熊使い(くまつかい)とは、クマを用いる大道芸、クマに大道芸をさせる人、または、広くクマを使役すること、クマを手懐ける人を示す。クマの大道芸は南アジアから中東、欧州、ロシアに広がる文化である。音楽にあわせての“熊踊り”を特にダンシング・ベア[1]と呼ぶ場合がある。英語は「Tame bear」または「dancing bear」。
クマはその地域に生息するヒグマやナマケグマを用いる。 インドではナマケグマが用いられ、予めクマはロープをつけた鼻輪と口輪をする。鼻輪ではなく首輪の場合もある。熊使いは歌を歌いながら、ロープと棒でクマを操り、クマが踊るように魅せる芸である。この芸には仔熊の時からの訓練が必要である。 かつてインドでは大道芸の踊るクマがよく行われ、主に観光地で大道芸を行っていたが、野生のクマが減少したために規制がなされ[1]、路上の熊使いが少なくなり[1]、また、大道芸のクマが野生保護施設に入るようになってきている[2][3]。 パキスタンでも熊使いがある[4]。ジプシーはツキノワグマがダンスする大道芸やクマのレスリングを行う[4]。そのためにジプシーは野生のクマまたは仔熊を捕獲する[4]。 音楽にあわせてクマが踊る大道芸が行われる[5]。欧州、ロシアともにヒグマが用いられる。クマは鎖(チェーン)またはロープでつながった首輪をする。ロシアでは17世紀まではスコモローフが熊使いをしていた。ジプシー(ロマ)やウルサリも大道芸を行う[5]。20世紀のロシアではサーカスの隆盛により大道芸は廃れ、一部に残るのみとなった[5]。20世紀初頭、満州の北方ハルビンには大道芸「熊踊り」があった[6]。 ブルガリアでもジプシー(ロマ)により路上で熊使い芸が行われる。使用される楽器はガドゥールカ 音楽には「熊使い」が登場する。ロシアのバレエ音楽「ペトルーシュカ」にも熊使いが登場する。ハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラによる管弦楽曲「ハンガリーの風景」は第2曲の名前が“熊踊り”である。同じくバルトークのピアノ独奏曲ソナチネも第2楽章が“熊踊り”である。 ルーマニアのジプシーバンド[7]「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」( Taraf de Haidouks )の「ウルサリのホラ」という曲は“熊遣いのロマの輪舞”のサブタイトルがつく[8]。 ヘンリー・ウィリアム・バンバリー ( Henry William Bunbury ) 作に「 The Dancing Bear 」があり[9]、絵では、路上の大道芸の主役の立った熊が中央に配置され、右に熊使いの大道芸人、見物料を集める者が描かれ、左に楽器を持った2名と、猿を肩に乗せた旅芸人も描かれ、それらのまわりを見物人が囲んでいる。 また、ウィリアム・リーハンキー ( William Lee-Hankey )作に「 The Dancing Bear 」があり[10]、絵は石畳の道路の上を、熊使いに先導されて、口輪をしてチェーンで曳かれ四足で歩く熊が中央に配置され、通行人は大人も子供も熊を眺めている様子が描かれている。
南アジア・中東
欧州・ロシア2007年のフランス1970年頃のブルガリア
音楽
絵画
1810年の絵画
1822年の William Frederick Witherington の作品
1865年の August Jernberg の作品
脚注[脚注の使い方]^ a b c ⇒インドのナマケグマの現状 インド野生生物研究所 (PDF) 日本クマネットワーク,2007
^ ⇒BBC News - Charity frees 'last' dancing bearBBC,20 December 2009
^ ⇒「This Sloth Bear Just Wants To Be A Dog」2012年8月
^ a b c ⇒パキスタンのクマ類の生息状況と保全日本クマネットワーク,2007
^ a b c ⇒早稲田大学ロシア文学会 1995年度春の講演会 講演要旨《Вести》第5号 1995年11月1日発行早稲田大学ロシア文学会 008:熊使いの神話学(伊東一郎)(2002/9/11更新),早稲田大学文学学術院 露文専修室
^ キンダーブック『マンシウ』(フレーベル館発行,昭和8年刊)絵は広瀬貫川