに過ぎない。こうした器具は最初期の専用設計されたシステムに置き換えられ、普通アイアンサイトは航空機の機速と高度を元に規整できた。こうした初期のシステムも風向風力を測り、調整する能力を加えたベクトル式の爆撃照準器に代替された。ベクトル式の爆撃照準器は高度およそ3,000m、速度およそ300km/hまでならば有用だった。

1930年代、機械式計算機は運動方程式の「解決」に必要な性能を備え、これを新型のタコメトリック式の爆撃照準器として組み込むことが始められた。こうした装置のもっとも有名な例はノルデン爆撃照準器である。その後の第二次世界大戦中には、雲を通したり夜間でも正確な爆撃を可能とするため、タコメトリック式爆撃照準器にしばしばレーダーシステムが組み込まれた。戦後の研究では光学式とレーダー誘導爆撃の両方の正確さがおおよそ同等であることが示された。光学式爆撃照準器はひろく退役になっていき、専用のレーダー爆撃照準器に役割が移された。

最終的に、特に1960年代からは完全に電子計算化された爆撃照準器が導入された。これは爆撃照準器に長距離航法とマッピング能力を組み込んでいる。その後、アビオニクスの複雑化・高機能化および作戦機そのもののマルチロール化に伴って、爆撃照準器の機能は火器管制システム(FCS)に組み込まれていった。現代の航空機には専用の爆撃照準器は搭載されず、代わりに1基のヘッドアップディスプレイ(HUD)に爆撃、機関銃射撃、ミサイル発射、そして航法機能を組み込んだ高度に電子化されたシステムが用いられる。このシステムはリアルタイムで爆弾の弾道や機体のマニューバを計算する機能が備わる。また天候による影響や高度、標的の移動速度、機体の上昇やダイブの角度に関する補正機能が加えられている。こうしたことは、初期の世代のような水平爆撃と、目視で爆撃していた戦術任務の両方で航空機を有用なものとしている。
爆撃照準器のコンセプト
爆弾に働く力

所与の空気密度や迎え角によって爆弾にかかる抗力は対気速度の二乗に比例する。もしも速度の垂直の成分が v v {\displaystyle v_{v}} と示され、水平の成分が v h {\displaystyle v_{h}} 、速度が v v 2 + v h 2 {\displaystyle {\sqrt {v_{v}^{2}+v_{h}^{2}}}} ならば、抗力の垂直と水平の成分は以下である。 d v = C A ρ v v v v 2 + v h 2 ( v v 2 + v h 2 ) = C A ρ v v v v 2 + v h 2 {\displaystyle {\begin{aligned}d_{v}&=CA\rho {\frac {v_{v}}{\sqrt {v_{v}^{2}+v_{h}^{2}}}}(v_{v}^{2}+v_{h}^{2})\\&=CA\rho v_{v}{\sqrt {v_{v}^{2}+v_{h}^{2}}}\end{aligned}}} d h = C A ρ v h v v 2 + v h 2 ( v v 2 + v h 2 ) = C A ρ v h v v 2 + v h 2 {\displaystyle {\begin{aligned}d_{h}&=CA\rho {\frac {v_{h}}{\sqrt {v_{v}^{2}+v_{h}^{2}}}}(v_{v}^{2}+v_{h}^{2})\\&=CA\rho v_{h}{\sqrt {v_{v}^{2}+v_{h}^{2}}}\end{aligned}}}


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